10は3の倍数ではないので、これまでに求めた角度における三角比を加法定理を利用して求めることはできません。
なので、3倍角を利用して求めてみます。
ド・モアブルの定理
cosnθ+isinnθ=(cosθ+isinθ)n
より
cos3θ+isin3θ=(cosθ+isinθ)3=cos3θ+3icos2θsinθ−3cosθsin2θ−isin3θ=(cos3θ−3cosθsin2θ)+i(3cos2θsinθ−sin3θ)={cos3θ−3cosθ(1−cos2θ)}+i{3(1−sin2θ)sinθ−sin3θ}=(4cos4θ−3cosθ)+i(3sinθ−4sin3θ)
となるので、
{cos3θ=4cos3θ−3cosθsin3θ=3sinθ−4sin3θ
が3倍角の公式となります。
sin10°
正弦の3倍角の公式に
θ=10°を代入すると
sin30°=3sin10°−4sin310°12=3sin10°−4sin310°
となります。
ここで
sin10°=xとおくと
12=3x−4x34x3−3x+12=08x3−6x+1=0(a)
となり、前述よりこの3次方程式の解の1つが
x=sin10°であるため、これを解けば
sin10°がどういった式で表されるのかがわかるはずです。
しかしこの3次方程式は因数分解で解くことができず、3次方程式の解の公式を利用しようにも実数となるはずの解が実数にできない(還元不可能)ため、解の1つは
sin10°であるという状態から進めなくなってしまいます。
そこで、ニュートン法をもちいて近似解を求めてみます。
(a)より
f(x)=8x3−6x+1とすると、これの導関数は
f′(x)=24x2−6となり、これらを
xn+1=xn−f(xn)f′(xn)
にもちいて近似解を求めます。
最初の入力値x0を決定するために(a)のもつ解について考えます。
(a)は3倍角の公式の3倍角の正弦が12となるときの式がもとになっています。であれば、sin10°以外で3倍角の正弦が12となるような正弦もまた解にもつはずです。
そこで、左辺の
3θ=30°を
3θ=30°+360°×nの一般角に置き換えると
θは
n=0のときθ=30°n=1のときθ=30°+360°3=130°n=2のときθ=30°+720°3=250°
となることから、
(a)の解は
0°≦θ<360°の範囲において
x=sin10°,sin130°,sin250°の3つとなることがわかります。
それぞれの解の特徴として
sin10°は
sin0°=0に近く、
sin130°は
sin90°=1に近く、
sin250°は
sin270°=−1に近い値を持つことから値
x0を
x0=0に設定すれば
sin10°の近似値に収束することがわかります。
上記をもとにGoogleスプレッドシートで近似解を求めた結果は上のようになります。
収束した値は反復4回目以降の
xn+1=0.1736481777でこれが(a)の近似解であり、
sin10°の近似値です。
cos10°
同様にcos10°についても調べてみます。
省略しますが3次方程式は
8x2−6x−√3=0なので
f(x)=8x3−6x−√3,f′(x)=24x2−6
となります。
cos10°は
1に近い値を持つので入力する
xの値は
x0=1です。
すると結果は上のようになります。
近似解は
x=0.984807753でこれが
cos10°の近似値となります。
また、
cos10°=√1−sin210°
で求めても同様の値を得ることができます。
tan10°
tanθの3倍角の公式は
tan3θ=tan3θ−3tanθ3tan2θ−1
なので、
θ=10°を代入し、
tan10°=xとおくと
1√3=x3−3x3x2−1
となります。
したがって、使用する関数は
f(x)=x3−3x3x2−1−1√3,f′(x)=3x4+6x2+39x4−6x2+1
で、
tan10°は
0に近い値を持つので入力する
xの値は
x0=0です。
すると結果は上のようになります。
近似解
x=0.1763269807が
tan10°の近似値となります。
また、先ほど求めた
sin10°,cos10°の近似値をもちいて
tan10°=sin10°cos10°
を計算することでも同様の値を得ることができます。