対数の定義より、$\log_a{b}$は
\[a^x=b\]
を満たす指数$x$のことです。
したがって、$\log_a{0}$は
\[a^{\log_a{0}}=0\]
を満たす数であるということです。
$\log_a{0}$を実数と仮定します。
すると、指数関数の性質より$a$が$1$を除く正の実数のとき、任意の実数$x$をもちいて
\[a^x>0\]
が成り立ちます。
しかしここで、極限より$0<a<1$のとき
\[\lim_{x\to\infty}a^x=0\]
$a>1$のとき
\[\lim_{x\to-\infty}a^x=0\]
というのは関係ないのかと思うかもしれませんが、$0<a<1$のときの極限は「限りなく$x$を大きくすると$a^x$は$0$に限りなく近づく」、$a>1$のときの極限は「限りなく$x$を小さくすると$a^x$は$0$に限りなく近づく」ということであり、$\infty$という数が存在し、そのときに$a^x=0$になるという意味ではありません。
複素数$z=x+yi$は極形式で
\[z=r\{\cos(\theta+2n\pi)+i\sin(\theta+2n\pi)\}\quad(n:整数)\]
と書くことができ、オイラーの公式により
\[z=re^{i(\theta+2n\pi)}\]
となります。
さらに$r=e^{\ln r}$より
\[z=e^{\ln r}\cdot e^{i(\theta+2n\pi)}=e^{\ln r+i(\theta+2n\pi)}\]
と書くことができます。
このことから複素数の対数$\ln z$は
\[\ln z=\ln r+i(\theta+2n\pi)\]
となります。実部の$\ln r$は動径の長さ、虚部の$\theta+2n\pi$は偏角を表します。
$z=0$のとき、$r=0$であることが条件となるので、
\[\ln0=\ln0+i(\theta+2n\pi)\]
となります。このとき$r=0$でさえあれば偏角$\theta$は何でもよいので不定となります。また、上述の実数の範囲で$\log_a{0}$は存在しないということから右辺の実部$\ln0$という数も存在しないということになります。
以上より、複素数$\ln0$についてもどんな数かを求めることができないということになります。
さらに、底の変換公式$\log_a{b}=\dfrac{\log_c{b}}{\log_c{a}}$を利用すると、$0$でない複素数$a$を底とする対数$\log_a{z}$は
\[\log_a{z}=\frac{\ln{z}}{\ln{a}}\]
となり、$z=0$のとき$\ln0$がどんな数かが不明なので、$\log_a{0}$を求めることができません。