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2026年8月1日

発散する数列と収束する数列の積の極限

 無限大に発散する数列と収束する数列の積の極限は以下のようになります。
 数列$\{a_n\}, \{b_n\}, \{c_n\}$について
\begin{gather*}\lim_{n\to\infty}a_n=\alpha\\[1em]\lim_{n\to\infty}b_n=\infty\\[1em]\lim_{n\to\infty}c_n=-\infty\end{gather*}
が成り立つとします。

数列の積の極限

数列$\{a_n\}$について$α>0$のとき
\begin{gather*}\large\lim_{n\to\infty}a_n b_n=\infty\\[1em]\large\lim_{n\to\infty}a_n c_n=-\infty\end{gather*}
数列$\{a_n\}$について$α<0$のとき
\begin{gather*}\large\lim_{n\to\infty}a_n b_n=-\infty\\[1em]\large\lim_{n\to\infty}a_n c_n=\infty\end{gather*}

なぜこれらが成り立つのでしょうか?


準備

 $\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=α$は、数列の収束の定義より
任意の正の数$ε$に対し、ある自然数$N_a$が存在して、$n>N_a$を満たすすべての$n$において$|a_n-α|<ε$が成り立つ。
と書けます。

$α>0$のときと$α<0$のときで場合分けして以下のようなことを考えます。

$α>0$のとき

 $ε=\dfrac{α}{2}$のときも、これに対応する自然数$N_1$が存在して、$n>N_1$を満たすすべての$n$において
\[|a_n-\alpha|<\frac{\alpha}{2}\]
が成り立ちます。
上式を変形すると
\begin{align*}-\frac{\alpha}{2}<a_n-\alpha&<\frac{\alpha}{2}\\[0.5em]\frac{\alpha}{2}<a_n&<\frac{3\alpha}{2}\end{align*}
となります。
したがって、少なくとも
\begin{equation}a_n>\frac{\alpha}{2}\quad(n>N_1)\end{equation}
が成り立つことがわかります。

$α<0$のとき

 $ε=-\dfrac{α}{2}$のときも、これに対応する自然数$N_2$が存在して、$n>N_2$を満たすすべての$n$において
\[|a_n-\alpha|<-\frac{\alpha}{2}\]
が成り立ちます。
上式を変形すると
\begin{align*}\frac{\alpha}{2}<a_n-\alpha&<-\frac{\alpha}{2}\\[0.5em]\frac{3\alpha}{2}<a_n&<\frac{\alpha}{2}\end{align*}
となります。
したがって、少なくとも
\begin{equation}a_n<\frac{\alpha}{2}\quad(n>N_2)\end{equation}
が成り立つことがわかります。

数列の積の極限

$\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n b_n=\infty\quad(α>0)$

 数列$\{a_n\}$について$α>0$であるとします。
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}b_n=\infty$は、数列の正の無限大に発散の定義より
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N_b$が存在して、$n>N_b$を満たすすべての$n$において$b_n>K$が成り立つ。
と書けます。
ここで、$K$に対応する自然数はより大きいものに選び直せることから、各$K$に対応する$N_b$と$(1)$の$N_1$の大きいほうを$N$として、上記の定義を
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において
\[b_n>K\]
と書き換えます。これにより、数列の第$N_1+1$項以降にのみ着目することになります。
この$n$について、上式と$(1)$の辺々を掛けると、$a_n, b_n, \dfrac{α}{2}, K$はいずれも正なので
\[a_n b_n>\frac{\alpha}{2}K\]
となります。
したがって、数列$\{a_n b_n\}$について
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$a_n b_n>\dfrac{α}{2}K$が成り立つ。
という、「数列の収束・無限大に発散の定義と同値な条件②」で示した数列の正の無限大に発散の定義と同値な条件を満たしているので
\[\large\lim_{n\to\infty}a_n b_n=\infty\]
が成り立つことがわかります。

$\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n c_n=-\infty\quad(α>0)$

 数列$\{a_n\}$について$α>0$であるとします。
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}c_n=-\infty$は、数列の負の無限大に発散の定義より
任意の負の数$L$に対し、ある自然数$N_c$が存在して、$n>N_c$を満たすすべての$n$において$c_n<L$が成り立つ。
と書けます。
ここで、$L$に対応する自然数はより大きいものに選び直せることから、各$L$に対応する$N_c$と$(1)$の$N_1$の大きいほうを$N$として、上記の定義を
任意の負の数$L$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において
\[c_n<L\]
と書き換えます。これにより、数列の第$N_1+1$項以降にのみ着目することになります。
この$n$について、上式の両辺に$-1$を掛けると
\[-c_n>-L\]
となり、これと$(1)$の辺々を掛けると、$a_n, -c_n, \dfrac{α}{2}, -L$はいずれも正なので
\begin{align*}-a_n c_n&>-\frac{\alpha}{2}L\\[0.5em]a_n c_n&<\frac{\alpha}{2}L\end{align*}
となります。
したがって、数列$\{a_n c_n\}$について
任意の負の数$L$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$a_n c_n<\dfrac{α}{2}L$が成り立つ。
という、「数列の収束・無限大に発散の定義と同値な条件②」で示した数列の負の無限大に発散の定義と同値な条件を満たしているので
\[\large\lim_{n\to\infty}a_n c_n=-\infty\]
が成り立つことがわかります。

