円周角の定理はなぜ成り立つのでしょうか?
これが成り立つことを確かめてみます。
そのための方法として以下のタレスの定理の証明方法を利用します。
タレスの定理
タレスの定理とは「円周上に円の直径の端点$A,C$とそれ以外の任意の点$B$をおくと、$∠ABC=90°$(直角)となる。」という定理です。
これが成り立つことを確かめる方法は以下のようになります。
$OA,OB,OC$はそれぞれ円$O$の半径なので$△OAB,△OBC$は二等辺三角形となります。
$△OAB,△OBC$の底角をそれぞれ$\alpha,\beta$とすると$△ABC$の内角は
\[2\alpha+2\beta=180°\]
となります。
これの両辺を$2$で割れば
\[\alpha+\beta=90°\]
となります。
$∠ABC=α+β$なので、点$B$が$A,C$以外のどこにあっても常に$∠ABC=90°$が成り立ちます。
この二等辺三角形をつくる方法を利用して円周角の定理を確かめます。
円周角の定理
円$O$の円周上に異なる3点$A,B,C$をおき、円周角$∠ABC$について考えます。
1. 弧$AC$の長さが円周の半分より長いとき
$OA,OC$と$OB$を延長した直径$BD$を引きます。$OA,OB,OC$はそれぞれ円$O$の半径なので$△OAB,△OBC$は二等辺三角形となります。
$△OAB,△OBC$の底角をそれぞれ$\alpha,\beta$、すなわち
\[∠ABC=\alpha+\beta\]
となります。この角は点$D$を含むほうの弧$AC$に対する円周角となります。
\begin{align*}∠OAB=∠OBA&=\alpha\\[0.5em]∠OBC=∠OCB&=\beta\end{align*}
とすると、$∠ABC$は\[∠ABC=\alpha+\beta\]
となります。この角は点$D$を含むほうの弧$AC$に対する円周角となります。
また、$△OAB,△OBC$それぞれの外角$∠AOD,∠COD$に着目すると$∠AOD&=2\alpha,∠COD&=2\beta$となります。
したがって、同じ弧に対する中心角$∠AOC$は
\begin{align*}∠AOC&=2\alpha+2\beta\\[0.5em]&=2(\alpha+\beta)\\[0.5em]\therefore∠AOC&=2∠ABC\end{align*}
となります。
外角の定理より導かれるこの関係は、点$A,C$を除く$D$を含まないほうの弧$AC$上のどの位置に点$B$があっても常に成り立ちます。
これはつまり2点$A,C$を固定して中心角$∠AOC$が変わらなければ同じ弧に対する円周角$∠ABC$も変わらず一定であるということです。
2. 弧$AC$の長さが円周の半分に等しいとき
$BO$を延長して直径$BD$を引きます。タレスの定理で導出した通り$∠ABC=\alpha+\beta=90°$であり、この角は点$D$を含むほうの弧$AC$に対する円周角です。
1.と同様に外角の定理より$∠AOD&=2\alpha,∠COD&=2\beta$なので、同じ弧に対する中心角$∠AOC$は
\begin{align*}∠AOC&=2(\alpha+\beta)\\[0.5em]&=2∠ABC\\[0.5em]\therefore∠AOC&=180°\end{align*}
となります。
3. 弧$AC$の長さが円周の半分より短いとき
3-1. $△ABC$の内部に中心$O$があるとき
$OA,OC$と$OB$を延長した直径$BD$を引きます。
二等辺三角形$△OAB,△OBC$の底角をそれぞれ$\alpha,\beta$とすると、$∠ABC$は$∠ABC=\alpha+\beta$となります。この角は点$D$を含むほうの弧$AC$に対する円周角です。
また、外角の定理より$∠AOD&=2\alpha,∠COD&=2\beta$となるので、同じ弧に対する中心角$∠AOC$は
\begin{align*}∠AOC&=2\alpha+2\beta\\[0.5em]&=2(\alpha+\beta)\\[0.5em]\therefore∠AOC&=2∠ABC\end{align*}
となります。
これは弧$AC$上の$△ABC$の内部に中心$O$があるような位置に点$B$がある限り常に成り立ちます。
3-2. $△ABC$の辺上に中心$O$があるとき
$OA,OB$を引くとこれらは円$O$の半径なので$△OAB$は二等辺三角形となります。
$△OAB$の底角を$\alpha$とすると、点$B$を含まないほうの弧$AC$に対する円周角$∠ABC$は$∠ABC=\alpha$となります。
また、外角の定理より同じ弧に対する中心角$∠AOC$は
\begin{align*}∠AOC&=2\alpha\\[0.5em]\therefore∠AOC&=2∠ABC\end{align*}
となります。これは$AB$上に中心$O$がある場合でも同様です。
3-3. $△ABC$の外部に中心$O$がある場合
$OA,OC$と$OB$を延長した直径$BD$を引きます。
二等辺三角形$△OAB,△OBC$の底角をそれぞれ$\alpha,\beta$とすると、$∠ABC$は$∠ABC=\alpha-\beta$となります。この角は点$D$を含むほうの弧$AC$に対する円周角です。
また、外角の定理より$∠AOD&=2\alpha,∠COD&=2\beta$となるので、同じ弧に対する中心角$∠AOC$は
\begin{align*}∠AOC&=2\alpha-2\beta\\[0.5em]&=2(\alpha-\beta)\\[0.5em]\therefore∠AOC&=2∠ABC\end{align*}
となります。これは点$B$が点$A$より点$C$に近い場合でも同様です。
したがって、弧$AC$上の$△ABC$の外部に中心$O$があるような位置に点$B$がある限り常に成り立ちます。
3-1.、3-2.、3-3.より常に$∠AOC=2∠ABC$が成り立つことがわかります。
1.、2.、3.より3点$A,B,C$を円周上にどのように配置しても
- 1つの弧に対する中心角の大きさは同じ弧に対する円周角の大きさの2倍である。
- 1つの弧に対する円周角の大きさは一定である。
また、1つの円において長さの等しい弧に対する中心角は等しいので、それぞれの弧に対する円周角も等しくなります。
(2023/4)内容を変更しました。
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