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2026年7月24日

収束する数列の極限の性質②(定数倍、逆数)

 収束する数列の極限には、以下のような性質があります。
 数列$\{a_n\}$について
\[\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha\]
が成り立つとします。

数列の定数倍の極限

$k$を任意の実数とすると
\[\large \lim_{n\to\infty}k a_n=k\alpha\]

数列の逆数の極限

 ここでは、数列$\{a_n\}$のすべての項について$a_n≠0$が成り立つとします。
また、$N_0$を自然数とします。
$α≠0$であるとき
\[\large\lim_{n\to\infty}\frac{1}{a_n}=\frac{1}{\alpha}\]
第$N_0 +1$項以降のすべての項について$a_n>0$が成り立ち、かつ$α=0$であるとき
\[\large\lim_{n\to\infty}\frac{1}{a_n}=\infty\]
第$N_0 +1$項以降のすべての項について$a_n<0$が成り立ち、かつ$α=0$であるとき
\[\large\lim_{n\to\infty}\frac{1}{a_n}=-\infty\]

なぜこれらが成り立つのでしょうか?


数列の定数倍の極限

 $k=0$と$k≠0$で場合分けして考えます。

$k=0$のとき

 $k a_n=0$、すなわち数列$\{k a_n\}$はすべての項が$0$の定数列、そして$kα=0$となります。
したがって、任意の正の数$ε$を与えると、常に
\[|k a_n-k\alpha|=|0-0|=0<\varepsilon\]
が成り立つので、数列の収束の定義を満たし、$k=0$のとき
\[\lim_{n\to\infty}k a_n=k\alpha\]
が成り立つことがわかります。

$k≠0$のとき

 $\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=α$とは、数列の収束の定義より
任意の正の数$ε$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において
\[|a_n-\alpha|<\varepsilon\]
が成り立つことです。
この$n$において、上式の両辺に$|k|$を掛けると、$|k|>0$なので
\begin{align*}|k||a_n-\alpha|&<|k|\varepsilon\\[0.5em]|k a_n-k\alpha|&<|k|\varepsilon&(\because |x||y|=|xy|)\end{align*}
となります。
すなわち、
任意の正の数$ε$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$|k a_n-k\alpha|<|k|\varepsilon$が成り立つ。
は「数列の収束・無限大に発散の定義と同値な条件②」で示した数列の収束の定義と同値な条件を満たしているので、$k≠0$のとき
\[\lim_{n\to\infty}k a_n=k\alpha\]
が成り立つことがわかります。

 以上より、任意の実数$k$で
\[\large\lim_{n\to\infty}k a_n=k\alpha\]
が成り立つことがわかります。

数列の逆数の極限

$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{1}{a_n}=\dfrac{1}{α}\quad(α≠0)$

