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2022年5月17日

f(x)とg(x)を含む恒等式 f(x)とg(x)を求める

「2次関数$f(x)$と1次関数$g(x)$について
\[\large f(x)g(x)=f(x)+2g(x)+x^3+5x^2+5x-4\]
が常に成り立つとき、$f(x),g(x)$を求めよ。
ただし、$f(x),g(x)$の係数・定数項はすべて整数である。」

 このような問題はどのように求めればよいでしょうか?


 2通りの解き方で解いてみます。

1. 係数比較法の利用

 これは恒等式なので、
\begin{align*}f(x)=ax^2+bx+c,\ &g(x)=dx+e\\ &(a\neq0,d\neq0,\ a,b,c,d,e:整数)\end{align*}
とおき、展開して両辺の係数を比較して解きます。
\begin{align*}(左辺)&=f(x)g(x)\\[0.5em]&=(ax^2+bx+c)(dx+e)\\[0.5em]&=adx^3+(ae+bd)x^2+(be+cd)x+ce\\[1.5em](右辺)&=f(x)+2g(x)+x^3+5x^2+5x-4\\[0.5em]&=(ax^2+bx+c)+2(dx+e)+x^3+5x^2+5x-4\\[0.5em]&=x^3+(a+5)x^2+(b+2d+5)x+c+2e-4\end{align*}
両辺の係数を比較して
\[\left\{\begin{aligned}ad&=1&\cdots\text{(i)}\\[0.5em]ae+bd&=a+5&\cdots\text{(ii)}\\[0.5em]be+cd&=b+2d+5&\cdots\text{(iii)}\\[0.5em]ce&=c+2e-4&\cdots\text{(iv)}\end{aligned}\right.\]
$\text{(i)}$より
\[a=\frac{1}{d}\]
$a,d$は整数であるから上の式を満たすのは$a=d=\pm1$です。

$a=d=1$のとき

 $\text{(ii)}$より
\begin{align*}e+b&=6\\[0.5em]e&=6-b\tag{v}\end{align*}
$\text{(iii)}$より$\text{(v)}$を代入して
\begin{align*}be+c&=b+7\\[0.5em]b(6-b)+c&=b+7\\[0.5em]c&=b^2-5b+7\tag{vi}\end{align*}
$\text{(iv)}$より$\text{(v),(vi)}$を代入して
\begin{align*}(b^2-5b+7)(6-b)&=(b^2-5b+7)+2(6-b)-4\\[0.5em]-b^3+11b^2-37b+42&=b^2-7b+15\\[0.5em]b^3-10b^2+30b-27&=0\end{align*}
因数分解すると
\[(b-3)(b^2-7b+9)=0\]
$b^2-7b+9=0$のとき$b$の値は
\[b=\frac{7\pm\sqrt{13}}{2}\]
となり、$b$は整数であるという条件に適さないので適当な解は$b=3$です。
したがって、$\text{(v)}$より$e=3$、$\text{(vi)}$より$c=1$なので、
\begin{gather*}a=1,b=3,c=1,\\[0.5em]d=1,e=3\end{gather*}
となるから、求める$f(x),g(x)$は
\[f(x)=x^2+3x+1,\ g(x)=x+3\]
であることがわかります。

$a=d=-1$のとき

 $\text{(ii)}$より
\begin{align*}-e-b&=4\\[0.5em]e&=-b-4\tag*{(v)'}\end{align*}
$\text{(iii)}$より$\text{(v)'}$を代入して
\begin{align*}be-c&=b+3\\[0.5em]b(-b-4)-c&=b+3\\[0.5em]c&=-b^2-5b-3\tag*{(vi)'}\end{align*}
$\text{(iv)}$より$\text{(v)',(vi)'}$を代入して
\begin{align*}(-b^2-5b-3)(-b-4)&=(-b^2-5b-3)+2(-b-4)-4\\[0.5em]b^3+10b^2+30b+27&=0\end{align*}
因数分解すると
\[(b+3)(b^2+7b+9)=0\]
$b^2+7b+9=0$のとき$b$の値は
\[b=\frac{-7\pm\sqrt{13}}{2}\]
となり、$b$は整数であるという条件に適さないので適当な解は$b=-3$です。
したがって、$\text{(v)'}$より$e=-1$、$\text{(vi)'}$より$c=1$なので
\begin{gather*}a=-1,b=-3,c=3,\\[0.5em]d=-1,e=-1\end{gather*}
となるから、求める$f(x),g(x)$は
\[f(x)=-x^2-3x+3,\ g(x)=-x-1\]
であることがわかります。
 以上より求める$f(x),g(x)$の組は
\[\begin{cases}f(x)=x^2+3x+1\\[0.5em]g(x)=x+3\end{cases},\begin{cases}f(x)=-x^2-3x+3\\[0.5em]g(x)=-x-1\end{cases}\]
となります。

