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2022年11月5日

実数の符号を反対にするには何乗すれば良い?

何乗で正負が反転する?

 実数の大きさを変えずに正負を反対にするには何乗すればよいでしょうか?


指数が実数の範囲で大きさが変えずに正負を反対にすることができるのは$-1$の累乗だけです。
$(-1)^n$の$n$が偶数のとき$1$となります。
このことから、$-1$以外の実数は実数乗では大きさを変えずに正負を反対にすることはできないので、複素数乗ならば可能かを考えます。

底が正の実数のとき

 まずは正の実数$a$を負の実数$-a$にする場合について考えます。
\begin{equation}a^{x+yi}=-a\end{equation}
が成り立つときの指数$x+yi$が何になるのかを求めます。

 $a$を極形式の複素数で表すと
\[a=a\{\cos(2m\pi)+i\sin(2m\pi)\}=ae^{i2m\pi}\quad(m:整数)\]
となります。また、$a=e^{\log_e{a}}=e^{\ln{a}}$なので、
\[a=e^{\ln{a}}\cdot e^{i2m\pi}=e^{\ln{a}+i2m\pi}\]
のように書くことができるので$a^{x+yi}$は
\begin{align*}a^{x+yi}&=\left(e^{\ln{a}+i2m\pi}\right)^{x+yi}\\ \\ &=e^{(\ln{a}+i2m\pi)(x+yi)}\\ \\ &=e^{x\ln{a}-2m\pi y+i(y\ln{a}+2m\pi x)}\end{align*}
となります。

関連:指数の計算法則

 また、$-a$は同様にして
\begin{align*}-a&=a\{\cos((2n+1)\pi)+i\sin((2n+1)\pi)\}\quad(n:整数)\\ \\ &=ae^{i(2n+1)\pi}\\ \\ &=e^{\ln{a}+i(2n+1)\pi}\end{align*}
となるので、(1)は
\[e^{x\ln{a}-2my\pi+i(y\ln{a}+2m\pi x)}=e^{\ln{a}+i(2n+1)\pi}\]
となります。

底が等しいとき指数も等しいので、
\[x\ln{a}-2my\pi+i(y\ln{a}+2m\pi x)=\ln{a}+i(2n+1)\pi\]
複素数が等しいとき実部と虚部がそれぞれ等しいので
\[\left\{\begin{aligned}x\ln{a}-2m\pi y&=\ln{a}&\cdots(i)\\ \\ y\ln{a}+2m\pi x&=(2n+1)\pi&\cdots(ii)\end{aligned}\right.\]
となります。
(i)の両辺を$\dfrac{2m\pi}{\ln{a}}$倍すると
\[2m\pi x-\frac{4m^2\pi^2}{\ln{a}}y=2m\pi\]
(ii)の辺々から引くと
\begin{align*}y\ln{a}+\frac{4m^2\pi^2}{\ln{a}}y&=(2n+1)\pi-2m\pi\\ \\ \frac{(\ln{a})^2+4m^2\pi^2}{\ln{a}}y&=(-2m+2n+1)\pi\\ \\ y&=\frac{(-2m+2n+1)\pi\ln{a}}{(\ln{a})^2+4m^2\pi^2}\end{align*}

これを(i)に代入して
\begin{align*}x\ln{a}-2m\pi\cdot\frac{(-2m+2n+1)\pi\ln{a}}{(\ln{a})^2+4m^2\pi^2}&=\ln{a}\\ \\ x-2m\pi\cdot\frac{(-2m+2n+1)\pi}{(\ln{a})^2+4m^2\pi^2}&=1\end{align*}
\begin{align*}x&=1+2m\pi\cdot\frac{(-2m+2n+1)\pi}{(\ln{a})^2+4m^2\pi^2}\\ \\ &=1+\frac{2m(-2m+2n+1)\pi^2}{(\ln{a})^2+4m^2\pi^2}\\ \\ &=1+\frac{\{-4m^2+2m(2n+1)\}\pi^2}{(\ln{a})^2+4m^2\pi^2}\\ \\ &=\frac{(\ln{a})^2+4m^2\pi^2}{(\ln{a})^2+4m^2\pi^2}+\frac{\{-4m^2+2m(2n+1)\}\pi^2}{(\ln{a})^2+4m^2\pi^2}\\ \\ &=\frac{(\ln{a})^2+2m(2n+1)\pi^2}{(\ln{a})^2+4m^2\pi^2}\end{align*}
となるため、指数$x+yi$は
\[x+yi=\frac{(\ln{a})^2+2m(2n+1)\pi^2}{(\ln{a})^2+4m^2\pi^2}+\frac{(-2m+2n+1)\pi\ln{a}}{(\ln{a})^2+4m^2\pi^2}i\]
となります。特に$m=n=0$のときは
\[x+yi=1+\frac{\pi}{\ln{a}}i\]
となります。

