関数の最大値や最小値が「ない」ときとはどのようなときなのでしょうか?
最大値とは「これより大きくならない限界の値」、
最小値とは「これより小さくならない限界の値」のことです。
そして、関数$y=f(x)$の最大値・最小値とは、$x$の値に応じて決まる$y$の値の中での最大値・最小値のこととなります。
最小値とは「これより小さくならない限界の値」のことです。
そして、関数$y=f(x)$の最大値・最小値とは、$x$の値に応じて決まる$y$の値の中での最大値・最小値のこととなります。
その中で最大値・最小値が「ない」という状況は$y$の範囲(値域)の境界に深く関係します。
関数$y=f(x)$の最大値・最小値が「ない」ときというのは、
- 値域の境界がない場合
- 境界が値域に含まれない場合
以下で詳しく見ていきます。
A. 値域の境界がない場合
1つの範囲は、
(範囲にはこれらを組み合わせたタイプもありますが、1つの範囲としては上記4タイプだけとなります。)
- $x:$すべての実数 のように、境界を定めずに全体を範囲とする
- $x>a$($x$は$a$より大きい)のように、下側に境界を定めて境界から上を範囲とする
- $x≦b$($x$は$b$以下)のように、上側に境界を定めて境界から下を範囲とする
- $a<x≦b$($x$は$a$より大きく$b$以下)のように、上下両方に境界を定めて2つの境界の間を範囲とする
(範囲にはこれらを組み合わせたタイプもありますが、1つの範囲としては上記4タイプだけとなります。)
したがって、値域の境界がない場合というのは、上下両方の境界がない0.タイプと上下どちらか一方の境界がない1.、2.タイプのことを指します。
例としてすべての実数で定義された1次関数$y=2x$の最大値・最小値について考えてみます。
$y=2x$がすべての実数で定義されているということは、$x$の範囲(定義域)がすべての実数ということであり、これは0.タイプの範囲です。
そして、この定義域に応じた値域について考えると、$y=2x$は$x$の値が大きくなると$y$の値も大きくなり、$x$の値が小さくなると$y$の値も小さくなることから、$y$はどの実数の値もとれる、すなわち値域もまたすべての実数という0.タイプの範囲となります。
そして、この定義域に応じた値域について考えると、$y=2x$は$x$の値が大きくなると$y$の値も大きくなり、$x$の値が小さくなると$y$の値も小さくなることから、$y$はどの実数の値もとれる、すなわち値域もまたすべての実数という0.タイプの範囲となります。
ここで、すべての実数という範囲というのは、いくらでも大きな値の実数でもとれる、逆にいくらでも小さな値の実数でもとれるということなので、これより大きくならない・小さくならない限界の値というものが存在しません。
したがって、すべての実数で定義された1次関数$y=2x$の$y$の値には最大値・最小値ともにありません。
このように値域の境界が定められていない場合、その部分でいくらでも大きな(小さな)値をとることができるので最大値(最小値)がなくなります。
B. 境界が値域に含まれない場合
不等式によって表す範囲には、不等号”$<,
>$”をもちいたものと等号付き不等号”$≦,
≧$”をもちいたものがあります。その中で不等号をもちいた範囲は境界を含みません。
例えば、$x≦2$と$x<2$はともに$x=2$という境界を定め、この境界より下を範囲とする2.タイプの範囲です。
$x≦2$は等号付き不等号をもちいているので境界$x=2$を含みます。すなわち、$x$は$2$以下の値をとることを意味します。
一方、$x<2$は不等号をもちいているので境界$x=2$を含みません。すなわち、$x$は$2$未満の値をとることを意味します。
$x≦2$は等号付き不等号をもちいているので境界$x=2$を含みます。すなわち、$x$は$2$以下の値をとることを意味します。
一方、$x<2$は不等号をもちいているので境界$x=2$を含みません。すなわち、$x$は$2$未満の値をとることを意味します。
例として$1<x<6$で定義された1次関数$y=\dfrac{1}{2}x$の最大値・最小値について考えます。
定義域$1<x<6$は3.タイプの範囲で、かつ上下の境界をともに含みません。
この定義域に応じた値域を考えます。
この定義域に応じた値域を考えます。
しかし、定義域$1<x<6$より$x$は2つの境界$x=1$と$x=6$の間の値しかとらないので、$y$はそれぞれの境界に対応する$y=\dfrac{1}{2}\cdot1=\dfrac{1}{2}$と$y=\dfrac{1}{2}\cdot6=3$の間の値をとることになります。すなわち、値域は$y=\dfrac{1}{2}$と$y=3$を境界とする3.タイプの範囲ということです。
