直角三角形の合同条件・相似条件は他の三角形とは少し変わっています。
これは直角三角形には
- 内角の1つが必ず$90°$である。
- 3辺の長さは必ず三平方の定理$a^2+b^2=c^2$を満たす。
合同条件
三角形の合同条件には主に「3組の辺がそれぞれ等しい」、「2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい」、「1組の辺との両端の角がそれぞれ等しい」の3つがあります。
これらは直角三角形にも当てはまります。
これらは直角三角形にも当てはまります。
他の三角形と違うのは斜辺の長さがわかったときです。(どれが斜辺かがわかるということは、すでに内角の1つが直角であることがわかっているということでもあります。)
斜辺と他の1組の辺がそれぞれ等しい
直角三角形の斜辺と他の1組の辺の長さがそれぞれ等しいとわかったとき、3組すべての辺の長さがそれぞれ等しいことやその間の角が等しいことがわからなくても合同であることがわかります。
これは三平方の定理によって残りの1組の辺の長さが1つに定まるからです。
これは三平方の定理によって残りの1組の辺の長さが1つに定まるからです。
例えば上図の直角三角形$ABC$の斜辺$AB$の長さ$c$と他の辺$BC$の長さ$a$がわかっているとき、三平方の定理より
\begin{align*}a^2+b^2&=c^2\\[0.5em]b^2=c^2-a^2\\[0.5em]b&=\pm\sqrt{c^2-a^2}\\[0.5em]b&=\sqrt{c^2-a^2}&(\because
b>0)\end{align*}
のように残りの辺$AC$の長さ$b$が1つに定まります。
このように斜辺と他の1辺の長さだけで1つの直角三角形に絞り込むことができます。
この直角三角形の合同条件を「斜辺と他の1辺がそれぞれ等しい」といいます。
ところで、斜辺以外の2組の辺の長さがわかっている場合も同様に三平方の定理から斜辺の長さが1つに定まります。
しかし、どれが斜辺かわかっているのならば斜辺以外の2辺の間の角が直角であることも明らかなので、斜辺以外の2組の辺の場合は「2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい」で事足ります。
斜辺と1組の鋭角がそれぞれ等しい
直角三角形の斜辺と1組の鋭角がそれぞれ等しいとわかったとき、もう1組の鋭角が等しいことがわからなくても合同であることがわかります。
これは直角三角形の直角と1つの鋭角の大きさがわかれば残るもう1つの鋭角の大きさが定まるからです。
上図の直角三角形$ABC$の直角$∠C$と鋭角$∠A$がわかっているとき、三角形の内角の和は$180°$であるから
\begin{align*}∠A+∠B+∠C&=180°\\[0.5em]∠B&=180°-(∠A+∠C)\\[0.5em]&=180°-(∠A+90°)\\[0.5em]&=90°-∠A\end{align*}
のように残りの$∠B$の大きさが定まります。
すなわち、斜辺と直角と1つの鋭角の大きさがそれぞれ等しいことがわかれば、「1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい」(あるいはもう1つの合同条件「1組の辺と2組の角がそれぞれ等しい」)を満たしていることになり、合同であるといえます。
この直角三角形の合同条件を「斜辺と1組の鋭角がそれぞれ等しい」といいます。
このように直角三角形には一般的な三角形の合同条件の他に、斜辺と他の1辺か鋭角の1つだけで成り立つ合同条件が存在します。
相似条件
相似条件は合同条件の対応する組の辺の長さがそれぞれ等しいという条件が辺の長さの比が等しいに変わります。
したがって、直角三角形の「斜辺と他の1組の辺がそれぞれ等しい」は、「斜辺と他の1組の辺の比が等しい」となり、「斜辺と1組の鋭角がそれぞれ等しい」は、「(斜辺の比が$a:b$で)1組の鋭角が等しい」となります。
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