日本語版がないWikipediaの"Crossed ladders problem"にある高さの関係について調べてみました。
図1 交差したはしごの高さ |
直角三角形ABCとBCを共有する直角三角形DBCがあります。ACとDBの交点EからBCに垂線をおろし、BCとの交点をFとします。
このときAB、DC、EFの長さをそれぞれ$a,b,h$とすると以下のような関係があります。
\[\frac{1}{h}=\frac{1}{a}+\frac{1}{b}\]
なぜこのような関係が成り立つのでしょうか?
図1のBC、FC、BFの長さを$l,l_1,l_2$とし、△ABCと△EFCについて考えます。
\begin{equation}l:a=l_1:h\end{equation}
次に△DBCと△EBFについて考えます。
\begin{equation}l:b=l_2:h\end{equation}
(1)、(2)を比の値にすると
\begin{align}\begin{aligned}(1)\\
\frac{l}{a}&=\frac{l_1}{h}\end{aligned}\\ \begin{aligned}(2)\\
\frac{l}{b}&=\frac{l_2}{h}\end{aligned}\end{align}
(3)と(4)を足して
\begin{align*}\frac{l}{a}+\frac{l}{b}&=\frac{l_1}{h}+\frac{l_2}{h}\\ \\
&=\frac{l_1+l_2}{h}\end{align*}
ここで、$l=l_1+l_2$なので
\[\frac{l}{a}+\frac{l}{b}=\frac{l}{h}\]
両辺を$l$で割って左右を入れ替えれば
\begin{equation}\large{\frac{1}{h}=\frac{1}{a}+\frac{1}{b}}\end{equation}
を導くことができました。
BCを共通する底辺としたとき、$a$を高さとする三角形は△ABC、$b$を高さとする三角形は△DBC、$h$を高さとする三角形は△EBCであることを踏まえ、(5)の両辺を$\dfrac{1}{2}l$で割ると
\begin{equation}\frac{1}{△EBC}=\frac{1}{△ABC}+\frac{1}{△DBC}\end{equation}
が成り立ちます。
図4 高さが不明な場合 |
また、図4のようにAB、DC、EFがBCに垂直でないものの平行である場合でも(5)は成り立ちます。△ABC、△DBC、△EBCの高さは$a,b,h$に比例するため(6)も成り立ちます。
Wikipediaの同ページに"Extended crossed ladders
theorem(拡張した交差したはしごの定理)"という項目があります。
\[\frac{1}{△ABC}+\frac{1}{△FBC}=\frac{1}{△DBC}+\frac{1}{△EBC}\]
これを(5)の証明と同様な流れで示すことができます。
図6 各垂線と底辺の長さ |
点D、F、E、AからBCへ垂線をおろし、BCとの交点をそれぞれP、Q、R、Sとします。
各垂線の長さは$DP=a,ER=b,FQ=h,AS=H$とし、$BC=l$として各線分の長さを$QC=l_1,PC=l_2,BQ=l_3,BR=l_4,BP=l_5,BS=l_6,RC=l_7,SC=l_8$とします。
ごちゃごちゃしているので図6にまとめました。
△DPCと△FQCについて考えます。
\begin{equation}l_1:h=l_2:a\end{equation}
次は△EBRと△FBQについて考えます。
\begin{equation}l_3:h=l_4:b\end{equation}
△ABSと△DBPについて考えます。
\begin{equation}l_6:H=l_5:a\end{equation}
△ASCと△ERCについて考えます。
\begin{equation}l_8:H=l_7:b\end{equation}
(7)、(8)、(9)、(10)を比の値にすると
\begin{align}\begin{aligned}(7)\\
\frac{l_1}{h}&=\frac{l_2}{a}\end{aligned}\\ \begin{aligned}(8)\\
\frac{l_3}{h}&=\frac{l_4}{b}\end{aligned}\\ \begin{aligned}(9)\\
\frac{l_6}{H}&=\frac{l_5}{a}\end{aligned}\\ \begin{aligned}(10)\\
\frac{l_8}{H}&=\frac{l_7}{b}\end{aligned}\end{align}
(11)、(12)、(13)、(14)を足すと
\begin{align*}\frac{l_1}{h}+\frac{l_3}{h}+\frac{l_6}{H}+\frac{l_8}{H}&=\frac{l_2}{a}+\frac{l_4}{b}+\frac{l_5}{a}+\frac{l_7}{b}\\
\\
\frac{l_6+l_8}{H}+\frac{l_1+l_3}{h}&=\frac{l_2+l_5}{a}+\frac{l_4+l_7}{b}\end{align*}
図6より
\[l=l_1+l_3=l_2+l_5=l_4+l_7=l_6+l_8\]
なので、
\[\frac{l}{H}+\frac{l}{h}=\frac{l}{a}+\frac{l}{b}\]
両辺を$l$で割ると
\[\frac{1}{H}+\frac{1}{h}=\frac{1}{a}+\frac{1}{b}\]
となります。
$H,h,a,b$はそれぞれ△ABC、△FBC、△DBC、△EBCの高さとなるので、両辺を$\dfrac{1}{2}l$で割ると
\[\large{\frac{1}{△ABC}+\frac{1}{△FBC}=\frac{1}{△DBC}+\frac{1}{△EBC}}\]
が成り立つことがわかります。
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