底が負の実数のとき

 次は負の実数$-a$を正の実数$a$にする場合について考えます。
\begin{equation}(-a)^{x+yi}=a\end{equation}
が成り立つときの指数$x+yi$が何であるのかを求めます。

 $-a,a$はそれぞれ
\begin{align*}-a&=e^{\ln{a}+i(2m+1)\pi}\\ \\ a&=e^{\ln{a}+i2n\pi}\end{align*}
で$(-a)^{x+yi}$は指数部分が
\begin{align*}&(\ln{a}+i(2m+1)\pi)(x+yi)\\ &\quad=x\ln{a}-(2m+1)\pi y+i\{(2m+1)\pi x+y\ln{a}\}\end{align*}
となるので、
\[(-a)^{x+yi}=e^{x\ln{a}-(2m+1)\pi y+i\{(2m+1)\pi x+y\ln{a}\}}\]
となります。

指数部分の実部と虚部を比較して連立すると
\[\left\{\begin{aligned}x\ln{a}-(2m+1)\pi y&=\ln{a}&\cdots(iii)\\ \\ (2m+1)\pi x+y\ln{a}&=2n\pi&\cdots(iv)\end{aligned}\right.\]
(iii)の両辺を$\dfrac{(2m+1)\pi}{\ln{a}}$倍すると
\[(2m+1)\pi x-\frac{(2m+1)^2\pi^2}{\ln{a}}y=(2m+1)\pi\]
(iv)から辺々を引くと
\begin{align*}y\ln{a}+\frac{(2m+1)^2\pi^2}{\ln{a}}y&=2n\pi-(2m+1)\pi\\ \\ \frac{(\ln{a})^2+(2m+1)^2\pi^2}{\ln{a}}y&=(-2m+2n-1)\pi\\ \\ y&=\frac{(-2m+2n-1)\pi\ln{a}}{(\ln{a})^2+(2m+1)^2\pi^2}\end{align*}

これを(iii)に代入すると
\begin{align*}x\ln{a}-(2m+1)\pi\cdot\frac{(-2m+2n-1)\pi\ln{a}}{(\ln{a})^2+(2m+1)^2\pi^2}&=\ln{a}\\ \\ x-\frac{(2m+1)(-2m+2n-1)\pi^2}{(\ln{a})^2+(2m+1)^2\pi^2}&=1\end{align*}
\begin{align*}x&=1+\frac{(2m+1)(-2m+2n-1)\pi^2}{(\ln{a})^2+(2m+1)^2\pi^2}\\ \\ &=1+\frac{\{-(2m+1)^2+2n(2m+1)\}\pi^2}{(\ln{a})^2+(2m+1)^2\pi^2}\\ \\ &=\frac{(\ln{a})^2+2n(2m+1)\pi^2}{(\ln{a})^2+(2m+1)^2\pi^2}\end{align*}
となるため、指数$x+yi$は
\[x+yi=\frac{(\ln{a})^2+2n(2m+1)\pi^2}{(\ln{a})^2+(2m+1)^2\pi^2}+\frac{(-2m+2n-1)\pi\ln{a}}{(\ln{a})^2+(2m+1)^2\pi^2}i\]
となります。特に$m=n=0$のときは
\[x+yi=\frac{(\ln{a})^2}{(\ln{a})^2+\pi^2}-\frac{\pi\ln{a}}{(\ln{a})^2+\pi^2}i\]
となります。

 底が$a=0$の場合は符号に関係なく$0$であるため、符号を反対にする指数は存在しません。
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