$\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n b_n=-\infty\quad(α<0)$

 数列$\{a_n\}$について$α<0$であるとします。
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}b_n=\infty$は、数列の正の無限大に発散の定義より
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N_b$が存在して、$n>N_b$を満たすすべての$n$において$b_n>K$が成り立つ。
と書けます。
ここで、各$K$に対応する$N_b$と$(2)$の$N_2$の大きいほうを$N$として、上記の定義を
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において
\[b_n>K\]
と書き換えます。これにより、数列の第$N_2+1$項以降にのみ着目することになります。
この$n$について、上式と$(2)$の両辺に$-1$を掛けた$-a_n>-\dfrac{α}{2}$の辺々を掛けると、$-a_n, b_n, -\dfrac{α}{2}, K$はいずれも正なので
\[-a_n b_n>-\frac{\alpha}{2}K\]
となります。なお、$-\dfrac{α}{2}$は正の定数です。
したがって、数列$\{-a_n b_n\}$について
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$-a_n b_n>-\dfrac{α}{2}K$が成り立つ。
という、「数列の収束・無限大に発散の定義と同値な条件②」で示した数列の正の無限大に発散の定義と同値な条件を満たしているので
\[\lim_{n\to\infty}-a_n b_n=\infty\]
が成り立つことがわかります。
そして、「発散する数列の極限の性質①」より
\[\lim_{n\to\infty}-\bigl(-a_n b_n\bigr)=\large\lim_{n\to\infty}a_n b_n=-\infty\]
が成り立つことがわかります。

$\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n c_n=\infty\quad(α<0)$

 数列$\{a_n\}$について$α<0$であるとします。
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}c_n=-\infty$は、数列の負の無限大に発散の定義より
任意の負の数$L$に対し、ある自然数$N_c$が存在して、$n>N_c$を満たすすべての$n$において$c_n<L$が成り立つ。
と書けます。
ここで、各$L$に対応する$N_c$と$(2)$の$N_2$の大きいほうを$N$として、上記の定義を
任意の負の数$L$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において
\[c_n<L\]
と書き換えます。これにより、数列の第$N_2+1$項以降にのみ着目することになります。
この$n$について、上式の両辺に$-1$を掛けると
\[-c_n>-L\]
となり、これと$(2)$の両辺に$-1$を掛けた$-a_n>-\dfrac{α}{2}$の辺々を掛けると、$-a_n, -c_n, -\dfrac{α}{2}, -L$はいずれも正なので
\begin{align*}a_n c_n&>\frac{\alpha}{2}L\\[0.5em]-a_n c_n&<-\frac{\alpha}{2}L\end{align*}
となります。なお、$-\dfrac{α}{2}$は正の定数です。
したがって、数列$\{-a_n c_n\}$について
任意の負の数$L$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$-a_n c_n<-\dfrac{α}{2}L$が成り立つ。
という、「数列の収束・無限大に発散の定義と同値な条件②」で示した数列の負の無限大に発散の定義と同値な条件を満たしているので
\[\lim_{n\to\infty}-a_n c_n=-\infty\]
が成り立つことがわかります。
そして、「発散する数列の極限の性質①」より
\[\lim_{n\to\infty}-\bigl(-a_n c_n\bigr)=\large\lim_{n\to\infty}a_n c_n=\infty\]
が成り立つことがわかります。

 $α=0$のときの数列$\{a_n b_n\}$など、$0$に収束する数列と無限大に発散する数列の積の極限は1つに定まりません。
例えば、
  • $a_n=\dfrac{1}{n}, b_n=2n$のとき、$a_n b_n=2$なので、$2$に収束します。
  • $a_n=\dfrac{1}{n}, b_n=n^2$のとき、$a_n b_n=n$なので、正の無限大に発散します。
  • $a_n=\dfrac{1}{n}, c_n=-n^3$のとき、$a_n c_n=-n^2$なので、負の無限大に発散します。
  • $a_n=\dfrac{(-1)^n}{n}, c_n=-n$のとき、$a_n c_n=-(-1)^n$なので、振動します。
このように、数列によって収束したり、正・負の無限大に発散したり、振動したりします。

極限が1つに定まらない数列の形を不定形といいます。
これらは極限の記号をもちいて表すと$0\times\infty$や$0\times(-\infty)$という形になり、総じて$0\times\infty$型の不定形といいます。


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