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2026年7月18日

数列の収束・無限大に発散の定義と同値な条件②(εやKの正の定数倍)

 数列の極限の収束、正・負の無限大に発散の定義には「数列の収束・無限大に発散の定義と同値な条件①」で紹介したものとは別の同値な条件もあります。
正の定数$c$をとると、それぞれの同値な条件は以下のようなものです。

収束の定義と同値な条件

任意の正の数$ε$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$|a_n-α|<\textcolor{red}cε$が成り立つ。

正の無限大に発散の定義と同値な条件

任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$a_n>\textcolor{red}cK$が成り立つ。

負の無限大に発散の定義と同値な条件

任意の負の数$L$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$a_n<\textcolor{red}cL$が成り立つ。

なぜこれらが定義と同値な条件なのでしょうか?


収束の定義と同値な条件

 イプシロン-エヌ論法における数列の収束の定義は
\begin{equation}\begin{aligned}&任意の正の数\varepsilonに対し、\\ &ある自然数Nが存在して、\\ &n>Nを満たすすべてのnにおいて\\ &|a_n-\alpha|<\varepsilonが成り立つ。\end{aligned}\end{equation}
で、これと同値であると確かめたい条件は
\[\begin{aligned}&任意の正の数\varepsilonに対し、\\ &ある自然数Nが存在して、\\ &n>Nを満たすすべてのnにおいて\\ &|a_n-\alpha|<c\varepsilonが成り立つ。\end{aligned}\tag{i}\]
です。
それぞれを満たす数列が一致することから、これらが同値であることを確かめます。

$(1)\ \Rightarrow\ \text{(i)}$

 まず、定義$(1)$を満たす数列が条件$\text{(i)}$も満たすことを確かめます。
定義$(1)$の$ε$を$p$に置き換え、
任意の正の数$p$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$|a_n-α|<p$が成り立つ。
とします。文字を置き換えたとしても、これは定義$(1)$そのものです。
ここで、$p$より先に決まる任意の正の数$ε$があり、$p=cε$(ただし、$c:$正の定数)によって$p$が決まっているとします。
すると、$c$は$ε$に依存しない正の定数なので、$ε$が正の数全体を動くならば$p$もそれに応じて正の数全体を動き、$p$は変わらず任意の正の数をとりえます。
また、定義$(1)$より、任意の正の数$p$に対応する自然数$N$が存在します。
すなわち、
\[\varepsilon\ \rightarrow\ p\ \rightarrow\ N\]
という2つの対応が組み合わさっており、$ε$には$p$を経由する形で対応する$N$が存在するといえます。
したがって、
任意の正の数$ε$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$|a_n-α|<p=cε$が成り立つ。
とすることができ、これは条件$\text{(i)}$そのものです。

よって、定義$(1)$を満たす数列が条件$\text{(i)}$も満たすことがわかります。


$\text{(i)}\ \Rightarrow\ (1)$

 次に、条件$\text{(i)}$を満たす数列が定義$(1)$も満たすことを確かめます。
条件$\text{(i)}$の$ε$を$q$に置き換え、
任意の正の数$q$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$|a_n-α|<cq$が成り立つ。
とします。文字を置き換えたとしても、これは条件$\text{(i)}$そのものです。
ここで、$q$より先に決まる任意の正の数$ε$があり、$q=\dfrac{ε}{c}$(ただし、$c:$正の定数)によって$q$が決まっているとします。
すると、$c$は$ε$に依存しない正の定数なので、$ε$が正の数全体を動くならば$q$もそれに応じて正の数全体を動き、$q$は変わらず任意の正の数をとりえます。
また、条件$\text{(i)}$より、任意の正の数$q$に対応する自然数$N$が存在します。
すなわち、
\[\varepsilon\ \rightarrow\ q\ \rightarrow\ N\]
という2つの対応が組み合わさっており、$ε$には$q$を経由する形で対応する$N$が存在するといえます。
したがって、
任意の正の数$ε$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$|a_n-α|<cq=ε$が成り立つ。
とすることができ、これは定義$(1)$そのものです。

よって、条件$\text{(i)}$を満たす数列が定義$(1)$も満たすことがわかります。


 以上より、定義$(1)$を満たす数列と条件$\text{(i)}$を満たす数列が一致することから、定義$(1)$と条件$\text{(i)}$は同値であることがわかります。


正の無限大に発散の定義と同値な条件

 イプシロン-エヌ論法における正の無限大に発散の定義は
\begin{equation}\begin{aligned}&任意の正の数Kに対し、\\ &ある自然数Nが存在して、\\ &n>Nを満たすすべてのnにおいて\\ &a_n>Kが成り立つ。\end{aligned}\end{equation}
で、これと同値であると確かめたい条件は
\[\begin{aligned}&任意の正の数Kに対し、\\ &ある自然数Nが存在して、\\ &n>Nを満たすすべてのnにおいて\\ &a_n>cKが成り立つ。\end{aligned}\tag{ii}\]
です。
それぞれを満たす数列が一致することから、これらが同値であることを確かめます。