また、定義域は2つの境界$x=1$と$x=6$を含まないので、値域もこれらに対応する境界$y=\dfrac{1}{2}$と$y=3$を含みません。
したがって、値域は$\mathbf{\dfrac{1}{2}<y<3}$となります。
ここで、値域が境界を含んで$\dfrac{1}{2}\leqq
y\leqq3$であった場合、最小値は$\dfrac{1}{2}$、最大値は$3$となります。
しかし、実際は境界を含まないので、値域$\dfrac{1}{2}<y<3$における最小値は$\dfrac{1}{2}$より大きい実数の中で最小の数、最大値は$3$未満の実数の中で最大の数であると考えられます。
なので、値域$\dfrac{1}{2}<y<3$における最小値・最大値は何なのか調べてみます。
最大値
$3$未満の実数の中で最大の数として、まず$2.9$を挙げてみます。
すると、より適する数として$2.99$があることがわかります。
さらに、より適する数には$2.999$が、$2.9999$が、$2.99999$が、…といくらでも挙げることができます。
すると、より適する数として$2.99$があることがわかります。
さらに、より適する数には$2.999$が、$2.9999$が、$2.99999$が、…といくらでも挙げることができます。
最終的に$2.999\cdots$という小数点以下に無限に$9$が並ぶ数(循環小数の記法では$2.\dot{9}$)が$3$未満の実数の中で最大の数になると考えることができますが、これは適切ではありません。
等式には$0.\dot{9}=1$というのがあります。これにより、
\begin{align*}2.999\cdots&=2+0.999\cdots\\[0.5em]&=2+1\\[0.5em]&=3\end{align*}
となるため、$2.999\cdots$は$3$と等しくなってしまいます。
したがって、$2.999\cdots$は$1<x<6$で定義された1次関数$y=\dfrac{1}{2}x$の最大値になりません。
また、$2.\dot{9}=3$であることをもとに$3$未満の数の中で最大の数を考えてみると、
- 1桁$9$を加えると$2.\dot{9}$になる数
- $2.999\cdots$の小数点以下のどこかで$9$以外が現れる数
しかし、前者は1桁加えるだけで有限小数が無限小数になることはあり得ないため存在せず、後者は最も小さい桁に$8$が現れるのが理想ですが、無限小数ゆえに最も小さい桁が存在しないためにやはり存在しない数となります。
このように、「これより大きくならない限界の値」である最大値に適する数を具体的に挙げることはできないため、$1<x<6$で定義された1次関数$y=\dfrac{1}{2}x$の最大値はないということになります。
最小値
$\dfrac{1}{2}$より大きい実数の中で最小の数として、$\dfrac{1}{2}=0.5$であることからまずは$0.51$を挙げてみます。
すると、より適する数として$0.501$があることがわかります。
さらに、より適する数には$0.5001$が、$0.50001$が、$0.500001$が、…といくらでも挙げることができます。
すると、より適する数として$0.501$があることがわかります。
さらに、より適する数には$0.5001$が、$0.50001$が、$0.500001$が、…といくらでも挙げることができます。
最終的に$0.5000/cdots$という小数点第2位以降無限に$0$が並ぶ数(循環小数の記法では$0.5\dot{0}$)が$\dfrac{1}{2}$より大きい実数の中で最小の数になると考えることができますが、これは適切ではありません。
$0.\dot{9}=1$で起きていること、すなわち「ある実数$A$に限りなく近づけた実数として$B$を得ても、$B$は$A$に最も近い実数ではなく$A$そのものになってしまう」ことにより、$0.5000/cdots$は$\dfrac{1}{2}$と等しくなってしまいます。
したがって、$0.5000/cdots$は$1<x<6$で定義された1次関数$y=\dfrac{1}{2}x$の最小値になりません。
また最大値のときと同様に、「これより小さくならない限界の値」である最小値に適する数を具体的に挙げることはできないため、$1<x<6$で定義された1次関数$y=\dfrac{1}{2}x$の最小値はないということになります。
このように境界が値域に含まれない場合、値域内で最も境界に近い数を具体的に求めることができないため最大値(最小値)がなくなります。
(2025/12)内容を変更しました。
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