\begin{equation}\frac{1}{(x+2)(x-3)}=\frac{A}{x+2}+\frac{B}{x-3}\end{equation}
「上の式が成り立つような$A,B$の値を求めよ。」
部分分数分解とは分母に複数の因数が含まれる分数を複数の分数の和に分解する方法のことです。
部分分数分解するときは、問題のような式をつくり分子の値を調べます。
まずは$(1)$の両辺に$(x+2)(x-3)$を掛けて分母を払います。
\begin{equation}1=A(x-3)+B(x+2)\end{equation}
$(2)$は恒等式であるため$A,B$の値を決める方法には係数比較法と数値代入法の2つがあります。
係数比較法
$(2)$の右辺を展開して整理すると
\[0x+1=(A+B)x+(-3A+2B)\]
両辺で係数を比較して
\[1=(A+B)x-3A+2B=(A+B)x+(-3A+2B)\]
さらに左辺が以下のようにできることを考えると\[0x+1=(A+B)x+(-3A+2B)\]
両辺で係数を比較して
\[\left\{\begin{aligned}A+B&=0&\cdots\text{(a)}\\[0.5em]-3A+2B&=1&\cdots\text{(b)}\end{aligned}\right.\]
という連立方程式を組むことができます。
$\text{(a)}×2-\text{(b)}$より
\begin{align*}5A&=-1\\[0.5em]A&=-\frac{1}{5}\end{align*}
$\text{(a)}$に代入して
\begin{align*}-\frac{1}{5}+B&=0\\[0.5em]B&=\frac{1}{5}\end{align*}
以上より
\[A=-\frac{1}{5},B=\frac{1}{5}\]
数値代入法
$(2)$に$x=-2$を代入すれば$A$だけが残るので
\begin{align*}1&=-5A\\[0.5em]A&=-\frac{1}{5}\end{align*}
$x=3$を代入すれば$B$だけが残るので
\begin{align*}1&=5B\\[0.5em]B&=\frac{1}{5}\end{align*}
ここで$(2)$は恒等式なのですべての数$x$で成り立ちますが、特定の値だけを代入して$A,B$を求めています。
なので、$(2)$が恒等式であること、得られた$A,B$の値で$(1)$が成り立つことを確かめるために、$(1)$に代入して解を吟味します。
なので、$(2)$が恒等式であること、得られた$A,B$の値で$(1)$が成り立つことを確かめるために、$(1)$に代入して解を吟味します。
\begin{align*}\cfrac{-\cfrac{1}{5}}{x+2}+\cfrac{\cfrac{1}{5}}{x-3}&=\frac{1}{5}\left(-\frac{1}{x+2}+\frac{1}{x-3}\right)\\[0.5em]&=\frac{1}{5}\cdot\frac{-(x-3)+(x+2)}{(x+2)(x-3)}\\[0.5em]&=\frac{1}{5}\cdot\frac{5}{(x+2)(x-3)}\\[0.5em]&=\frac{1}{(x+2)(x-3)}\end{align*}
$(1)$が成り立つので
\[A=-\frac{1}{5},B=\frac{1}{5}\]
数値代入法で解くとき、恒等式に関する「ある方程式がすべての数$x$で成り立つならば、その方程式は$x$に何らかの値を代入しても成り立つ」という命題の逆「ある方程式に$x$に何らかの値を代入して成り立つならば、その方程式はすべての数$x$でも成り立つ」を利用しています。前者の命題は真ですが、後者は真ではありません。
$x$に何らかの値を代入して得た値はその代入した$x$の値でしか成り立たない可能性(問題の場合は$x=-2,3$でしか成り立たない$A,B$を得た可能性)があるため数値代入法では本当に恒等式になるのかの確認が必要になります。
恒等式に代入して吟味しても良いですが、部分分数分解の等式は$x$に代入した値以外で常に成り立つ等式なので、こちらに代入して吟味することもできます。
また、数値代入法にて$(1)$で分母が$0$になってしまうために代入できない$x=-2,3$を代入して$A,B$を求めており、この方法は大丈夫なのか?と思うかもしれません。
たしかに、$(1)$から$(2)$へ同値変形すると
たしかに、$(1)$から$(2)$へ同値変形すると
\begin{align*}&\frac{1}{(x+2)(x-3)}=\frac{A}{x+2}+\frac{B}{x-3}\\[0.5em]&\quad\Leftrightarrow\
1=A(x-3)+B(x+2)\ ただしx\neq-2,3\end{align*}
となるため、$(2)$には$x=-2,3$を代入できないように見えます。
しかし、$x\neq-2,3$というのは$(1)$と同値であるための条件であって、$(2)$の恒等式自体は$x=-2,3$のときでも成立します。なので、恒等式の未知数$A,B$を求めるときには問題なく$x=-2,3$を使うことができます。
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