1. 1つの弧に対する円周角の大きさは一定である。
2. 1つの弧に対する中心角の大きさは同じ弧に対する円周角の2倍である。
1.の逆
また、1.の逆の「~成り立つとき~」は「~成り立つならば~」に書き換えることができ、1.も1.の逆も命題の形をとっていることがわかります。
「2点$\text{C, D}$が直線$\text{AB}$に関して同じ側にあるような4点$\text{A, B, C, D}$について」という前提部分を除いて1.と1.の逆を比較すると「ならば」の前後が入れ替わっています。
「ならば」の前後を入れ替えた命題は逆の命題なので、1.と1.の逆は互いに逆の命題であることがわかります。
4点$\text{A, B, C, D}$だけでは$∠\text{ACB},∠\text{ADB}$が1つの弧に対する円周角にならない場合があるので、この位置条件が必要になります。
前提部分は逆の命題でも共通するので1.の逆にも同様に付きます。
すると、1.の逆の命題が偽であると仮定するならば、その反例は「$∠\text{ACB}=∠\text{ADB}$が成り立つが点$\text{D}$が3点$\text{A, B, C}$がある同一円周上にない」ことを示すものとなります。
そこで「点$\text{D}$が3点$\text{A, B, C}$がある同一円周上になくても$∠\text{ACB}=∠\text{ADB}$が成り立つ」ことがないということを示します。
これが示せれば反例の存在する余地がないので1.の逆の命題が真であることがわかります。
点$\text{D}$が3点$\text{A, B, C}$を通る円の外部にある場合
また、仮定より$∠\text{ACB}=∠\text{ADB}$が成り立ちます。
すると$∠\text{ADB}=∠\text{APB}$となり、これら2角は同位角なので$\text{AD}//\text{AP}$が成り立ちます。
しかし、$\text{AD}$と$\text{AP}$は点$\text{A}$で交わるので$\text{AD}//\text{AP}$と矛盾します。
したがって仮定は誤りであり、少なくとも点$\text{D}$は円$\text{O}$の外部には存在しません。
点$\text{D}$が3点$\text{A, B, C}$を通る円の内部にある場合
また、仮定より$∠\text{ACB}=∠\text{ADB}$が成り立ちます。
すると$∠\text{ADB}=∠\text{APB}$となり、同位角が等しいので$\text{AD}//\text{AP}$が成り立ちます。
しかし、$\text{AD}$と$\text{AP}$は点$\text{A}$で交わるので$\text{AD}//\text{AP}$と矛盾します。
したがって仮定は誤りであり、点$\text{D}$は円$\text{O}$の内部にも存在しません。
2.の逆
すると、2.の逆は
円周角が鈍角のときは点$\text{C}$と$\text{D}$は直線$\text{AB}$に関して互いに反対側に存在します。
2.の命題は前提がなくとも真となるので、1.のような位置条件を加える必要がありません。
$∠\text{ACB}$が鋭角または鈍角の場合
2.の逆が成り立つと仮定すれば点$\text{D}$は3点$\text{A, B, C}$を通る円$\text{O}$の中心となります。
ここで3点$\text{A, B, D}$を通る円を描き、この円周上の直線$\text{AB}$に関して点$\text{D}$と同じ側に点$\text{D}$とは異なる点$\text{Q}$をとります。
すると円周角の定理より$∠\text{ADB}=∠\text{AQB}$が成り立ちます。すなわち$2∠\text{ACB}=∠\text{AQB}$が成り立つため2.の逆より点$\text{Q}$が円$\text{O}$の中心となります。
しかし、これは円$\text{O}$の中心は点$\text{D}$であるということに矛盾します。
したがって仮定は誤り、すなわち$∠\text{ACB}$が鋭角または鈍角の場合、2.の逆は偽であることがわかります。
$∠\text{ACB}$が直角の場合
この場合でも$∠\text{ACB}$が鋭角または鈍角の場合同様、2.の逆が成り立つと仮定すれば点$\text{D}$が3点$\text{A, B, C}$を通る円$\text{O}$の中心となります。
ここで、線分$\text{AB}$上に点$\text{D}$とは異なる点$\text{Q}$をとれば$∠\text{AQB}=180°$となり、$2∠\text{ACB}=∠\text{AQB}$が成り立つため2.の逆より点$\text{Q}$が円$\text{O}$の中心となります。
しかし、これは円$\text{O}$の中心は点$\text{D}$であるということに矛盾します。
したがって、仮定は誤り、すなわち$∠\text{ACB}$が直角の場合でも2.の逆は偽であることがわかります。
円周角の大きさは$180°$未満なので、以上より円周角$∠\text{ACB}$がいずれの大きさを持っていたとしても仮定は誤り、すなわち2.の逆が偽となることがわかります。
以上より、円周角の定理の逆として常に成り立つのは1.の逆である「2点$C, D$が直線$\text{AB}$に関して同じ側にあるような4点$\text{A, B, C, D}$について、$∠\text{ACB}=∠\text{ADB}$が成り立つとき4点は同一円周上にある。」だけとなります。