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2023年9月22日

方べきの定理の逆は成り立つ?

方べきの定理
 方べきの定理とは

$\mathbf{\text{(a),(b)}}:$ 2本の弦$AB,CD$、またはそれらの延長が点$P$で交わるとき、$AP\cdot BP=CP\cdot DP$が成り立つ。

$\mathbf{\text{(c)}}:$ 点$A$を通る接線と弦$BC$の延長が点$P$で交わるとき、$AP^2=BP\cdot CP$が成り立つ。

という定理のことです。

では、方べきの定理の逆とはどういったものとなり、それは成り立つでしょうか?


 方べきの定理は次のように書き換えることができます。

$\mathbf{\text{(a),(b)}}:$ 点$P$で交わる2直線$l,m$のうち直線$l$上にとった点$A,B$と直線$m$上にとった点$C,D$について、4点$A,B,C,D$が同一円周上にあるならば$AP\cdot BP=CP\cdot DP$が成り立つ。

$\mathbf{\text{(c)}}:$ 点$P$で交わる2直線$l,m$のうち直線$l$上にとった点$A$、直線$m$上にとった点$B,C$について、直線$AP\ (l)$が3点$A,B,C$を通る円の接線ならば$AP^2=BP\cdot CP$が成り立つ。

すると、方べきの定理の逆は以下のようになります。

$\mathbf{\text{(a),(b)の逆}}:$ 点$P$で交わる2直線$l,m$のうち直線$l$上にとった点$A,B$と直線$m$上にとった点$C,D$について、$AP\cdot BP=CP\cdot DP$が成り立つならば4点$A,B,C,D$は同一円周上にある。

$\mathbf{\text{(c)の逆}}:$ 点$P$で交わる2直線$l,m$のうち直線$l$上にとった点$A$、直線$m$上にとった点$B,C$について、$AP^2=BP\cdot CP$が成り立つならば直線$AP\ (l)$は3点$A,B,C$を通る円の接線となる。

これらが成り立つことを確かめてみます。

$\text{(a)}$の逆

方べきの定理の逆1
 $\text{(a)}$の逆は直線$l$上の点$A,B$、直線$$m$上の点$C,D$はそれぞれ点$P$に関して互いに反対側にある場合です。
$△ACP$と$△DBP$に着目します。
  • 仮定より$AP\cdot BP=CP\cdot DP$
  • これの両辺を$BP\cdot DP$で割り、変形すると
    \begin{align*}\frac{AP\cdot BP}{BP\cdot DP}&=\frac{CP\cdot DP}{BP\cdot DP}\\[0.5em]\frac{AP}{DP}&=\frac{CP}{BP}\\[0.5em]\therefore AP:DP&=CP:DP\tag1\end{align*}
  • 対頂角より
    \[∠APC=∠DPB\tag2\]
$(1),(2)$より2組の辺の比とその間の角がそれぞれ等しいので$△ACP$と$△DBP$は相似であることがわかります。
このことから$∠CAP=∠BDP$が成り立ちます。

これらの角は直線$BC$に関して同じ側にある角なので、円周角の定理の逆より4点$A,B,C,D$は同一円周上にあることがわかります。
したがって、$\text{(a)}$の逆が成り立つことがわかります。


$\text{(b)}$の逆

方べきの定理の逆2
 $\text{(b)}$の逆は直線$l$上の点$A,B$、直線$$m$上の点$C,D$はそれぞれ点$P$に関して同じ側にある場合です。
$△ACP$と$△DBP$に着目します。
  • 仮定より$AP\cdot BP=CP\cdot DP$
  • これの両辺を$BP\cdot DP$で割り、変形すると
    \begin{align*}\frac{AP\cdot BP}{BP\cdot DP}&=\frac{CP\cdot DP}{BP\cdot DP}\\[0.5em]\frac{AP}{DP}&=\frac{CP}{BP}\\[0.5em]\therefore AP:DP&=CP:DP\tag3\end{align*}
  • 共通の角より
    \[∠APC=∠DPB\tag4\]
$(3),(4)$より2組の辺の比とその間の角がそれぞれ等しいので$△ACP$と$△DBP$は相似であることがわかります。
このことから
\[∠CAP=∠BDP\tag5\]
が成り立ちます。
ここで、$∠BAC$について考えると、$(5)$より
\begin{align*}∠BAC&=180°-∠CAP\\[0.5em]\therefore∠BAC&=180°-∠BDP\tag6\end{align*}
四角形$ABDC$の対角の組$∠BAC,∠BDC$について、$(6)$より
\begin{align*}∠BAC+∠BDC&=∠BAC+∠BDP\\[0.5em]&=(180°-∠BDP)+∠BDP\\[0.5em]&=180°\end{align*}
なので、円に内接する四角形の対角の性質の逆より4点$A,B,C,D$は同一円周上にあることがわかります。
したがって、$\text{(b)}$の逆が成り立つことがわかります。

$\text{(c)}$の逆

方べきの定理の逆3
 $△ABP$と$△ACP$に着目します。
  • 仮定より$AP^2=BP\cdot CP$
  • これの両辺を$AP\cdot CP$で割り、変形すると
    \begin{align*}\frac{AP^2}{AP\cdot CP}&=\frac{BP\cdot CP}{AP\cdot CP}\\[0.5em]\frac{AP}{CP}&=\frac{BP}{AP}\\[0.5em]\therefore AP:CP&=BP:AP\tag7\end{align*}
  • 共通の角より
    \[∠APB=∠CPA\tag8\]
$(7),(8)$より2組の辺の比とその間の角がそれぞれ等しいので$△ABP$と$△ACP$は相似であることがわかります。
このことから
\[∠BAP=∠APC\tag9\]
が成り立ちます。

$△ABC$と$(9)$に着目すれば接弦定理の逆より直線$AP$は3点$ABC$を通る円の接線となることがわかります。
したがって、$\text{(c)}$の逆が成り立つことがわかります。


 以上より、$\text{(a),(b),(c)}$いずれの場合でも方べきの定理の逆が成り立つことがわかります。

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