2つのベクトルが同じ向きであるか互いに反対向きであるとき、これらのベクトルは平行であるといいます。
\vec{\text{A}}=(a_1,a_2),\vec{\text{B}}=(b_1,b_2)の2つのベクトルが平行であるならば
\begin{align*}\vec{\text{A}}&=k\vec{\text{B}}&(k:実数)\tag{a}\\[0.5em]a_1b_2-a_2b_1&=0\tag{b}\end{align*}
が成り立ちます。
ベクトルの実数倍はベクトルの向きは変わらないか逆向きになるので\text{(a)}が平行なベクトル間で成り立つことはわかりますが、なぜ平行ならば\text{(b)}が成り立つといえるのでしょうか?
2通りの方法で確かめてみます。
1. 比例式
\text{(a)}より
(a_1,a_2)=k(b_1,b_2)=(kb_1,kb_2)
なので、
\begin{align*}a_1:b_1&=a_2:b_2\\[0.5em]
a_1b_2&=a_2b_1\\[0.5em]a_1b_2-a_2b_1&=0\end{align*}
となり、\text{(b)}が成り立つことがわかります。
2. \sinθの利用
2つのベクトルが平行であるということは2つのベクトルのなす角が0°または180°であるということです。
この点に着目し
|\vec{\text{A}}||\vec{\text{B}}|\sinθ
という式について考えます。
\vec{\text{A}},\vec{\text{B}}それぞれの位置ベクトルを考え、x軸の正の方向にのびる半直線と各ベクトルとのなす角をα,β(ただし、α>β)、\vec{\text{A}}と\vec{\text{B}}のなす角をθとすると、以下のようなことがわかります。
\begin{align*}|\vec{\text{A}}|&=\sqrt{{a_1}^2+{a_2}^2},\\[0.5em]|\vec{\text{B}}|&=\sqrt{{b_1}^2+{b_2}^2}\\[1em]\cos\alpha&=\frac{a_1}{\sqrt{{a_1}^2+{a_2}^2}},\\[0.5em]\sin\alpha&=\frac{a_2}{\sqrt{{a_1}^2+{a_2}^2}}\\[1em]\cos\beta&=\frac{b_1}{\sqrt{{b_1}^2+{b_2}^2}},\\[0.5em]\sin\beta&=\frac{b_2}{\sqrt{{b_1}^2+{b_2}^2}}\end{align*}
θ=\alpha-\betaとなるので加法定理より
\begin{align*}\sinθ&=\sin(\alpha-\beta)\\[0.5em]&=\sin\alpha\cos\beta-\cos\alpha\sin\beta\\[0.5em]&=\frac{a_2}{\sqrt{{a_1}^2+{a_2}^2}}\cdot\frac{b_1}{\sqrt{{b_1}^2+{b_2}^2}}-\frac{a_1}{\sqrt{{a_1}^2+{a_2}^2}}\cdot\frac{b_2}{\sqrt{{b_1}^2+{b_2}^2}}\\[0.5em]&=\frac{a_2b_1-a_1b_2}{\sqrt{{a_1}^2+{a_2}^2}\sqrt{{b_1}^2+{b_2}^2}}\end{align*}
したがって、
\begin{align*}|\vec{\text{A}}||\vec{\text{B}}|\sinθ&=\sqrt{{a_1}^2+{a_2}^2}\cdot\sqrt{{b_1}^2+{b_2}^2}\cdot\frac{a_2b_1-a_1b_2}{\sqrt{{a_1}^2+{a_2}^2}\sqrt{{b_1}^2+{b_2}^2}}\\[0.5em]&=a_2b_1-a_1b_2\end{align*}
ここで、θ=0°,180°のとき\sinθ=0、すなわち|\vec{\text{A}}||\vec{\text{B}}|\sinθ=0なので
a_2b_1-a_1b_2=0
両辺に-1を掛けても成り立つので
a_1b_2-a_2b_1=0
以上から\vec{\text{A}},\vec{\text{B}}が平行なとき\text{(b)}が成り立つことがわかります。
ちなみに|\vec{\text{A}}||\vec{\text{B}}|\sinθはベクトルの外積に関係しています。
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