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2022年9月17日

楕円の2つの焦点からの和と長軸の長さが等しくなるのはなぜなのか?

 楕円の長軸は、その楕円の2つの焦点それぞれから楕円上の点までの距離の和と等しくなります。
これはなぜなのでしょうか?

 楕円の定義から楕円の2つの焦点からの距離の和と楕円の長軸が等しくなることを確かめます。
楕円の定義は「焦点となる2つの定点からの距離の和が一定となるような点の軌跡」です。
この定義に従い焦点の座標を$(-p,0),(p,0)$、2つの焦点からの距離の和を$r$として楕円の方程式を求めます。

ただし、$p$と$r$の条件は$0<2p<r$です。2つの定点から1点までの距離の和の最小は定点間の距離と等しくなります。しかしこのとき、つまり$r=2p$のとき描く軌跡は楕円ではなく2つの定点を結ぶ線分となります。したがって、2つの定点からの距離の和は最小であってはならないので、この条件が必要になります。

2つの焦点からの距離の和が$r$となるような点を$(x,y)$とおくと
\[\sqrt{(x+p)-2+y^2}+\sqrt{(x-p)^2+y^2}=r\]
となります。これを変形して
\[\sqrt{(x+p)-2+y^2}=r-\sqrt{(x-p)-2+y^2}\]
両辺を2乗して
\begin{align*}(x+p)^2+y^2&=r^2-2r\sqrt{(x-p)-2+y^2}+(x-p)^2+y^2\\ \\ 2r\sqrt{(x-p)^2+y^2}&=r^2-4px\end{align*}
両辺を2乗して
\begin{align*}4r^2\left\{(x-p)^2+y^2\right\}&=r^4-8r^2px+16p^2x^2\\ \\ 4(r^2-4p^2)x^2+4r^2y^2&=r^2(r^2-4p^2)\end{align*}
両辺を$r^2(r^2-4p^2)$で割ると
\[\frac{4x^2}{r^2}+\frac{4y^2}{r^2-4p^2}=1\]
楕円の方程式$\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$ただし$a,b>0$と比較すると
(ここで、$0<2p<r$より各辺を2乗して$0<4p^2<r^2$なので、$r^2-4p^2>0$です。)
\[\left\{\begin{aligned}a^2&=\frac{r^2}{4}&\cdots(1)\\ \\ b^2&=\frac{r^2-4p^2}{4}&\cdots(2)\end{aligned}\right.\]
$a,b$について解くと
\[\left\{\begin{aligned}a&=\frac{r}{2}&\cdots(3)\\ \\ b&=\frac{\sqrt{r^2-4p^2}}{2}&\cdots(4)\end{aligned}\right.\]
となります。
(3)より$r=2a$、そして楕円$\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$の長軸の長さは$2a$なので2つの焦点からの距離の和は長軸の長さに等しいことがわかります。
y軸上に焦点がある場合も同様の手順で確かめることができます。

 これはグラフからもわかります。
楕円$\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$の長軸の端点$A,A'$と焦点$F,F'$について考えます。
2つの焦点から点$A$までの距離の和は$AF+AF'$となります。
上図のように$A,F,F'$は同一直線上にあるから
\[AF+AF'=AF+(AF+FF')=2AF+FF'\quad\cdots(a)\]
となります。
今度は2つの焦点から点$A'$までの距離の和は$A'F+A'F'$で、$A',F,F'$は同一直線上にあるから
\[A'F+A'F'=(A'F'+FF')+A'F'=2A'F'+FF'\quad\cdots(b)\]
となります。
(a)=(b)より$AF=A'F'$であるから、2つの焦点からの距離の和は
\[AF+FF'+A'F'=AA'=2a\]
すなわち長軸の長さと等しいことがわかります。
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