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2022年7月29日

元利均等返済方式の返済額の計算式

 元利均等返済方式とは、常に一定額を返済していく方式のことです。
月利$r$で$D$円を借り、月に1回返済して$n$ヶ月で完済する場合、月々の返済額$R$の計算方法は
\[\large R=\frac{Dr(1+r)^n}{(1+r)^n-1}\]
となります。

なぜ、このような式になるのでしょうか?


月々の返済額$R$を求める

 まずは、借り入れてから$k$ヶ月後の借入残高$B_k$を考えます。これは、利息計算と返済後の残高となります。
$0$ヶ月後、すなわち借入直後の借入残高$B_0$は借入元金$D$に等しいので
\begin{equation}B_0=D\end{equation}
となります。
$1$ヶ月後、$B_0$に利息が発生すると$B_0$と利息の合計は$(1+r)B_0$となるので、1回目の返済後の借入残高$B_1$は
\[B_1=(1+r)B_0-R\]
となります。
同様に、$2$ヶ月後の借入残高$B_2$は
\[B_2=(1+r)B_1-R\]
となります。
このことから、借り入れてから$k$ヶ月後の借入残高$B_k$は
\begin{equation}B_k=(1+r)B_{k-1}-R\end{equation}
という式で表せることがわかります。
 この漸化式から時系列で借入残高を並べた数列$\{B_k\}$の一般項を求めます。
$(2)$は$\{B_k\}$の漸化式であり、これを$B_k+α=(1+r)(B_{k-1}+α)$という等比数列型に変形します。
上記の式を変形すると
\begin{align*}B_k+\alpha&=(1+r)B_{k-1}+(1+r)\alpha\\[0.5em]B_k&=(1+r)B_{k-1}+(1+r)\alpha-\alpha\\[0.5em]&=(1+r)B_{k-1}+r\alpha\end{align*}
となるので、$(2)$と比較すると
\[r\alpha=-R\]
であり、$α$について解くと
\[\alpha=-\frac{R}{r}\]
となります。
したがって、$(2)$を等比数列型に変形すると
\[B_k-\frac{R}{r}=(1+r)\left(B_{k-1}-\frac{R}{r}\right)\]
となります。
ここで、$(1)$の両辺に$-\dfrac{R}{r}$を加えると
\[B_0-\frac{R}{r}=D-\frac{R}{r}\]
となるので、数列$\left\{B_k-\dfrac{R}{r}\right\}$は初項(第$0$項)が$D-\dfrac{R}{r}$、公比が$1+r$である等比数列であることがわかります。
このことから、数列$\left\{B_k-\dfrac{R}{r}\right\}$の一般項は
\[B_k-\frac{R}{r}=\left(D-\frac{R}{r}\right)(1+r)^k\]
となるので、数列$\{B_k\}$の一般項は
\begin{equation}B_k=\left(D-\frac{R}{r}\right)(1+r)^k+\frac{R}{r}\end{equation}
であることがわかります。
 数列$\{B_k\}$の一般項がわかれば、月々の返済額$R$が求められます。
借り入れてから$n$ヶ月後に完済するので、$B_n=0$となります。
このことから、$k=n$のとき$(3)$は
\[0=\left(D-\frac{R}{r}\right)(1+r)^n+\frac{R}{r}\]
となります。
この式を$R$について解くと
\begin{align*}\left(D-\frac{R}{r}\right)(1+r)^n+\frac{R}{r}&=0\\[0.5em]D(1+r)^n-\frac{R}{r}(1+r)^n+\frac{R}{r}&=0\\[0.5em]D(1+r)^n-\frac{R}{r}\bigl\{(1+r)^n-1\bigr\}&=0\\[0.5em]\frac{R}{r}\bigl\{(1+r)^n-1\bigr\}&=D(1+r)^n\\[0.5em]R\bigl\{(1+r)^n-1\bigr\}&=Dr(1+r)^n\\[0.5em]R&=\frac{Dr(1+r)^n}{(1+r)^n-1}\tag4\end{align*}
となり、月々の返済額を求めることができました。

月々の返済額$R$の内訳

 返済金は、まず発生した利息を支払うために充てられ、残額を元金返済に充てます。
元金の一部を返済することで元金が減れば、次回発生する利息も減ります。

元利均等返済方式の返済額は一定ですが、この利息の変動によって返済ごとに利息部分と元金部分は一定ではありません。
そこで、$k$ヶ月後の返済額$R$における利息部分$i_k$と元金部分$d_k$それぞれを表す式を求めてみます。

$(2)$を変形すると
\[B_k=B_{k-1}+r B_{k-1}-R\]
となります。
右辺の$r B_{k-1}$は$k$ヶ月後に発生する利息です。
したがって、$k$ヶ月後における返済額$R$の利息部分$i_k$は
\[i_k=r B_{k-1}\]
元金部分$d_k$は、$R$から利息部分$i_k$を差し引いた
\[d_k=R-i_k=R-r B_{k-1}\]
となります。これらはそれぞれ時系列で返済額の利息部分、元金部分を並べた数列$\{i_k\},\{d_k\}$(ただし、$k≧1$)の一般項となります。
それぞれの式を月利$r$、借入元金$D$、完済までの返済期間$n$をもちいた式に直してみます。
利息部分$i_k$は$(3),(4)$より
\begin{align*}i_k&=r B_{k-1}\\[0.5em]&=r\left\{\left(D-\frac{R}{r}\right)(1+r)^{k-1}+\frac{R}{r}\right\}\\[0.5em]&=(Dr-R)(1+r)^{k-1} +R\tag{*}\\[0.5em]&=Dr(1+r)^{k-1}-R(1+r)^{k-1} +R\\[0.5em]&=Dr(1+r)^{k-1} -R\bigl\{(1+r)^{k-1}-1\bigr\}\\[0.5em]&=Dr(1+r)^{k-1} -\frac{Dr(1+r)^n}{(1+r)^n-1}\cdot\bigl\{(1+r)^{k-1}-1\bigr\}\\[0.5em]&=Dr\left[(1+r)^{k-1}-\frac{(1+r)^n\bigl\{(1+r)^{k-1}-1\bigr\}}{(1+r)^n-1}\right]\\[0.5em]&=Dr\left\{(1+r)^{k-1}-\frac{(1+r)^{n+k-1}-(1+r)^n}{(1+r)^n-1}\right\}\\[0.5em]&=Dr\left\{(1+r)^{k-1}\cdot\frac{(1+r)^n-1}{(1+r)^n-1}-\frac{(1+r)^{n+k-1}-(1+r)^n}{(1+r)^n-1}\right\}\\[0.5em]&=Dr\left\{\frac{(1+r)^{n+k-1}-(1+r)^{k-1}}{(1+r)^n-1}-\frac{(1+r)^{n+k-1}-(1+r)^n}{(1+r)^n-1}\right\}\\[0.5em]&=Dr\cdot\frac{(1+r)^n-(1+r)^{k-1}}{(1+r)^n-1}\\[0.5em]\therefore i_k&=\frac{Dr\bigl\{(1+r)^n-(1+r)^{k-1}\bigr\}}{(1+r)^n-1}\end{align*}
元金部分$d_k$も同様に$(3),(4)$より
\begin{align*}d_k&=R-r B_{k-1}\\[0.5em]&=R-\frac{Dr\bigl\{(1+r)^n-(1+r)^{k-1}\bigr\}}{(1+r)^n-1}\\[0.5em]&=\frac{Dr(1+r)^n}{(1+r)^n-1}-\frac{Dr\bigl\{(1+r)^n-(1+r)^{k-1}\bigr\}}{(1+r)^n-1}\\[0.5em]&=\frac{Dr(1+r)^n-Dr\bigl\{(1+r)^n-(1+r)^{k-1}\bigr\}}{(1+r)^n-1}\\[0.5em]&=\frac{Dr(1+r)^n-Dr(1+r)^n +Dr(1+r)^{k-1}}{(1+r)^n-1}\\[0.5em]\therefore d_k&=\frac{Dr(1+r)^{k-1}}{(1+r)^n-1}\end{align*}
となります。

返済総額とその内訳

 今度は、返済総額とその中の元金部分と利息部分それぞれの支払総額を求めてみます。
返済は$1$ヶ月後から$n$ヶ月後までの$n$回行うので、返済総額は$nR$となります。
$(4)$を代入すれば
\[n R=n\cdot\frac{Dr(1+r)^n}{(1+r)^n-1}=\frac{n Dr(1+r)^n}{(1+r)^n-1}\]
と書けます。
また、$n R$は$\sum$を使った計算式で表せば
\[n R=\sum_{k=1}^n{R}\]
です。
ここで、$k$ヶ月後の返済額$R$は利息部分$i_k$と元金部分$d_k$の和であったことから
\begin{align*}\sum_{k=1}^n{R}&=\sum_{k=1}^n{\bigl(i_k +d_k\bigr)}\\[0.5em]&=\sum_{k=1}^n{i_k}+\sum_{k=1}^n{d_k}\end{align*}
と書けます。
これを利用して利息部分の支払総額をそれぞれ求めます。
まず、元金部分の支払総額$\sum_{k=1}^n{d_k}$を求めます。
\begin{align*}\sum_{k=1}^n{d_k}&=\sum_{k=1}^n{\frac{Dr(1+r)^{k-1}}{(1+r)^n-1}}\\[0.5em]&=\sum_{k=1}^n{\frac{Dr}{(1+r)^n-1}(1+r)^{k-1}}\end{align*}
これは初項$\dfrac{Dr}{(1+r)^n-1}$、公比$1+r$の等比数列の第$n$部分和であり、$1+r\neq1$なので
\begin{align*}\sum_{k=1}^n{d_k}&=\frac{Dr}{(1+r)^n-1}\cdot\frac{(1+r)^n-1}{(1+r)-1}\\[0.5em]&=\frac{Dr}{(1+r)^n-1}\cdot\frac{(1+r)^n-1}{r}\\[0.5em]&=D\end{align*}
となり、元金部分の支払総額は過不足なくちょうど元金$D$を払いきっていることがわかります。
利息部分の支払総額$\sum_{k=1}^n{i_k}$は、
\begin{align*}\sum_{k=1}^n{i_k}&=\sum_{k=1}^n{\frac{Dr\bigl\{(1+r)^n-(1+r)^{k-1}\bigr\}}{(1+r)^n-1}}\\[0.5em]&=\sum_{k=1}^n\left\{\frac{Dr(1+r)^n}{(1+r)^n-1}-\frac{Dr(1+r)^{k-1}}{(1+r)^n-1}\right\}\\[0.5em]&=\sum_{k=1}^n{\frac{Dr(1+r)^n}{(1+r)^n-1}}-\textcolor{red}{\sum_{k=1}^n{\frac{Dr(1+r)^{k-1}}{(1+r)^n-1}}}\end{align*}
となり、赤く示した部分は元金部分の支払総額$\sum_{k=1}^n{d_k}$であるので
\begin{align*}\sum_{k=1}^n{i_k}&=\sum_{k=1}^n{\frac{Dr(1+r)^n}{(1+r)^n-1}}-D\\[0.5em]&=\frac{n Dr(1+r)^n}{(1+r)^n-1}-D\\[0.5em]&=\frac{n Dr(1+r)^n}{(1+r)^n-1}-D\cdot\frac{(1+r)^n-1}{(1+r)^n-1}\\[0.5em]&=\frac{D\cdot nr(1+r)^n}{(1+r)^n-1}-\frac{D\bigl\{(1+r)^n-1\bigr\}}{(1+r)^n-1}\\[0.5em]\therefore\sum_{k=1}^n{r B_{k-1}}&=\frac{D\bigl\{(nr-1)(1+r)^n+1\bigr\}}{(1+r)^n-1}\end{align*}
となります。
(2025/05)内容を修正しました。
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