$(2)\ \Rightarrow\ \text{(ii)}$

 まず、定義$(2)$を満たす数列が条件$\text{(ii)}$も満たすことを確かめます。
定義$(2)$の$K$を$P$に置き換え、
任意の正の数$P$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$a_n>P$が成り立つ。
とします。文字を置き換えたとしても、これは定義$(2)$そのものです。
ここで、$P$より先に決まる任意の正の数$K$があり、$P=cK$によって$P$が決まっているとします。
すると、収束の定義と同値な条件の場合と同様に
\[K\ \rightarrow\ P\ \rightarrow\ N\]
と対応付けられるため、$K$には$P$を経由する形で対応する$N$が存在するといえます。
したがって、
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$a_n>P=cK$が成り立つ。
とすることができ、これは条件$\text{(ii)}$そのものです。

よって、定義$(2)$を満たす数列が条件$\text{(ii)}$も満たすことがわかります。


$\text{(ii)}\ \Rightarrow\ (2)$

 次に、条件$\text{(ii)}$を満たす数列が定義$(2)$も満たすことを確かめます。
条件$\text{(ii)}$の$K$を$Q$に置き換え、
任意の正の数$Q$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$a_n>cQ$が成り立つ。
とします。文字を置き換えたとしても、これは条件$\text{(ii)}$そのものです。
ここで、$Q$より先に決まる任意の正の数$K$があり、$Q=\dfrac{K}{c}$(ただし、$c:$正の定数)によって$Q$が決まっているとします。
すると、収束の定義と同値な条件の場合と同様に
\[K\ \rightarrow\ Q\ \rightarrow\ N\]
と対応付けられるため、$K$には$Q$を経由する形で対応する$N$が存在するといえます。
したがって、
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$a_n>cQ=K$が成り立つ。
とすることができ、これは定義$(2)$そのものです。

よって、条件$\text{(ii)}$を満たす数列が定義$(2)$も満たすことがわかります。


 以上より、定義$(2)$を満たす数列と条件$\text{(ii)}$を満たす数列が一致することから、定義$(2)$と条件$\text{(ii)}$は同値であることがわかります。


負の無限大に発散の定義と同値な条件

 イプシロン-エヌ論法における負の無限大に発散の定義は
\begin{equation}\begin{aligned}&任意の負の数Lに対し、\\ &ある自然数Nが存在して、\\ &n>Nを満たすすべてのnにおいて\\ &a_n<Lが成り立つ。\end{aligned}\end{equation}
で、これと同値であると確かめたい条件は
\[\begin{aligned}&任意の負の数Lに対し、\\ &ある自然数Nが存在して、\\ &n>Nを満たすすべてのnにおいて\\ &a_n<cLが成り立つ。\end{aligned}\tag{iii}\]
です。
それぞれを満たす数列が一致することから、これらが同値であることを確かめます。

$(3)\ \Rightarrow\ \text{(iii)}$

 まず、定義$(3)$を満たす数列が条件$\text{(iii)}$も満たすことを確かめます。
定義$(3)$の$L$を$P$に置き換え、
任意の負の数$P$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$a_n<P$が成り立つ。
とします。文字を置き換えたとしても、これは定義$(3)$そのものです。
ここで、$P$より先に任意の負の数$L$があり、$P=cL$(ただし、$c:$正の定数)によって$P$が決まっているとします。
すると、収束の定義と同値な条件の場合と同様に
\[L\ \rightarrow\ P\ \rightarrow\ N\]
と対応付けられるため、$L$には$P$を経由する形で対応する$N$が存在するといえます。
したがって、
任意の負の数$L$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$a_n<P=cL$が成り立つ。
とすることができ、これは条件$\text{(iii)}$そのものです。

よって、定義$(3)$を満たす数列が条件$\text{(iii)}$も満たすことがわかります。


$\text{(iii)}\ \Rightarrow\ (3)$

 次に、条件$\text{(iii)}$を満たす数列が定義$(3)$も満たすことを確かめます。
条件$\text{(iii)}$の$L$を$Q$に置き換え、
任意の負の数$Q$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$a_n<cQ$が成り立つ。
とします。文字を置き換えたとしても、これは条件$\text{(iii)}$そのものです。
ここで、$Q$より先に決まる任意の負の数$L$があり、$Q=\dfrac{L}{c}$(ただし、$c:$正の定数)によって$Q$が決まっているとします。
すると、収束の定義と同値な条件の場合と同様に
\[L\ \rightarrow\ Q\ \rightarrow\ N\]
と対応付けられるため、$L$には$Q$を経由する形で対応する$N$が存在するといえます。
したがって、
任意の負の数$L$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$a_n<cQ=L$が成り立つ。
とすることができ、これは定義$(3)$そのものです。

よって、条件$\text{(iii)}$を満たす数列が定義$(3)$も満たすことがわかります。


 以上より、定義$(3)$を満たす数列と条件$\text{(iii)}$を満たす数列が一致することから、定義$(3)$と条件$\text{(iii)}$は同値であることがわかります。


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