三角不等式とは、三角形の辺の長さの性質を表す不等式であり、実数$x,
y$における三角不等式は
\[\large \bigl||x|-|y|\bigr|\leqq |x+y|\leqq |x|+|y|\]
となります。(三角関数を含む不等式も三角不等式と呼ぶことがありますが、これとは異なるものです。)
なぜこれが成り立つのでしょうか?
2通りの方法で示してみます。
実数の絶対値の性質を利用
まず、実数$x$の絶対値について、
\[|x|=\begin{cases}x&(x\geqq0)\\[0.5em]-x&(x<0)\end{cases}\]
なので、
\begin{cases}x=|x|&(x\geqq0)\\[0.5em]x=-|x|&(x<0)\end{cases}
が成り立ちます。
また、絶対値の性質より$|x|≧0$なので
\[|x|\geqq-|x|\quad(等号成立はx=0)\]
が成り立ちます。
これらより、$x≧0$のとき
同様に、任意の実数$y$について
\[-|x|\leqq x=|x|\quad(等号成立はx=0)\]
$x<0$のとき
\[-|x|=x<|x|\]
が成り立つので、任意の実数$x$について
\begin{equation}-|x|\leqq x\leqq |x|\end{equation}
と書けることがわかります。同様に、任意の実数$y$について
\begin{equation}-|y|\leqq y\leqq |y|\end{equation}
となります。
$(1)+(2)$より
\begin{gather*}-|x|-|y|\leqq x+y\leqq
|x|+|y|\\[0.5em]-\bigl(|x|+|y|\bigr)\leqq x+y\leqq |x|+|y|\end{gather*}
となり、$-B≦A≦B \Leftrightarrow |A|≦B$なので
\begin{equation}|x+y|\leqq |x|+|y|\end{equation}
と書けます。
次に、$z=-x-y$である実数$z$を考えると、$(3)$より実数$x, z$について
\[|x+z|\leqq |x|+|z|\]
が成り立つことがわかります。
これに$z=-x-y$を代入すると
\begin{align*}\bigl|x+(-x-y)\bigr|&\leqq
|x|+|-x-y|\\[0.5em]|-y|&\leqq
|x|+\bigl|-(x+y)\bigr|\\[0.5em]|y|&\leqq
|x|+|x+y|&\bigl(\because |A|=|-A|\bigr)\\[0.5em]-|x+y|&\leqq
|x|-|y|\tag4\end{align*}
となります。
同様に、$(3)$より実数$y, z$について
\[|y +z|\leqq |y|+|z|\]
が成り立ち、$z=-x-y$を代入すると
\begin{align*}\bigl| y+(-x-y)\bigr|&\leqq
|y|+|-x-y|\\[0.5em]|-x|&\leqq
|y|+\bigl|-(x+y)\bigr|\\[0.5em]|x|&\leqq
|y|+|x+y|\\[0.5em]|x|-|y|&\leqq |x+y|\tag5\end{align*}
となります。
$(4), (5)$より
\begin{align*}-|x+y|\leqq |x|-|y|&\leqq
|x+y|\\[0.5em]\bigl||x|-|y|\bigr|&\leqq |x+y|\tag6\end{align*}
が成り立ちます。
そして、$(3), (6)$より
\[\large \bigl||x|-|y|\bigr|\leqq |x+y|\leqq |x|+|y|\]
を得ます。
幾何ベクトルにおける三角不等式を利用
単位ベクトル$\vec{e}$と実数$x, y$をもちいた幾何ベクトル$x\vec{e},
y\vec{e}$を考えます。これらはともに零ベクトルでないなら互いに平行、すなわち同じ向きまたは互いに逆向きのベクトルです。
これらの幾何ベクトルについて
\[\bigl||x\vec{e}|-|y\vec{e}|\bigr|\leqq |x\vec{e}+y\vec{e}|\leqq
|x\vec{e}|+|y\vec{e}|\]
が成り立ちます。
ここで、ベクトルの絶対値の性質より、ベクトル$\vec{p}$と実数$k$について
\[|k\vec{p}|=|k||\vec{p}|\]
が成り立つので、上記の幾何ベクトルにおける三角不等式は
\begin{gather*}\bigl||x||\vec{e}|-|y||\vec{e}|\bigr|\leqq
|(x+y)\vec{e}|\leqq
|x||\vec{e}|+|y||\vec{e}|\\[0.5em]\bigl||x||\vec{e}|-|y||\vec{e}|\bigr|\leqq
|x+y||\vec{e}|\leqq
|x||\vec{e}|+|y||\vec{e}|\\[0.5em]\large\bigl||x|-|y|\bigr|\leqq
|x+y|\leqq |x|+|y|\\ \hspace{10em}(\because |\vec{e}|=1)\end{gather*}
となり、実数における三角不等式を得ます。
1つの単位ベクトル$\vec{e}$だけをもちいたということは、幾何ベクトル$x\vec{e},
y\vec{e}$は同一直線上に配置できるということです。
すなわち、「幾何ベクトルにおける三角不等式」で触れた幾何ベクトルをどのように配置しても三角形ができない場合であり、実数における三角不等式はこの特殊な場合に対応していることがわかります。
すなわち、「幾何ベクトルにおける三角不等式」で触れた幾何ベクトルをどのように配置しても三角形ができない場合であり、実数における三角不等式はこの特殊な場合に対応していることがわかります。
また、この特殊な場合において、幾何ベクトル$x\vec{e},
y\vec{e}$が互いに逆向きのときは左の等号が、同じ向きのときは右の等号が、少なくとも一方が零ベクトルのときは両方の等号が成り立ちます。
これらはすなわち、実数$x, y$が互いに符号が逆のときは左の等号が、符号が一致するときは右の等号が、少なくとも一方が$0$のときは両方の等号が成り立つということです。
これらはすなわち、実数$x, y$が互いに符号が逆のときは左の等号が、符号が一致するときは右の等号が、少なくとも一方が$0$のときは両方の等号が成り立つということです。
これらのうちのいずれかを必ず満たすため、実数における三角不等式の等号は少なくとも1つは必ず成り立っていることがわかります。
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