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2026年7月9日

イプシロン-エヌ論法(ε-N論法) ②数列の極限・発散

 数列の極限を定義する方法がイプシロン-エヌ論法です。
本記事では、数列の発散の定義をみてみます。

正の無限大に発散

定義・定義の言い換え

 数列の極限のうち、数列$\{a_n\}$が限りなく大きくなることは、イプシロン-エヌ論法では$ε$と$N$ではなく$K$と$N$をもちいて次のように定義されます。
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において常に$a_n>K$が成り立つ。
この定義を満たすとき、数列$\{a_n\}$は正の無限大に発散するといい、
$n→∞$のとき、$a_n→∞$
あるいは
\[\large\lim_{n\to\infty}a_n=\infty\]
と表します。

 まず、「任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在して」の部分は、どんな正の数$K$に対しても、それに応じた自然数$N$を決めることができることを意味します。

そして、「$n>N$を満たすすべての$n$において」の部分は収束の定義と同様に、数列$\{a_n\}$を初項から第$N$項までと第$N+1$項以降の2つに分割し、第$N+1$項以降の部分だけを考えることを意味します。すなわち、$N$は数列の着目する範囲の境界を表します。

最後に、$a_n>K$の部分は、そのまま$a_n$の値が$K$より大きいことを意味します。

したがって、上記の数列の正の無限大に発散の定義は
どんな正の数$K$に対しても、数列$\{a_n\}$の第$N+1$項以降のすべての項の値が$K$より大きくなるような自然数$N$が必ず存在する。
と言い換えることができます。

直感との比較

 収束と比較して正の無限大に発散の定義は直感的な説明
$n$が限りなく大きくなるとき、$a_n$の値も限りなく大きくなる
と結びつきやすいと思いますが、上記の定義の言い換えに基づいて、確認してみようと思います。
定義を満たすならばK_1に対応するN_1が存在する
 数列$\{a_n\}$が定義を満たすのならば、まず正の数$K_1$をとると、第$N_1+1$項以降のすべての項の値が$K_1$より大きくなるような自然数$N_1$を決めることができます。
K_0<K_1であるK_0にもN_1を対応させることができる
このとき、$K_0<K_1$である任意の正の数$K_0$をとったとしても、第$N_1+1$項以降のすべての項の値は必ず$K_0$より大きいので、$K_0$に対して自然数$N_1$をそのまま対応させることができます。
すなわち、$K$が$K_1$より小さい場合に対応する自然数$N$は存在しているということなので、$K$が$K_1$より大きい場合についてのみ考えることになります。
定義を満たすならば、K_2>K_1であるK_2に対応するN_2も存在する
 次に、$K_2>K_1$である正の数$K_2$をとると、第$N_2+1$項以降のすべての項の値が$K_2$より大きくなるような自然数$N_2$を決めることができます。
N_2は最初に決めた自然数より大きい自然数に変えても問題ない
ここで、もし$N_2$が$N_1$より小さかったとします。(これは、$N_1$をかなり大きくとった場合に起こりえます。)
このとき、第$N_2+1$項以降のすべての項の値が$K_2$より大きいということは、$M>N_2$である自然数$M$をとっても、同様に第$M+1$項以降のすべての項の値は$K_2$より大きくなります。
すなわち、$K_2$に対応する数列の範囲の境界は、最初に決めた自然数$N_2$の他にそれより大きい自然数すべてがあてはまるということです。

したがって、定義を満たしたまま自然数$N_2$の値を$N_2>N_1$となるようにとり直すことができます。

定義を満たすとき、Kの値を大きくすると対応するNも大きくとれる
 数列$\{a_n\}$が定義を満たすのならば、$K_3$以降も同様の作業をいくらでも繰り返すことができます。
その結果、$K_1<K_2<K_3<\cdots$というように比較対象となる正の数を大きくしていくと、値を適切に選び直せば必ず$N_1<N_2<N_3<\cdots$というように、それに応じて数列の範囲を後ろへ下げることができます。

これはすなわち、定義を満たす数列$\{a_n\}$が、より大きな値をずっと超え続けるようになるのは、数列のより後ろの部分であるということです。
よって、数列が正の無限大に発散の定義を満たすことと、数列が正の無限大に発散することの直感的な説明が確かに合致することがわかります。


負の無限大に発散

定義・定義の言い換え

 数列の極限のうち、数列$\{a_n\}$が負の方向へ限りなく進むことは、イプシロン-エヌ論法では次のように定義されます。
任意の負の数$L$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において常に$a_n<L$が成り立つ。
この定義を満たすとき、数列$\{a_n\}$は負の無限大に発散するといい、
$n→∞$のとき、$a_n→-∞$
あるいは
\[\large\lim_{n\to\infty}a_n=-\infty\]
と表します。
 正の無限大に発散と同様に、数列の負の無限大に発散の定義を言い換えると
どんな負の数$L$に対しても、数列$\{a_n\}$の第$N+1$項以降のすべての項の値が$L$より小さくなるような自然数$N$が必ず存在する。
となります。

直感との比較

定義を満たすとき、Lの値を小さくすると対応するNは大きくとれる
 正の無限大に発散と同様に考えれば、負の無限大に発散の定義を満たす数列が、より小さな値をずっと下回り続けるようになるのは、数列のより後ろの部分である、といえます。
したがって、数列が負の無限大に発散の定義を満たすことと、数列が負の無限大に発散することの直感的な説明
$n$が限りなく大きくなるとき、$a_n$の値は負の方向に限りなく進む
が確かに合致することがわかります。

振動

 数列の項の番号を限りなく大きくしたとき、収束、正の無限大に発散、負の無限大に発散のいずれの定義も満たさない振る舞いを示す数列が存在します。
このような数列の振る舞いを振動するといいます。
数列の振動は発散に含まれますが、極限には含まれません。
改めてここで説明しますが、数列の極限とは、
無限数列の項の番号を限りなく大きくしたときに現れる一定の振る舞い
のことです。
収束はいわばある値への安定という一定の振る舞い、正・負の無限大に発散はいわば一方向への変化という一定の振る舞いです。
振動はこのいずれにも当てはまらない、すなわち数列の振る舞いが不定であることを表すため、数列が振動するとき、極限はないといいます。
一方、数列が収束、正・負の無限大に発散するとき、数列の振る舞いが一定であるため、極限はあるといいます。

また、振動というと周期的な変化のあるもののように思われるかもしれません。
確かに、収束も正・負の無限大に発散もしない周期的な数列は振動します。

しかし上述の通り、数列の振る舞いが不定であるものを振動というので、周期的でない数列であっても振動するものは存在します。


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