 数列$\{a_n\}$のすべての項について$a_n≠0$が成り立ち、かつ$α≠0$であるとします。
三角不等式より
\begin{align*}|\alpha|=\bigl|(\alpha -a_n)+a_n\bigr|&\leqq |\alpha -a_n|+|a_n|\\[0.5em]&=|a_n-\alpha|+|a_n|&(\because |x|=|-x|)\\[0.5em]|\alpha|&\leqq |a_n-\alpha|+|a_n|\\[0.5em]|a_n|&\geqq |\alpha|-|a_n-\alpha|\tag1\end{align*}
となります。
 次に、$\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=α$とは、「数列の収束・無限大に発散の定義と同値な条件①」で示した数列の収束の定義と同値な条件より
$0<ε<\dfrac{|α|}{2}$を満たす任意の正の数$ε$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において
\[|a_n-\alpha|<\varepsilon\tag2\]
が成り立つことです。
この$n$において、上式は$0<ε<\dfrac{|α|}{2}$より
\[|a_n-\alpha|<\frac{|\alpha|}{2}\]
となり、さらに変形すれば
\begin{align*}-|a_n-\alpha|&>-\frac{|\alpha|}{2}\\[0.5em]|\alpha|-|a_n-\alpha|&>|\alpha|-\frac{|\alpha|}{2}=\frac{|\alpha|}{2}\end{align*}
となり、$(1)$より
\begin{align*}|a_n|&\geqq|\alpha|-|a_n-\alpha|>\frac{|\alpha|}{2}\\[0.5em]|a_n|&>\frac{|\alpha|}{2}\\[0.5em]\frac{1}{|a_n|}&<\frac{2}{|\alpha|}\tag3\end{align*}
を得ます。
同じくこの$n$において、$\left|\dfrac{1}{a_n}-\dfrac{1}{α}\right|$について考えると
\begin{align*}\left|\frac{1}{a_n}-\frac{1}{\alpha}\right|&=\left|\frac{\alpha -a_n}{\alpha a_n}\right|\\[0.5em]&=\frac{|\alpha -a_n|}{|\alpha a_n|}&\left(\because \left|\frac{x}{y}\right|=\frac{|x|}{|y|}\right)\\[0.5em]&=\frac{|a_n-\alpha|}{|\alpha||a_n|}\\[0.5em]\therefore \left|\frac{1}{a_n}-\frac{1}{\alpha}\right|&=\frac{|a_n-\alpha|}{|\alpha|}\cdot\frac{1}{|a_n|}\end{align*}
となり、$(3)$より
\begin{align*}\frac{|a_n-\alpha|}{|\alpha|}\cdot\frac{1}{|a_n|}&<\frac{|a_n-\alpha|}{|\alpha|}\cdot\frac{2}{|\alpha|}=\frac{2}{|\alpha|^2} |a_n-\alpha|\\[0.5em]\therefore\left|\frac{1}{a_n}-\frac{1}{\alpha}\right|&<\frac{2}{|\alpha|^2} |a_n-\alpha|\end{align*}
$(2)$より
\begin{align*}\left|\frac{1}{a_n}-\frac{1}{\alpha}\right|<\frac{2}{|\alpha|^2} |a_n-\alpha|&<\frac{2}{|\alpha|^2}\varepsilon\\[0.5em]\left|\frac{1}{a_n}-\frac{1}{\alpha}\right|&<\frac{2}{|\alpha|^2}\varepsilon\end{align*}
となります。なお、$\dfrac{2}{|\alpha|^2}$は正の定数です。
したがって、数列$\left\{\dfrac{1}{a_n}\right\}$について
$0<ε<\dfrac{|α|}{2}$を満たす任意の正の数$ε$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$\left|\dfrac{1}{a_n}-\dfrac{1}{α}\right|<\dfrac{2}{|α|^2}ε$が成り立つ。
という「数列の収束・無限大に発散の定義と同値な条件③」で示した数列の収束の定義と同値な条件を満たしているため、
\[\large \lim_{n\to\infty}\frac{1}{a_n}=\frac{1}{\alpha}\]
が成り立つことがわかります。

$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{1}{a_n}=\infty\quad(a_n>0, α=0)$

 数列$\{a_n\}$のすべての項について$a_n≠0$、第$N_0+1$項以降のすべての項について$a_n>0$が成り立ち、かつ$α=0$であるとします。
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=0$とは、数列の収束の定義より
任意の正の数$ε$に対し、ある自然数$N_a$が存在して、$n>N_a$を満たすすべての$n$において$|a_n-0|=|a_n|<ε$
が成り立つことです。
また、第$N_0+1$項以降のすべての項について$a_n>0$は、
$n>N_0$を満たすすべての$n$において$a_n>0$が成り立つ。
と書けます。
$ε$に対応する自然数はより大きいものに選び直せるので、各$ε$に対応する$N_a$と$N_0$のうち最大のものを$N$とすれば、
任意の正の数$ε$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$|a_n-0|=|a_n|<ε$が成り立つ。
かつこの$n$において
\[a_n>0\]
が成り立ちます。