2. 因数分解の利用

 $f(x),g(x)$を含む項をすべて左辺に移項すると
\begin{align*}f(x)g(x)-f(x)-2g(x)&=x^3+5x^2+5x-4\\[0.5em]f(x)\bigl\{g(x)-1\bigr\}-2g(x)&=x^3+5x^2+5x-4\end{align*}
左辺で$g(x)-1$を共通因数とする項をつくるには$2$を加えれば良いので両辺に$2$を足して
\begin{align*}f(x)\bigl\{g(x)-1\bigr\}-2g(x)+2&=x^3+5x^2+5x-2\\[0.5em]f(x)\bigl\{g(x)-1\bigr\}-2\bigl\{g(x)-1\bigr\}&=x^3+5x^2+5x-2\\[0.5em]\bigl\{f(x)-2\bigr\}\bigl\{g(x)-1\bigr\}&=x^3+5x^2+5x-2\end{align*}
右辺を因数分解すると
\[\bigl\{f(x)-2\bigr\}\bigl\{g(x)-1\bigr\}=(x+2)(x^2+3x-1)\]
ここで、右辺に$0$でない実数$k$とその逆数が掛けられていると考えると
\begin{align*}\bigl\{f(x)-2\bigr\}\bigl\{g(x)-1\bigr\}&=k\cdot\frac{1}{k}\cdot(x+2)(x^2+3x-1)\\[0.5em]&=k(x+2)\cdot\frac{1}{k}(x^2+3x-1)\end{align*}
となり、$f(x)$が2次関数、$g(x)$が1次関数であるから
\[f(x)=\frac{1}{k}(x^2+3x-1)\ ,g(x)=k(x+2)\]
となります。

しかし、$f(x),g(x)$の係数と定数項がすべて整数であるということは$f(x)-2,g(x)-1$の係数、定数項もすべて整数で、$x+2$の係数と定数項、$x^2+3x-1$の係数と定数項が互いに素であるから適当な実数$k$は$k=\pm1$です。

したがって、

$k=1$のとき

\begin{align*}f(x)-2&=x^2+3x-1\\[0.5em]f(x)&=x^2+3x+1\\[1em]g(x)-1&=x+2\\[0.5em]g(x)&=x+3\end{align*}

$k=-1$のとき

\begin{align*}f(x)-2&=-(x^2+3x-1)\\[0.5em]f(x)&=-x^2-3x+3\\[1em]g(x)-1&=-(x+2)\\[0.5em]g(x)&=-x-1\end{align*}
 以上より求める$f(x),g(x)$の組は
\[\begin{cases}f(x)=x^2+3x+1\\[0.5em]g(x)=x+3\end{cases},\begin{cases}f(x)=-x^2-3x+3\\[0.5em]g(x)=-x-1\end{cases}\]
となります。

 2.の解き方で注意する点があります。
\[\bigl\{f(x)-2\bigr\}\bigl\{g(x)-1\bigr\}=x^2(x+2)\]
の様になった場合、実数$k=1$のとき$f(x)-2=x^2,g(x)-1=x+2$を解とするのは正しいのですが、左辺の因数について考えると
\[x^2(x+2)=x\cdot x\cdot(x+2)\]
なので因数の組み合わせ方を変えれば$f(x)-2=x(x+2),g(x)-1=x$も解となります。
このように因数の組み合わせ方で他に候補がないかしっかりチェックする必要があります。

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