ナポレオンの定理が正しいことをベクトルを使って確かめてみます。
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図1 ナポレオンの定理
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ナポレオンの定理とは、三角形の各辺を1辺とする正三角形を描くと各正三角形の重心を線で結ぶと正三角形ができるという定理です。
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図2 △ABCとベクトル
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点Oから△ABCの各頂点を終点とするベクトルを
⃗A=(x1,y1),⃗B=(x2,y2),⃗C=(x3,y3)とします。ただしA、B、Cの3点が一直線上にないことが条件です。すなわち
⃗A≠k⃗Bかつ⃗B≠l⃗Cかつ⃗C≠m⃗A→AB≠k→BCまたは→BC≠k→CAまたは→CA≠k→AB
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図3 →OG1を構成するベクトル
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△ABCと正三角形ABDと正三角形ABDの重心
G1に着目し、
→OG1について考えます。
→ABは
→AB=⃗B−⃗A=(x2−x1,y2−y1)
ABの中点をHとして
→AHは
→AH=12→AB=⃗B−⃗A2=(x2−x12,y2−y12)
→HG1は→AHに垂直です。また、DHはAHの√3倍で点G1はDHを2:1に内分します。
ここで、
⃗Xに垂直で大きさが等しいベクトルを
⃗XVと表記することにして
→HG1=√33→AHV=√33(⃗B−⃗A2)V
このベクトル成分は、図3より
→AHの向きと比較して
→HG1は時計回りの回転をしているから
⃗X=(x,y)⇒⃗XV=(−y,x)
とすれば良いので
→HG1=√33(y1−y22,x2−x12)=(√3(y1−y2)6,√3(x2−x1)6)
したがって
→OG1は
→OG1=⃗A+→AH+→HG1=(3(x1+x2)+√3(y1−y2)6,3(y1+y2)+√3(x2−x1)6)
また、
√36xn=sn,√36yn=tnとおけば
→OG1=(√3(s1+s2)+t1−t2,√3(t1+t2)+s2−s1)
と表すことができます。
→OG2の成分の場合は
s1,s2,t1,t2をそれぞれ
s2,s3,t2,t3へ、
→OG3の成分の場合はそれぞれ
s3,s1,t3,t1へ置き換えれば良いので
→OG2=(√3(s2+s3)+t2−t3,√3(t2+t2)+s3−s2)→OG3=(√3(s3+s1)+t3−t1,√3(t3+t1)+s1−s3)
となります。
以上から
→G1G2,→G1G3は
→G1G2=(√3(s3−s1)−t1+2t2−t3,√3(t3−t1)+s1−2s2+s3)→G1G3=(√3(s3−s2)−2t1+t2+t3,√3(t3−t2)+2s1−s2−s3)
と表わせます。
→G1G2,→G1G3を使ってナポレオンの定理が正しいことを確かめるには、ベクトルの内積
⃗X=(x,y),⃗Y=(p,q)⃗X⋅⃗Y=px+qy=|⃗X||⃗Y|cosθ
より
cosθ=px+qy|⃗X||⃗Y|。
この式からθ=60°であることと|⃗X|=|⃗Y|であることが示せれば良いので、内積と各ベクトルの大きさを調べてみます。
(これは△G1G2G3が頂角60°の二等辺三角形であることを示すことで正三角形であることが示されることに相当します。)
→G1G2⋅→G1G3={√3(s3−s1)−t1+2t2−t3}{√3(s3−s2)−2t1+t2+t3}+{√3(t3−t1)+s1−2s2+s3}{√3(t3−t2)+2s1−s2−s3}=2{s12+s22+s32−s1s2−s2s3−s3s1−√3(s1t2−s1t3−s2t1+s2t3+s3t1−s3t2)+t12+t22+t32−t1t2−t2t3−t3t1}|→G1G2|=[{√3(s3−s1)−t1+2t2−t3}2+{√3(t3−t1)+s1−2s2+s3}2]12=2{s12+s22+s32−s1s2−s2s3−s3s1−√3(s1t2−s1t3−s2t1+s2t3+s3t1−s3t2)+t12+t22+t32−t1t2−t2t3−t3t1}12|→G1G3|=[{√3(s3−s2)−2t1+t2+t3}2+{√3(t3−t2)+2s1−s2−s3}2]12=2{s12+s22+s32−s1s2−s2s3−s3s1−√3(s1t2−s1t3−s2t1+s2t3+s3t1−s3t2)+t12+t22+t32−t1t2−t2t3−t3t1}12
ここで
u=s12+s22+s32−s1s2−s2s3−s3s1−√3(s1t2−s1t3−s2t1+s2t3+s3t1−s3t2)+t12+t22+t32−t1t2−t2t3−t3t1
とおけば
|→G1G2|=|→G1G3|=2√ucosθ=2u2√u⋅2√u=12θ=60°
となるので、ナポレオンの定理が正しいことを確かめることができました。
外部リンク:ナポレオンの定理 - Wikipedia