横画面推奨!
モバイル機器の場合、数式が見切れる場合があります。

2022年8月28日

二重の絶対値を含む方程式

 「次の方程式を解け。

(1)$\large\left||x-3|-2\right|=2$

(2)$\large\left||5-2x|+3\right|=-1$

(3)$\large\left||x^2-2x-3|-5\right|=0$

(4)$\large\left||x^2+3x-18|+x-3\right|=0$」

このような問題はどのように解けばよいでしょうか?

 絶対値が二重になっている場合は内側の絶対値記号から場合分けして外していきます。
絶対値記号を外す時の場合分けの基本は
\begin{align*}a<0のとき\\ |a|&=-a\\[1em]a\leqq0のとき\\ |a|&=a\end{align*}
です。

(1)$\left||x-3|-2\right|=2$

 内側の絶対値の中身$x-3$の正負について考えると
\begin{align*}x-3<0すなわち&x<3のとき\\ |x-3|&=-(x-3)\\[0.5em]&=-x+3\\[1em]x-3\geqq0すなわち&x\geqq3のとき\\ |x-3|&=x-3\end{align*}
と場合分けできます。
このことから内側の絶対値記号を外すと$x$の範囲によってそれぞれの方程式は
\[\left\{\begin{aligned}x<3のとき\\ |(-x+3)-2|&=|-x+1|=2\\[1em]x\geqq3のとき\\ |(x-3)-2|&=|x-5|=2\end{aligned}\right.\]
となります。
 それぞれの場合について方程式を解きます。

$x<3$のとき

 絶対値記号を外すと方程式は
\begin{align*}-x+1\geqq0すなわち&x\leqq1のとき\\ |-x+1|&=-x+1\\[0.5em]\therefore -x+1&=2\\[1em]-x+1<0すなわち&x>1のとき\\ |-x+1|&=-(-x+1)\\[0.5em]&=x-1\\[0.5em]\therefore x-1&=2\end{align*}
とさらに場合分けされます。
この場合分けは$x<3$の範囲内で考えたものなので、$x<3$も満たしている必要があります。
したがって、それぞれの$x$の範囲と$x<3$の共通範囲を求めます。
x<3のときの共通範囲
\begin{align*}x<3かつx\leqq1\ &\Longrightarrow\ x\leqq1\\[1em]x<3かつx>1\ &\Longrightarrow\ 1<x<3\end{align*}
得られる方程式の解はこの$x$の範囲内にある必要があるので、適切な解かを吟味します。
\begin{align*}x\leqq1のとき\\ -x+1&=2\\[0.5em]x&=-1\\[1em]1<x<3のとき\\ x-1&=2\\[0.5em]x&=3\tag{範囲外のため不適}\end{align*}
以上より$x<3$における解は$x=-1$となります。

$x\geqq3$のとき

 絶対値記号を外すと方程式は
\begin{align*}x-5<0すなわち&x<5のとき\\ |x-5|&=-(x-5)\\[0.5em]&=-x+5\\[0.5em]\therefore -x+5&=2\\[1em]x-5\geqq0すなわち&x\geqq5のとき\\ |x-5|&=x-5\\[0.5em]\therefore x-5&=2\end{align*}
となります。
この場合分けの$x$の範囲と$x\geqq3$の共通範囲は
x≧3のときの共通範囲
\begin{align*}x\geqq3かつx<5\ &\Longrightarrow\ 3\leqq x<5\\[1em]x\geqq3かつx\geqq5\ &\Longrightarrow\ x\geqq5\end{align*}
それぞれの場合における方程式を解くと
\begin{align*}3\leqq x<5のとき\\ -x+5&=2\\[0.5em]x&=3\tag{範囲内のため適する}\\[1em]x\geqq5のとき\\ x-5&=2\\[0.5em]x&=7\end{align*}
となるため$x\geqq3$における解は$x=3,7$となります。

 以上より、$(1)$の解は$x=-1,3,7$となります。
y=||x-3|-2|とy=2の共有点
右辺と左辺をそれぞれグラフで表すと

(2)$\left||5-2x|+3\right|=-1$

 内側の絶対値の中身$5-2x$の正負について考えると
\begin{align*}5-2x\geqq0すなわち&x\leqq\frac{5}{2}のとき\\ |5-2x|&=5-2x\\[1em]5-2x<0すなわち&x>\frac{5}{2}のとき\\ |5-2x|&=-(5-2x)\\[0.5em]&=2x-5\end{align*}
と場合分けできます。
このことから内側の絶対値記号を外すと
\[\left\{\begin{aligned}x\leqq\frac{5}{2}のとき\\ |(5-2x)+3|&=|8-2x|=-1\\[1em]x>\frac{5}{2}のとき\\ |(2x-5)+3|&=|2x-2|=-1\end{aligned}\right.\]
となります。
 それぞれの方程式について解くと

