\[\Large x^2-6x=0\]
という2次方程式を解くとき、両辺を$x$で割って
\begin{align*}x-6&=0\\[0.5em] x&=6\end{align*}
としてはならないのはなぜでしょうか?
正しい手順で解くと、因数分解して
\[x(x-6)=0\]
これが成り立つのは$x=0,x-6=0$のいずれかであるときなので、
\[x=0,6\]
が解となります。
2つの解き方を比較すると間違った解き方では$x=0$がありません。それはなぜなのかについて考えます。
\begin{equation}x^2-6x=0\end{equation}
という2次方程式を解くとは、「”すべての実数の中で”この方程式を成り立たせることができる適切な$x$の値をすべて求める」ことということができます。この「すべての実数の中で」というのが重要となります。両辺を$x$で割ると
それは$0$です。$0$で割ることはできないからです。
\[\frac{x^2-6x}{x}=\frac{0}{x}\]
と書けますが、ここで実数の中で分母に入れることができない数があります。それは$0$です。$0$で割ることはできないからです。
\begin{equation}x-6=0\end{equation}
したがって、$(1)$の両辺を$x$で割って上式に変形できるのは$x$が$0$以外のときなので、両辺を$x$で割ったあとのこの方程式を解くとは、「”$0$を除く実数の中で”この方程式を成り立たせることができる適切な$x$の値をすべて求める」となります。
「$0$を除く実数の中で」とあるので、$(1)$を解くには$(2)$を解くだけでは不十分です。$(1)$で要求されているのは「すべての実数の中で適切な$x$をすべて求める」ことなので、割り算の都合上切り捨てられてしまった$x=0$のときについても考える必要があります。
$(2)$を解くと
\[x=6\]
$(1)$に$x=0$を代入して
\begin{align*}(左辺)&=0^2-6\cdot0\\[0.5em]&=0=(右辺)\end{align*}
となり$x=0$のとき$(1)$が成り立つので$x=0$も解となります。
したがって、両辺を$x$で割って解く方法で得られる解も正しい手順の場合同様$x=0,6$となります。
以上から、実は$x$のとれる値に注意すれば両辺を$x$で割っても2次方程式を解くことができることがわかります。
この方法が誤りとされるのは、$x$のとれる値の範囲が割る前後で変わっていることに気付かずに解いてしまうからなのです。
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