最大値や最小値が「ない」ときとはどのようなときなのでしょうか?
まず、最大値と最小値の意味について確認します。
最大値とは「これより大きくなることがない限界となる値」、最小値とは「これより小さくなることがない限界となる値」のことです。
範囲に端がないとき
この例題の場合、$x$が小さくなると$y$は大きくなります。つまり、$x$が果てしなく小さくなれるということは$y$は果てしなく大きくなれるということなので、これが限界だといえる値がありません。
したがって、最大値はありません。
このように定義域に端がないと最大値や最小値が存在しないときがあります。2次関数の頂点のように関数自体に定義域の端以外で最大や最小となるような特徴がない限り最大値や最小値は存在しません。
定義域が等号なし不等号であるとき
定義域$x<2$には等号付きでない不等号が使われています。
等号付き不等号の$x\leqq2$が定義域の場合、$y=-2x+5$における最小値は定義域の端の$x=2$のときの$y=1$になるのですが、例題の定義域$x<2$には$x=2$が含まれていないため、最小となるときの$x$の値は$2$未満で$2$に最も近い数となりそうです。
すると$x=1.99999\cdots$という小数点以下に$9$が無数に並ぶ数(循環小数の記法に従えば$x=1.\dot{9}$)になりそうですが、ここで問題が起きます。
したがって、$1.99999\cdots$は$2$未満で$2$に最も近い数ではないこと、小数部分の$9$は無限に続かないことがわかります。
そこで、「$2$未満で$2$に最も近い数とはなにか?」について考えます。
例えば、$1.\dot{9}$の小数点以下のどこかの桁を$8$に置き換えた数というものが考えられます。
最も小さい桁を$8$に置き換えた数が最も$2$に近いといえるのですが、$1.\dot{9}$は小数点以下の桁が無限に続くので一番小さい桁というものがないので置き換えることができません。
また、どこかの桁を$8$に置き換えたとしても、より小さい桁を$8$に置き換えた数を提示できる以上はっきりと$2$未満で$2$に最も近い数を提示することは不可能です。
今度は$1.99999\cdots$の小数部分の$9$は無限に続かないという点から「$9$が何桁続くのか?」というアプローチで考えてみます。言い換えると「1桁$9$を加えることで$1.\dot{9}$になる数はなにか?」です。
しかし、$1.\dot{9}$は$9$が無限に続くので、桁に限りのあるどんな数に1桁$9$を加えても$1.\dot{9}$になるはずはありません。
したがって、そんな数は存在しないことになります。
このように定義域の等号付きでない不等号が使われているほうの端で最小となりそうなとき、その定義域の端の$x$の値がわからないので最小値となるであろう$y$の値も求めることができません。これは最大値の場合でも同様です。