$x\leqq\tfrac{5}{2}$のとき

 絶対値記号を外すと方程式は
\begin{align*}8-2x\geqq0すなわち&x\leqq4のとき\\ |8-2x|&=8-2x\\[0.5em]\therefore 8-2x&=-1\\[1em]8-2x<0すなわち&x>4のとき\\ |8-2x|&=-(8-2x)\\[0.5em]=2x-8\\[0.5em]\therefore 2x-8&=-1\end{align*}
となります。
この場合分けの$x$の範囲と$x\leqq\dfrac{5}{2}$の共通範囲は
x≦5/2のときの共通範囲
\begin{align*}x\leqq\frac{5}{2}かつx\leqq4\ &\Longrightarrow\ x\leqq\frac{5}{2}\\[1em]x\leqq\frac{5}{2}かつx>4\ &\Longrightarrow\ 共通範囲なし\end{align*}
それぞれの場合における方程式を解くと
\begin{align*}x\leqq\frac{5}{2}のとき\\ 8-2x&=-1\\[0.5em]x&=\frac{9}{2}\tag{範囲外のため不適}\\[1em]x\leqq\frac{5}{2}かつx&>4は共通範囲なしなので\\ 2x-8&=-1を解いても適切な解はありません\end{align*}
となるため$x\leqq\dfrac{5}{2}$における解はありません。

$x>\tfrac{5}{2}$のとき

 絶対値記号を外すと方程式は
\begin{align*}2x-2<0すなわちx<1のとき\\ |2x-2|&=-(2x-2)\\[0.5em]&=-2x+2\\[0.5em]\therefore -2x+2&=-1\\[1em]2x-2\geqq0すなわちx\geqq1のとき\\ |2x-2|&=2x-2\\[0.5em]\therefore 2x-2&=-1\end{align*}
となります。
この場合分けの$x$の範囲と$x>\dfrac{5}{2}$の共通範囲は
x>5/2のときの共通範囲
\begin{align*}x>\frac{5}{2}かつx<1\ &\Longrightarrow\ 共通範囲なし\\[1em]x>\frac{5}{2}かつx\geqq1\ &\Longrightarrow\ x>\frac{5}{2}\end{align*}
それぞれの場合における方程式を解くと
\begin{align*}x>\frac{5}{2}かつx&<1は共通範囲なしなので\\ -2x+2&=-1を解いても適切な解がありません\\[1em],x>\frac{5}{2}のとき\\ 2x-2&=-1\\[0.5em]x&=\frac{1}{2}\tag{範囲外のため不適}\end{align*}
となるため$x>\dfrac{5}{2}$における解はありません。

 以上より、$(2)$の解はありません。
y=||5-2x|+3|とy=-1の共有点
右辺と左辺をそれぞれグラフで表すと

(3)$\left||x^2-2x-3|-5\right|=0$

 内側の絶対値の中身$x^2-2x-3$の正負について考えると
y=x^2-2x-3の各点のy座標の正負
\begin{align*}x^2-2x-3<0すなわち&-1<x<3のとき\\ |x^2-2x-3|&=-(x^2-2x-3)\\[0.5em]&=-x^2+2x+3\\[1em]x^2-2x-3\geqq0すなわち&x\leqq-1,3\leqq xのとき\\ |x^2-2x-3|&=x^2-2x-3\end{align*}
となります。
このことから内側の絶対値記号を外すと
\[\left\{\begin{aligned}-1<x<3のとき\\ |(-x^2+2x+3)-5|&=|-x^2+2x-2|=0\\[1em]x\leqq-1,3\leqq xのとき\\ |(x^2-2x-3)-5|&=|x^2-2x-8|=0\end{aligned}\right.\]
となります。
 それぞれの方程式を解くと

$-1<x<3$のとき

 2次関数$f(x)=-x^2+2x-2$について平方完成すると$f(x)=-(x-1)^2-1$となります。
$-(x-1)^2\leqq0$であるから$f(x)$は常に負となることがわかります。
したがって、$-x^2+2x-2=0$は解を持たないので$-1<x<3$においては解なしです。

$x\leqq-1,3\leqq x$のとき

 絶対値記号を外すと方程式は
y=x^2-2x-8の各点のy座標の正負
\begin{align*}x^2-2x-8<0すなわち&-2<x<4のとき\\ |x^2-2x-8|&=-(x^2-2x-8)\\[0.5em]&=-x^2+2x+8\\[0.5em]\therefore -x^2+2x+8&=0\\[1em]x^2-2x-8\geqq0すなわち&x\leqq-2,4\leqq xのとき\\ |x^2-2x-8|&=x^2-2x-8\\[0.5em]\therefore x^2-2x-8&=0\end{align*}
となります。
この場合分けの$x$の範囲と$x\leqq-1,3\leqq x$の共通範囲は
x≦-1,3≦xのときの共通範囲
\begin{align*}x\leqq-1,3\leqq xかつ-2<x<4\ &\Longrightarrow\ 3\leqq x<4\\[1em]x\leqq-1,3\leqq xかつx\leqq-2,4\leqq x\ &\Longrightarrow\ x\leqq-2,4\leqq x\end{align*}
それぞれの場合における方程式を解くと
\begin{align*}-2<x\leqq-1,&3\leqq x<4のとき\\ -x^2+2x+8&=0\\[0.5em]x^2-2x-8&=0\\[0.5em](x+2)(x-4)&=0\\[0.5em]x&=-2,4\tag{範囲外のため不適}\\[1em]x\leqq-2,&4\leqq xのとき\\ x^2-2x-8&=0\\[0.5em](x+2)(x-4)&=0\\[0.5em]x&=-2,4\end{align*}
となるため$x\leqq-1,3\leqq x$における解は$x=-2,4$です。

