$\log{0}$(底は任意)はどのような数になるでしょうか?
実数範囲における$\log{0}$
$1$でない正の実数$a$と実数$M$について
というのが$\log_a{M}$の定義です。
\[a^x=M\]
が成り立つとき、$a$を底とする$M$の対数$x$のうちただ1つの実数を
\[x=\log_a{M}\]
と表す。
実数範囲における$\log{0}$というのは、$\log_a{M}$における$M=0$の場合ということができます。
そこで、上記の定義に従って$\log{0}=\log_a{0}$というのを考えると
$1$でない正の実数$a$について
そこで、上記の定義に従って$\log{0}=\log_a{0}$というのを考えると
$1$でない正の実数$a$について
\begin{equation}a^x=0\end{equation}
を満たすような実数$x$が1つだけ存在すれば
\[x=\log_a{0}\]
と書けるということになります。
しかし、正の数の実数乗の性質より
\[a^x>0\]
なので、$(1)$は成り立たないことがわかります。
したがって、$(1)$を満たす実数$x$は存在しないため、$\log_a{0}$を定義できません。
ここで、$0<a<1$のとき
\[\lim_{x\to\infty}a^x=0\]
$a>1$のとき
\[\lim_{x\to-\infty}a^x=0\]
という極限は関係ないのかと思うかもしれませんが、$0<a<1$のときの極限は「限りなく$x$を大きくすると$a^x$は$0$に限りなく近づく」、$a>1$のときの極限は「限りなく$x$を小さくすると$a^x$は$0$に限りなく近づく」ということであり、$\infty$という数が存在し、そのときに$a^x=0$になるという意味ではありません。
複素数範囲における$\log{0}$
複素数$z$はオイラーの公式より
複素数$z$を複素数平面上の点として表したとき、正の実数$r$は原点と$z$を結ぶ線分(動径)の長さ、実数$θ$は実軸の正の部分から$z$の動径までの一般角(偏角)となります。
\begin{align*}\large z&\ \large=r e^{i\theta}\\
&\left(\begin{aligned}r:&正の実数,e:ネイピア数,\\[0.5em]i:&虚数単位,\theta:実数\end{aligned}\right)\end{align*}
と書くことができます。
複素数$z$を複素数平面上の点として表したとき、正の実数$r$は原点と$z$を結ぶ線分(動径)の長さ、実数$θ$は実軸の正の部分から$z$の動径までの一般角(偏角)となります。
また、$θ$だけ回転させた動径とさらに$2nπ$($n:$任意の整数)だけ回転させた動径はぴったり重なるため
\begin{equation}z=r e^{i(\theta+2n\pi)}\end{equation}
が成り立ちます。
ところで、正の実数$r$について
\[r=e^x\]
を満たすような実数$x$が存在していて、これは実数範囲における対数の定義より
\[x=\log_e{r}\]
と表すことができます。(以降、$\log_e{r}$を$\ln{r}$と表記します。)
すると、$(2)$は
$\ln{r}+i(θ+2nπ)$は$\ln{r}$が実部、$θ+2nπ$が虚部の複素数です。
\begin{align*}z&=e^{\ln{r}} e^{i(\theta+2n\pi)}\\[0.5em]\therefore
z&=e^{\ln{r}+i(\theta+2n\pi)}\end{align*}
と書くことができます。$\ln{r}+i(θ+2nπ)$は$\ln{r}$が実部、$θ+2nπ$が虚部の複素数です。
このように複素数$z$はネイピア数$e$の複素数乗で表すことができ、複素数範囲における対数$\log{z}$は以下のように定義されます。
複素数$z$と正の実数$r$、実数$θ$、整数$n$について
$\log{z}$はただ1つの複素数を表すのではなく、任意の整数$n$によって現れる無数の複素数を表します。
\[z=e^{\ln{r}+i(\theta+2n\pi)}\]
が成り立つとき、複素数$z$の対数$\log{z}$は
\[\log{z}=\ln{r}+i(\theta+2n\pi)\]
この複素数範囲における対数の定義に従って考えれば$\log{0}$というのは
すなわち、
$r$と$θ$はそれぞれ複素数$0$の複素数平面における原点からの距離と偏角なので、これらについて調べれば$\log{0}$がどんな数なのかを知ることができます。
\[0=e^{\ln{r}+i(\theta+2n\pi)}\]
が成り立つときの複素数$0$の対数となります。すなわち、
\begin{equation}\log{0}=\ln{r}+i(\theta+2n\pi)\end{equation}
です。
$r$と$θ$はそれぞれ複素数$0$の複素数平面における原点からの距離と偏角なので、これらについて調べれば$\log{0}$がどんな数なのかを知ることができます。
複素数$0$は原点からの距離が$0$となる複素数なので$r=0$となります。
すると、$(3)$の実部は$\ln{0}$となりますが、これは実数範囲における$log{0}$の1つ(底が$e$の場合)なので値が定義できません。
すると、$(3)$の実部は$\ln{0}$となりますが、これは実数範囲における$log{0}$の1つ(底が$e$の場合)なので値が定義できません。
$(3)$の実部の値が定義できないので、虚部がどんな実数であったとしてもこれらの和で表される複素数範囲における$\log{0}$は定義できないことがわかります。
以上より、$\log{0}$がどんな数であるかは実数範囲でも複素数範囲でも定義できないことがわかります。
(2025/9)内容を変更しました。
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