$\vec{A}=(a_1,a_2),\vec{B}=(b_1,b_2)$の2つのベクトルのなす角がθであるとき内積を表す式は
\begin{align*}\vec{A}\cdot\vec{B}=|\vec{A}||\vec{B}|\cosθ\\[1em]\vec{A}\cdot\vec{B}=a_1b_1+a_2b_2\end{align*}
の2式あります。
この2式がどちらも内積を表していることを確かめてみます。
内積を定義する式
\[\vec{A}\cdot\vec{B}=|\vec{A}||\vec{B}|\cosθ\]
から$\vec{A}\cdot\vec{B}=a_1b_1+a_2b_2$が導けることを確かめます。
$\vec{A},\vec{B}$それぞれのベクトルの大きさは
\begin{align*}|\vec{A}|&=\sqrt{{a_1}^2+{a_2}^2}\\[0.5em]|\vec{B}|&=\sqrt{{b_1}^2+{b_2}^2}\end{align*}
となります。
次にベクトルの成分を使ってどうやって$\cosθ$を表すかを考えます。
ここで、$\vec{X}=(x,y)$というベクトルを考え、このベクトルの始点を中心とし、$|\vec{X}|$を半径とする円を考えます。
円の中心からx軸の正の方向にのびる直線と$\vec{X}$とのなす角を$θ$としたとき、三角関数の値を求めるときと同様にすれば
円の中心からx軸の正の方向にのびる直線と$\vec{X}$とのなす角を$θ$としたとき、三角関数の値を求めるときと同様にすれば
\begin{cases}x=|\vec{X}|\cosθ\\[0.5em]y=|\vec{X}|\sinθ\end{cases}
となります。
このことから
\begin{cases}\cosθ=\frac{x}{|\vec{X}|}=\frac{x}{\sqrt{x^2+y^2}}\\[0.5em]\sinθ=\frac{y}{|\vec{X}|}=\frac{y}{\sqrt{x^2+y^2}}\end{cases}
となります。
以上より、$\vec{A},\vec{B}$それぞれの始点からx軸の正の方向にのびる直線と各ベクトルとのなす角を$α,β\
(α>β)$とすると、
\begin{align*}\cos\alpha&=\frac{a_1}{\sqrt{{a_1}^2+{a_2}^2}},\\[0.5em]\sin\alpha&=\frac{a_2}{\sqrt{{a_1}^2+{a_2}^2}}\\[1em]\cos\beta&=\frac{b_1}{\sqrt{{b_1}^2+{b_2}^2}},\\[0.5em]\sin\beta&=\frac{b_2}{\sqrt{{b_1}^2+{b_2}^2}}\end{align*}
となります。
$θ=α-β$であるから加法定理より
\begin{align*}\cosθ&=\cos(\alpha-\beta)\\[0.5em]&=\cos\alpha\cos\beta+\sin\alpha\sin\beta\\[0.5em]&=\frac{a_1}{\sqrt{{a_1}^2+{a_2}^2}}\cdot\frac{b_1}{\sqrt{{b_1}^2+{b_2}^2}}+\frac{a_2}{\sqrt{{a_1}^2+{a_2}^2}}\cdot\frac{b_2}{\sqrt{{b_1}^2+{b_2}^2}}\\[0.5em]&=\frac{a_1b_1+a_2b_2}{\sqrt{{a_1}^2+{a_2}^2}\sqrt{{b_1}^2+{b_2}^2}}\end{align*}
よって
\begin{align*}\vec{A}\cdot\vec{B}&=|\vec{A}||\vec{B}|\cosθ\\[0.5em]
&=\sqrt{{a_1}^2+{a_2}^2}\cdot\sqrt{{b_1}^2+{b_2}^2}\cdot\frac{a_1b_1+a_2b_2}{\sqrt{{a_1}^2+{a_2}^2}\sqrt{{b_1}^2+{b_2}^2}}\\[0.5em]&=a_1b_1+a_2b_2\end{align*}
となり、2式はどちらもベクトルの内積を表すことがわかります。
別の方法として以下のようなものがあります。
座標平面上のベクトル$\vec{X}=(x,y)$をx成分のみのベクトル$\vec{X_x}=(x,0)$とy成分のみのベクトル$\vec{X_y}=(0,y)$の2つに分解すると
\[\vec{X}=\vec{X_x}+\vec{X_y}\]
となることから$\vec{a}=(a_1,a_2),\vec{b}=(b_1,b_2)$の内積は
\[\vec{a}\cdot\vec{b}=(\vec{a_x}+\vec{a_y})\cdot(\vec{b_x}+\vec{b_y})\]
と書けます。
ここで、内積の分配法則
\[(\vec{A}+\vec{B})\cdot\vec{C}=\vec{A}\cdot\vec{C}+\vec{B}\cdot\vec{C}\]
を利用すると
\[\vec{a}\cdot\vec{b}=\vec{a_x}\cdot\vec{b_x}+\vec{a_x}\cdot\vec{b_y}+\vec{a_y}\cdot\vec{b_x}+\vec{a_y}\cdot\vec{b_y}\]
と展開できます。
x軸とy軸は直交しているのでx成分のみのベクトルとy成分のみのベクトルのなす角は$90°$、x成分のみのベクトル同士、y成分のみのベクトル同士のなす角は$0°$なので、
\begin{align*}\vec{a}\cdot\vec{b}&=|\vec{a_x}||\vec{b_x}|\cos0°+|\vec{a_x}||\vec{b_y}|\cos90°+|\vec{a_y}||\vec{b_x}|\cos90°+|\vec{a_y}||\vec{b_y}|\cos0°\\[0.5em]&=a_1b_1+0+0+a_2b_2\\[0.5em]
&=a_1b_1+a_2b_2\end{align*}
となり、ベクトルの内積の式を導くことができます。
Share: