横画面推奨!
モバイル機器の場合、数式が見切れる場合があります。

2022年7月31日

元金均等返済方式の返済額の計算式

 元金均等返済方式とは、返済額のうち元金部分を常に一定額にして返済する方式のことです。利息部分は返済前の残高により変動します。
月利$r$で$D$円を借り、月に1回返済して$n$ヶ月で完済する場合、借り入れてから$k$ヶ月後の返済額$R_k$は
\[\large R_k=\frac{D\bigl\{1+r(n-k+1)\bigr\}}{n}\]
となります。

なぜこの式で求めることができるのでしょうか?


返済額$R_k$と借入残高$B_k$を求める

 まずは、借り入れてから$k$ヶ月後の返済額を$R_k$として借入残高$B_k$を考えます。借入残高は、利息計算と返済後の残高となります。
$0$ヶ月後、すなわち借入直後の借入残高$B_0$は借入元金$D$に等しいので
\begin{equation}B_0=D\end{equation}
となります。
$1$ヶ月後、$B_0$に利息が発生すると$B_0と利息の合計$は$(1+r)B_0$となるので、1回目の返済額$R_1$を差し引いて借入残高$B_1$は
\[B_1=(1+r)B_0-R_1\]
となります。
ここで、1回目の返済額$R_1$は借入元金$D$を返済回数の$n$で割った元金部分$\dfrac{D}{n}$と発生した利息$r B_0$の合計、すなわち
\[R_1=\frac{D}{n}+r B_0\]
となります。
したがって、借入残高$B_1$は
\begin{align*}B_1&=(1+r)B_0-\left(\frac{D}{n}+r B_0\right)\\[0.5em]&=B_0-\frac{D}{n}\end{align*}
と書けます。
同様に、$2$ヶ月後の返済額$R_2$は
\[R_2=\frac{D}{n}+r B_1\]
借入残高$B_2$は
\begin{align*}B_2&=(1+r)B_1-R_2\\[0.5em]&=(1+r)B_1-\left(\frac{D}{n}+r B_1\right)\\[0.5em]&=B_1-\frac{D}{n}\end{align*}
となります。
このことから、借り入れてから$k$ヶ月後の返済額$R_k$は
\begin{equation}R_k=\frac{D}{n}+r B_{k-1}\quad(ただし、k\geqq1)\end{equation}
借入残高$B_k$は
\begin{equation}B_k=B_{k-1}-\frac{D}{n}\end{equation}
という式で表せることがわかります。
 借入残高$B_k$の式から借入残高の数列$\{B_k\}$の一般項を求め、それから返済額の数列$\{R_k\}$の一般項を求めます。
まずは、借入残高の数列$\{B_k\}$の一般項を求めます。

$(3)$は等差数列型の漸化式であり、公差は$-\dfrac{D}{n}$です。
また、$(1)$より$\{B_k\}$の初項は$D$であることがわかります。

したがって、$\{B_k\}$の一般項は
\begin{align*}B_k&=D-\frac{Dk}{n}\\[0.5em]\therefore B_k&=\frac{D(n-k)}{n}\tag4\end{align*}
となります。
すると、$(2)$は$\{R_k\}$の一般項ですが、$B_{k-1}$が含まれるので$(4)$より
\begin{align*}R_k&=\frac{D}{n}+r\cdot\frac{D\bigl\{n-(k-1)\bigr\}}{n}\\[0.5em]&=\frac{D}{n}+r\cdot\frac{D(n-k+1)}{n}\\[0.5em]&=\frac{D}{n}+\frac{Dr(n-k+1)}{n}\\[0.5em]\therefore R_k&=\frac{D\bigl\{1+r(n-k+1)\bigr\}}{n}\tag5\end{align*}
とすると、$B_{k-1}$を含まない形で表すことができます。

返済額$R_k$の内訳

 返済金は、まず発生した利息を支払うために充てられ、残額を元金返済に充てます。
元金の一部を返済することで元金が減れば、次回発生する利息も減ります。
元金均等返済方式の返済額は元金部分は常に一定ですが、この利息の変動によって利息部分は返済ごとに異なっています。

そこで、借り入れてから$k$ヶ月後の返済額$R_k$における元金部分$d_k$と利息部分$i_k$それぞれを表す式を求めてみます。

 返済額$R_k$は$(2)$より
\[R_k=\frac{D}{n}+r B_{k-1}\]
と表せます。
上述の通り、$\dfrac{D}{n}$は返済額の元金部分であり、$r B_{k-1}$は利息部分です。
したがって、返済額$R_k$の元金部分$d_k$は
\[d_k=\frac{D}{n}\]
利息部分$i_k$は$(4)$より
\begin{align*}i_k&=r B_{k-1}\\[0.5em]&=r\cdot\frac{D\bigl\{n-(k-1)\bigr\}}{n}\\[0.5em]&=r\cdot\frac{D(n-k+1)}{n}\\[0.5em]\therefore i_k&=\frac{Dr(n-k+1)}{n}\end{align*}
となります。これらはそれぞれ時系列で返済額の利息部分、元金部分を並べた数列$\{i_k\},\{d_k\}$(ただし、$k≧1$)の一般項となります。

返済総額とその内訳

 今度は、返済総額とその中の元金部分と利息部分それぞれの支払総額を求めてみます。
返済は借り入れてから$1$ヶ月後から$n$ヶ月後までの$n$回行うので、返済総額は$\sum$をもちいて$\sum_{k=1}^n{R_k}$と書け、$(5)$より
\begin{align*}\sum_{k=1}^n{R_k}&=\sum_{k=1}^n{\frac{D\bigl\{1+r(n-k+1)\bigr\}}{n}}\\[0.5em]&=\sum_{k=1}^n\left\{\frac{D}{n}+\frac{Dr(n-k+1)}{n}\right\}\\[0.5em]&=\sum_{k=1}^n{\frac{D}{n}}+\sum_{k=1}^n{\frac{Dr(n-k+1)}{n}}\end{align*}
となります。
すると、元金部分の支払総額$\sum_{k=1}^n{\dfrac{D}{n}}$と利息部分の支払総額$\sum_{k=1}^n{\dfrac{Dr(n-k+1)}{n}}$の和に変形できるので、まずはこれらを求めてみます。
元金部分の返済総額$\sum_{k=1}^n{\dfrac{D}{n}}$は
\begin{align*}\sum_{k=1}^n{\frac{D}{n}}&=n\cdot\frac{D}{n}\\[0.5em]&=D\end{align*}
となり、過不足なくちょうど元金$D$を払いきっていることがわかります。
利息部分の支払総額$\sum_{k=1}^n{\dfrac{Dr(n-k+1)}{n}}$は
\begin{align*}\sum_{k=1}^n{\frac{Dr(n-k+1)}{n}}&=\sum_{k=1}^n{\frac{Dr\bigl\{(n+1)-k\bigr\}}{n}}\\[0.5em]&=\sum_{k=1}^n{\frac{Dr(n+1)-Dr k}{n}}\\[0.5em]&=\sum_{k=1}^n\left\{\frac{Dr(n+1)}{n}-\frac{Dr}{n}k\right\}\\[0.5em]&=\sum_{k=1}^n{\frac{Dr(n+1)}{n}}-\sum_{k=1}^n{\frac{Dr}{n}k}\\[0.5em]&=n\cdot\frac{Dr(n+1)}{n}-\sum_{k=1}^n{\frac{Dr}{n}k}\\[0.5em]&=Dr(n+1)-\sum_{k=1}^n{\frac{Dr}{n}k}\\[0.5em]&=Dr(n+1)-\frac{Dr}{n}\sum_{k=1}^n{k}\\[0.5em]&=Dr(n+1)-\frac{Dr}{n}\cdot\frac{n(n+1)}{2}\\[0.5em]&=Dr(n+1)-\frac{Dr(n+1)}{2}\\[0.5em]&=\frac{Dr(n+1)}{2}\end{align*}
となります。
したがって、返済総額は
\begin{align*}\sum_{k=1}^n{R_k}&=D+\frac{Dr(n+1)}{2}\\[0.5em]&=\frac{2D+Dr(n+1)}{2}\\[0.5em]&=\frac{D\bigl\{2+r(n+1)\bigr\}}{2}\end{align*}
となります。
(2025/05)内容を修正しました。
Share:
◎Amazonのアソシエイトとして、当サイト「数学について考えてみる」は適格販売により収入を得ています。
Powered by Blogger.

Blog Archive

PR

ブログランキング・にほんブログ村へ