ここで、$ε$より先に決まる任意の正の数$K$があり、$ε=\dfrac{1}{K}$によって$ε$が決まっているとします。
すると、$K$が正の数全体を動くならば$ε$もそれに応じて正の数全体を動くため、$ε$は変わらず任意の正の数をとりえます。
また、数列の収束の定義より、任意の正の数$ε$に対応する自然数$N$が存在します。
すなわち、
\[K\ \rightarrow\ \varepsilon\ \rightarrow\ N\]
と対応付けられるため、$K$には$ε$を経由する形で対応する$N$が存在するといえます。
このことから、数列の収束の定義は、次のように書き換えることができます。
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$|a_n-0|=|a_n|<\dfrac{1}{K}$が成り立つ。
この$n$において、$a_n>0$より$|a_n|=a_n$なので
\begin{align*}a_n&<\frac{1}{K}\\[0.5em]\frac{1}{a_n}&>K\end{align*}
となります。
したがって、
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$\dfrac{1}{a_n}>K$が成り立つ。
とすることができ、これは数列$\left\{\dfrac{1}{a_n}\right\}$における正の無限大に発散の定義そのものです。
よって、$0$に収束する数列$\{a_n\}$のすべての項について$a_n≠0$、かつ第$N_0+1$項以降のすべての項について$a_n>0$であるとき
\[\large\lim_{n\to\infty}\frac{1}{a_n}=\infty\]
が成り立つことがわかります。

$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{1}{a_n}=-\infty\quad(a_n<0, α=0)$

 数列$\{a_n\}$のすべての項について$a_n≠0$、第$N_0+1$項以降のすべての項について$a_n<0$が成り立ち、かつ$α=0$であるとします。
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=0$とは、数列の収束の定義より
任意の正の数$ε$に対し、ある自然数$N_a$が存在して、$n>N_a$を満たすすべての$n$において$|a_n|<ε$
が成り立つことです。
また、第$N_0+1$項以降のすべての項について$a_n<0$は、
$n>N_0$を満たすすべての$n$において$a_n<0$が成り立つ。
と書けます。
各$ε$に対応する$N_a$と$N_0$のうち最大のものを$N$とすれば、
任意の正の数$ε$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$|a_n-0|=|a_n|<ε$が成り立つ。
かつこの$n$において
\[a_n<0\]
が成り立ちます。

ここで、$ε$より先に決まる任意の負の数$L$があり、$ε=-\dfrac{1}{L}$によって$ε$が決まっているとします。
すると、$L$が負の数全体を動くならば$ε$はそれに応じて正の数全体を動くため、$ε$は変わらず任意の正の数をとりえます。
また、数列の収束の定義より、任意の正の数$ε$に対応する自然数$N$が存在します。
すなわち、
\[L\ \rightarrow\ \varepsilon\ \rightarrow\ N\]
と対応付けられるため、$L$には$ε$を経由する形で対応する$N$が存在するといえます。
このことから、数列の収束の定義は、次のように書き換えることができます。
任意の負の数$L$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$|a_n-0|=|a_n|<-\dfrac{1}{L}$が成り立つ。
この$n$において、$a_n<0$より$|a_n|=-a_n$なので
\begin{align*}-a_n&<-\frac{1}{L}\\[0.5em]a_n&>\frac{1}{L}\\[0.5em]\frac{1}{a_n}&<L\end{align*}
となります。
したがって、
任意の負の数$L$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$\dfrac{1}{a_n}<L$が成り立つ。
とすることができ、これは数列$\left\{\dfrac{1}{a_n}\right\}$における負の無限大に発散の定義そのものです。
よって、$0$に収束する数列$\{a_n\}$のすべての項について$a_n≠0$、かつ第$N_0+1$項以降のすべての項について$a_n<0$であるとき
\[\large\lim_{n\to\infty}\frac{1}{a_n}=-\infty\]
が成り立つことがわかります。

(2026/8)一部内容の変更をしました。

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