$36°$は$180°$の5分の1なので、「$θ$の5倍角までの$\sin,\cos,\tan$を求めてみよう」で求めた5倍角の式を利用して、$\sin36°\ (=\sin\dfrac{\pi}{5})$がどんな数になるのかを計算してみようと思います。
$\sin36°$はどんな数?
5倍角の式は以下のようになります。
\[\sin5θ=16\sin^5θ-20\sin^3θ+5\sinθ\]
この式に$θ=36°$を代入すると$5θ=180°$となります。
\begin{equation}\sin180°=16\sin^5 36°-20\sin^3
36°+5\sin36°\end{equation}
$\sin180°=0$なので$(1)$の左辺は$0$となります。$\sin36°=x$とおくと
\begin{align*}0&=16x^5-20x^3+5x\tag2\\[0.5em]0&=x(16x^4-20x^2+5)\\[0.5em]x(16x^4-20x^2+5)&=0\end{align*}
$(2)$を満たす条件は$x=0$または$16x^4-20x^2+5=0$となるので、解の1つは$x=0$です。
残る解を求めるため
\[16x^4-20x^2+5=0\]
を解きます。
\[16x^4-20x^2+5=0\]
を解きます。
$x^2=y$とおくと、
\[16y^2-20y+5=0\]
$y$の2次方程式となるので、これを解いて
\[y=\frac{10\pm\sqrt{10^2-16×5}}{16}=\frac{5\pm\sqrt{5}}{8}\]
したがって、
\begin{align*}x^2&=\frac{5\pm\sqrt{5}}{8}\\[0.5em]x^2&=\frac{5-\sqrt{5}}{8},\frac{5+\sqrt{5}}{8}\\[0.5em]x=\pm\sqrt{\frac{5-\sqrt{5}}{8}},\pm\sqrt{\frac{5+\sqrt{5}}{8}}\end{align*}
以上より$(2)$の解は
\[x=0,\pm\sqrt{\frac{5-\sqrt{5}}{8}},\pm\sqrt{\frac{5+\sqrt{5}}{8}}\]
解が5つ出てきてしまいましたが、$\sin36°$の値として適するものは1つだけのはずです。
なので、どれが適する値なのかを絞り込みます。
$\sin36°>0$なので、$0$と負の値の解は除外されます。また、
\begin{align*}\sin30°<&\sin36°<\sin45°\\[0.5em]\frac{1}{2}=\sqrt{\frac{1}{4}}<&\sin36°<\sqrt{\frac{1}{2}}=\frac{\sqrt{2}}{2}\\[0.5em]\sqrt{0.25}<&\sin36°<\sqrt{0.5}\end{align*}
なので、これを満たすものを探します。
\begin{align*}\sqrt{5}=2.23として\\
\sqrt{\frac{5-\sqrt{5}}{8}}&=\sqrt{\frac{2.73}{8}}≒\sqrt{0.341}\\[0.5em]\sqrt{\frac{5+\sqrt{5}}{8}}&=\sqrt{\frac{7.23}{8}}≒\sqrt{0.904}\end{align*}
したがって、$\sin36°$として適する値は
\[\underline{\sin36°=\sqrt{\frac{5-\sqrt{5}}{8}}}\]
となります。
これは分母を有理化して
\[\sin36°=\frac{\sqrt{10-2\sqrt{5}}}{4}\]
とも書くことができます。
なぜ$(2)$の解が5個も出てきてしまったのかというと、$(2)$をつくれる等式が$(1)$だけではないからです。
$\sin180°=0$であると上で書きましたが、$\sin$の値が$0$になるのは$180°$の整数倍、すなわち$180°×n$ $(n:整数)$のときです。
したがって、$5θ=180°×n$、すなわち$θ=36°×n$を5倍角の公式に代入した
つまり、$x=\sin(36°×n)$という形で$(2)$の解を考えると整数$n$の個数分だけ解が存在するということです。
$\sin180°=0$であると上で書きましたが、$\sin$の値が$0$になるのは$180°$の整数倍、すなわち$180°×n$ $(n:整数)$のときです。
したがって、$5θ=180°×n$、すなわち$θ=36°×n$を5倍角の公式に代入した
\[\sin(180°×n)=16\sin^5(36°×n)-20\sin^3(36°×n)+5\sin(36°×n)\]
で表せる等式ならば$(2)$をつくれます。$(1)$はこの等式に$n=1$を代入したものです。つまり、$x=\sin(36°×n)$という形で$(2)$の解を考えると整数$n$の個数分だけ解が存在するということです。
整数$n$は無数にあるので$36°×n$も無数にありますが、$\sin(36°×n)$で現れる値は5個だけです。
値としては$(2)$を満たすものは5個なので、解が5個出てきたということになります。
$\cos36°$と$\tan36°$
$\cos36°$
$\cos36°$を求めるために5倍角の式
そこで、より簡単な方法として三角関数の相互関係
\[\sin^2θ+\cos^2θ=1\]
を利用します。
\[\cos5θ=16\cos^5θ-20\cos^3θ+5\cosθ\]
を使う・・・とはいきません。$\cos180°=1$なので、$\sin36°$と同様に因数分解と2次方程式への変換で単純化して解けないためです。
そこで、より簡単な方法として三角関数の相互関係
\[\sin^2θ+\cos^2θ=1\]
を利用します。
\begin{align*}\sin^2 36°&+\cos^2 36°=1\\[0.5em]\cos^2
36°&=1-\sin^2
36°\\[0.5em]&=1-\left(\sqrt{\frac{5-\sqrt{5}}{8}}\right)^2\\[0.5em]&=1-\frac{5-\sqrt{5}}{8}\\[0.5em]&=\frac{3+\sqrt{5}}{8}\\[0.5em]&=\frac{6+2\sqrt{5}}{16}\\[0.5em]&=\frac{(1+\sqrt{5})^2}{16}\\[1em]\cos36°&=\pm\frac{1+\sqrt{5}}{4}\end{align*}
$\cos36°>0$なので、
\[\underline{\cos36°=\frac{1+\sqrt{5}}{4}}\]
となります。
$\tan36°$
$\tan36°$は、三角関数の相互関係より
\begin{align*}\tanθ&=\frac{\sinθ}{\cosθ}\\[0.5em]\tan36°&=\frac{\sin36°}{\cos36°}\\[0.5em]&=\frac{\sqrt{10-2\sqrt{5}}}{4}×\frac{4}{1+\sqrt{5}}\\[0.5em]&=\frac{\sqrt{10-2\sqrt{5}}}{1+\sqrt{5}}\\[0.5em]&=\frac{\sqrt{(10-2\sqrt{5})(\sqrt{5}-1)^2}}{(1+\sqrt{5})(\sqrt{5}-1)}\\[0.5em]&=\frac{\sqrt{(10-2\sqrt{5})(6-2\sqrt{5})}}{4}\\[0.5em]&=\frac{\sqrt{80-32\sqrt{5}}}{4}\\[0.5em]&=\frac{\sqrt{16(5-2\sqrt{5})}}{4}\\[0.5em]&=\underline{\sqrt{5-2\sqrt{5}}}\end{align*}
となります。
それぞれの近似値は以下のようになります。
\begin{align*}\sin36°&=0.58779\\[1em]\cos36°&=0.80902\\[1em]\tan36°&=0.72654\end{align*}
(2023/11)加筆修正しました。
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