 以上より、$(3)$の解は$x=-2,4$となります。
y=||x^2-2-3|+5|とx軸との共有点
左辺と右辺とそれぞれグラフで表すと

(4)$\left||x^2+3x-18|+x-3\right|=0$

 内側の絶対値の中身$x^2+3x-18$の正負について考えると
y=x^2+3x-18の各点のy座標の正負
\begin{align*}x^2+3x-18<0すなわち-6<x<3のとき\\ |x^2+3x-18|&=-(x^2+3x-18)\\[0.5em]&=-x^2-3x+18\\[1em]x^2+3x-18\geqq0すなわちx\leqq-6,3\leqq xのとき\\ |x^2+3x-18|&=x^2+3x-18\end{align*}
となります。
このことから内側の絶対値記号を外すと
\[\left\{\begin{aligned}-6<x<3のとき\\ |(-x^2-3x+18)+x-3|&=|-x^2-2x+15|=0\\[1em]x\leqq-6,3\leqq xのとき\\ |(x^2+3x-18)+x-3|&=|x^2+4x-21|=0\end{aligned}\right.\]
となります。
 それぞれの方程式を解くと

$-6<x<3$のとき

 絶対値記号を外すと方程式は
y=-x^2-2x+15の各点のy座標の正負
\begin{align*}-x^2-2x+15<0すなわちx<-5,3<xのとき\\ |-x^2-2x+15|&=-(-x^2-2x+15)\\[0.5em]&=x^2+2x-15\\[0.5em]\therefore x^2+2x-15&=0\\[1em]-x^2-2x+15\geqq0すなわち-5\leqq x\leqq3のとき\\ |-x^2-2x+15|&=-x^2-2x+15\\[0.5em]\therefore -x^2-2x+15&=0\end{align*}
となります。
この場合分けの$x$の範囲と$-6<x<3$の共通範囲は
-6<x<3のときの共通範囲
\begin{align*}-6<x<3かつx<-5,3<x\ &\Longrightarrow\ -6<x<-5\\[1em]-6<x<3かつ-5\leqq x\leqq3\ &\Longrightarrow\ -5\leqq x<3\end{align*}
それぞれの場合における方程式を解くと
\begin{align*}-6<x<-5のとき\\ x^2+2x-15&=0\\[0.5em](x+5)(x-3)&=0\\[0.5em]x&=-5,3\tag{範囲外のため不適}\\[1em]-5\leqq x<3のとき\\ -x^2-2x+15&=0\\[0.5em]-(x+5)(x-3)&=0\\[0.5em]x&=-5,3\\[0.5em]x&=-5&(\because-5\leqq x<3)\end{align*}
となるため$-6<x<3$における解は$x=-5$となります。

$x\leqq-6,3\leqq x$のとき

 絶対値記号を外すと方程式は
y=x^2+4x-21の各点のy座標の正負
\begin{align*}x^2+4x-21<0すなわち-7<x<3のとき\\ |x^2+4x-21|&=-(x^2+4x-21)\\[0.5em]=-x^2-4x+21\\[0.5em]\therefore -x^2-4x+21&=0\\[1em]x^2+4x-21\geqq0すなわちx\leqq-7,3\leqq xのとき\\ |x^2+4x-21|&=x^2+4x-21\\[0.5em]\therefore x^2+4x-21&=0\end{align*}
となります。
この場合分けの$x$の範囲と$x\leqq-6,3\leqq x$の共通範囲は
x≦-6,3≦xのときの共通範囲
\begin{align*}x\leqq-6,3\leqq xかつ-7<x<3\ &\Longrightarrow\ -7<x\leqq6\\[1em]\leqq-6,3\leqq xかつx\leqq-7,3\leqq x\ &\Longrightarrow\ x\leqq-7,3\leqq x\end{align*}
それぞれの場合における方程式を解くと
\begin{align*}-7<x\leqq-6のとき\\ -x^2-4+21&=0\\[0.5em]-(x+7)(x-3)&=0\\[0.5em]x&=-7,3\tag{範囲外のため不適}\\[1em]x\leqq-7,3\leqq xのとき\\ x^2+4x-21&=0\\[0.5em](x+7)(x-3)&=0\\[0.5em]x&=-7,3\end{align*}
となるため$x\leqq -6,3\leqq x$における解は$x=-7,3$となります。

 以上より$(4)$の解は$x=-7,-5,3$となります。
y=||x^2+3x-18|+x-3|とx軸との共有点
右辺と左辺をそれぞれグラフで表すと
(2023/10)修正しました。
Share:
◎Amazonのアソシエイトとして、当サイト「数学について考えてみる」は適格販売により収入を得ています。
Powered by Blogger.

PR