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2022年12月9日

分数式を部分分数分解する

「以下の分数式を部分分数分解せよ。ただし、分子の次数は0になるようにすること。

(1)$\large\dfrac{3}{(x+2)(x-5)}$

(2)$\large\dfrac{2x^2-3x+7}{(x+1)^3}$

(3)$\large\dfrac{x+4}{x(x-2)^2}$」

このような問題はどのように解けばよいのでしょうか?

 部分分数分解は分母に複数の因数が含まれるとき、それぞれの因数を分母にもつ分数に分解することです。

(1)$\tfrac{3}{(x+2)(x-5)}$

 部分分数分解すると、以下の式のようにおけます。
\[\frac{3}{(x+2)(x-5)}=\frac{A}{x+2}+\frac{B}{x-5}\tag{I}\]
このように分解できるのは因数同士が互いに素である場合です。

両辺に$(x+2)(x-5)$を掛けて分母を払います。
\[3=A(x-5)+B(x+2)\]
これは恒等式になるため、$A,B$の決定には係数比較法と数値代入法の2通りがありますが、本記事では係数比較法を使って解きます。

右辺を展開して、両辺の係数、定数項がわかるように整理して
\begin{align*}3&=Ax-5A+Bx+2B\\[0.5em]0x+3&=(A+B)x+(-5A+2B)\end{align*}
両辺の係数、定数項を比較して
\[\left\{\begin{aligned}A+B&=0&\cdots\text{(i)}\\[1em]-5A+2B&=3&\cdots\text{(ii)}\end{aligned}\right.\]
となるから、
$\text{(i)}$より$B=-A$、これを$\text{(ii)}$に代入して
\begin{align*}-5A-2A&=3\\[0.5em]-7A&=3\\[0.5em]A&=-\frac{3}{7}\end{align*}
したがって、$A=-\dfrac{3}{7},B=\dfrac{3}{7}$
これらを$\text{(I)}$に代入して
\begin{align*}\frac{3}{(x+2)(x-5)}&=\cfrac{-\cfrac{3}{7}}{x+2}+\cfrac{\cfrac{3}{7}}{x-5}\\[0.5em]&=-\frac{3}{7}\left(\frac{1}{x+2}-\frac{1}{x-5}\right)\\[0.5em]&=\frac{3}{7}\left(\frac{1}{x-5}-\frac{1}{x+2}\right)\end{align*}
となります。

(2)$\tfrac{2x^2-3x+7}{(x+1)^3}$

 同じ因数が複数個ある場合は
\[\frac{2x^2-3x+7}{(x+1)^3}=\frac{A}{x+1}+\frac{B}{x+1}+\frac{C}{x+1}\]
とはできません。右辺は
\[\frac{A+B+C}{x+1}\]
となるので、左辺と全く違う分数式になってしまいます。互いに素でない因数の場合は$(1)$のように分解できません。
なので、部分分数分解するには別の方法を考える必要があります。
 この場合の分解を2桁以上の数の桁ごとの分解から考えます。
$123$という数を桁ごとに分解すると
\[123=1\times10^2+2\times10+3\]
と書けます。
ここで、両辺を$10^3$で割ると
\[\frac{123}{10^3}=\frac{1}{10}+\frac{2}{10^2}+\frac{3}{10^3}\]
と書くことができます。
$\dfrac {123}{10^3}$が分母に$10$の累乗をもつ3つの分数に分解できていますね?この分母の$10$の累乗部分を$x+1$の累乗に置き換えて考えればよいのです。
部分分数分解したものは
\[\frac{2x^2-3x+7}{(x+1)^3}=\frac{A}{x+1}+\frac{B}{(x+1)^2}+\frac{C}{(x+1)^3}\tag{II}\]
とおけます。
両辺に$(x+1)^3$を掛けて分母を払うと
\begin{align*}2x^2-3x+7&=A(x+1)^2+B(x+1)+C\\[0.5em]&=(Ax^2+2Ax+A)+(Bx+B)+C\\[0.5em]&=Ax^2+(2A+B)x+(A+B+C)\end{align*}
となります。
両辺の係数を比較して
\[\left\{\begin{aligned}A&=2&\cdots\text{(iii)}\\[1em]2A+B&=-3&\cdots\text{(iv)}\\[1em]A+B+C&=7&\cdots\text{(v)}\end{aligned}\right.\]
となるので、これを解きます。
$\text{(iii)}$を$\text{(iv)}$に代入して
\begin{align*}2\cdot2+B&=-3\\[0.5em]4+B&=-3\\[0.5em]B&=-7\end{align*}
これと$\text{(iii)}$を$\text{(v)}$代入して
\begin{align*}2-7+C&=7\\[0.5em]-5+C&=7\\[0.5em]C&=12\end{align*}
したがって、$A=2,B=-7,C=12$となるから$\text{(II)}$は
\begin{align*}\frac{2x^2-3x+7}{(x+1)^3}&=\frac{2}{x+1}+\frac{-7}{(x+1)^2}+\frac{12}{(x+1)^3}\\[0.5em]&=\frac{2}{x+1}-\frac{7}{(x+1)^2}+\frac{12}{(x+1)^3}\end{align*}
となります。

(3)$\tfrac{x+4}{x(x-2)^2}$

 $(1)$と$(2)$の解き方を組み合わせて部分分数分解を行います。
以下のように分解することができます。
\begin{align*}\frac{x+4}{x(x-2)^2}&=\frac{A}{x}+\frac{Px+Q}{(x-2)^2}\\[0.5em]&=\frac{A}{x}+\frac{B}{x-2}+\frac{C}{(x-2)^2}\tag{III}\end{align*}
となります。
両辺に$x(x-2)^2$を掛けて分母を払うと
\begin{align*}x+4&=A(x-2)^2+Bx(x-2)+Cx\\[0.5em]&=(Ax^2-4Ax+4A)+(Bx^2-2Bx)+Cx\\[0.5em]0x^2+x+4&=(A+B)x^2+(-4A-2B+C)x+4A\end{align*}
両辺の係数を比較して
\[\left\{\begin{aligned}A+B&=0&\cdots\text{(vi)}\\[1em]-4A-2B+C&=1&\cdots\text{(vii)}\\[1em]4A&=4&\cdots\text{(viii)}\end{aligned}\right.\]
となるので、これを解きます。
$\text{(viii)}$より$A=1$、これを$\text{(vi)}$に代入して
\begin{align*}1+B&=0\\[0.5em]B&=-1\end{align*}
$\text{(vii)}$に代入して
\begin{align*}-4\cdot1-2\cdot(-1)+C&=1\\[0.5em]-2+C&=1\\[0.5em]C&=3\end{align*}
したがって、$A=1,B=-1,C=3$となるから$\text{(III)}$は
\begin{align*}\frac{x+4}{x(x-2)^2}&=\frac{1}{x}+\frac{-1}{x-2}+\frac{3}{(x-2)^2}\\[0.5em]&=\frac{1}{x}-\frac{1}{x-2}+\frac{3}{(x-2)^2}\end{align*}
となります。

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