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2026年7月27日

発散する数列の極限の性質②(四則演算)

無限大に発散する数列の極限には、以下のような性質があります。
数列$\{a_n\}, \{b_n\}, \{c_n\}, \{d_n\}$について
\begin{gather*}\lim_{n\to\infty}a_n=\infty\\[1em]\lim_{n\to\infty}b_n=\infty\\[1em]\lim_{n\to\infty}c_n=-\infty\\[1em]\lim_{n\to\infty}d_n=-\infty\end{gather*}
が成り立つとします。

数列の和の極限

\begin{gather*}\large\lim_{n\to\infty}\bigl(a_n +b_n\bigr)=\infty\\[1em]\large\lim_{n\to\infty}\bigl(c_n +d_n\bigr)=-\infty\end{gather*}

数列の差の極限

\begin{gather*}\large\lim_{n\to\infty}\bigl(a_n -c_n\bigr)=\infty\\[1em]\large\lim_{n\to\infty}\bigl(d_n -b_n\bigr)=-\infty\end{gather*}

数列の積の極限

\begin{gather*}\large\lim_{n\to\infty}a_n b_n=\infty\\[1em]\large\lim_{n\to\infty}b_n c_n=-\infty\\[1em]\large\lim_{n\to\infty}c_n d_n=\infty\end{gather*}

なぜこれらが成り立つのでしょうか?


準備

 $\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\infty$は、数列の正の無限大に発散の定義より
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N_a$が存在して、$n>N_a$を満たすすべての$n$において$a_n>K$が成り立つ。
と書け、$\displaystyle\lim_{n\to\infty}b_n=\infty$も同様に
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N_b$が存在して、$n>N_b$を満たすすべての$n$において$b_n>K$が成り立つ。
となります。
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}c_n=-\infty$は、数列の負の無限大に発散の定義より
任意の負の数$L$に対し、ある自然数$N_c$が存在して、$n>N_c$を満たすすべての$n$において$c_n<L$が成り立つ。
と書けますが、$L=-K$により任意の負の数$L$が決まっているとすると
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N_c$が存在して、$n>N_c$を満たすすべての$n$において$c_n<-K$が成り立つ。
と書くことができます。
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}d_n=-\infty$も同様に
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N_d$が存在して、$n>N_d$を満たすすべての$n$において$d_n<-K$が成り立つ。
と書けます。
このとき、$K$に対応する自然数はより大きいものに選び直せるので、各$K$に対応する$N_a, N_b,$ $N_c, N_d$のうち最大のものを$N$とすれば、共通の自然数$N$をもちいて
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において
\[a_n>K\ かつ\ b_n>K\ かつ\ c_n<-K\ かつ\ d_n<-K\]
とすることができます。

数列の和の極限

$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\bigl(a_n +b_n\bigr)=\infty$

 $\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\infty, \lim_{n\to\infty}b_n=\infty$より、
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在し、$n>N$を満たすすべての$n$において
\[a_n>K\ かつ\ b_n>K\]
が成り立ちます。
この$n$において、上の2式の辺々を加えると
\[a_n +b_n>2K\]
となります。
したがって、数列$\{a_n +b_n\}$について
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$a_n +b_n>2K$が成り立つ。
という、「数列の収束・無限大に発散の定義と同値な条件②」で示した数列の正の無限大に発散の定義と同値な条件を満たしているため、
\[\large\lim_{n\to\infty}\bigl(a_n +b_n\bigr)=\infty\]
が成り立つことがわかります。

$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\bigl(c_n +d_n\bigr)=-\infty$

 $\displaystyle\lim_{n\to\infty}c_n=-\infty, \lim_{n\to\infty}d_n=-\infty$より、
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在し、$n>N$を満たすすべての$n$において
\[c_n<-K\ かつ\ d_n<-K\]
が成り立ちます。
この$n$において、上の2式の辺々を加えると
\[c_n +d_n<-2K\]
となります。
したがって、数列$\{c_n +d_n\}$について
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$c_n +d_n<-2K$が成り立つ。
となり、これは「数列の収束・無限大に発散の定義と同値な条件②」で示した数列の負の無限大に発散の定義と同値な条件を満たしているため、
\[\large\lim_{n\to\infty}\bigl(c_n +d_n\bigr)=-\infty\]
が成り立つことがわかります。

 数列$\{a_n +c_n\}$など、互いに逆向きの無限大に発散する数列の和の極限は定まりません。
例えば、
  • $a_n=n, c_n=-n+2$のとき、$a_n +c_n=2$なので、$2$に収束します。
  • $a_n=2n, c_n=-n+2$のとき、$a_n +c_n=n+2$なので、正の無限大に発散します。
  • $b_n=n, d_n=-2n+3$のとき、$b_n +d_n=-n+3$なので、負の無限大に発散します。
  • $b_n=n+(-1)^n, d_n=-n$のとき、$b_n +d_n=(-1)^n$なので、振動します。
このように、数列によって収束したり、正・負の無限大に発散したり、振動したりします。

$a_n +c_n$のように極限が定まらない式の形を不定形といいます。
これらは極限の記号をもちいて表すと$\infty-\infty$や$-\infty+\infty$という形になり、総じて$\infty-\infty$型の不定形といいます。


数列の差の極限

$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\bigl(a_n -c_n\bigr)=\infty$

 $\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\infty, \lim_{n\to\infty}c_n=-\infty$より、
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在し、$n>N$を満たすすべての$n$において
\[a_n>K\ かつ\ c_n<-K\]
が成り立ちます。
この$n$において、
\[a_n>K\ かつ\ -c_n>K\]
とでき、この2式の辺々を加えると
\[a_n -c_n>2K\]
となります。
したがって、数列$\{a_n -c_n\}$について
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$a_n -c_n>2K$が成り立つ。
という、「数列の収束・無限大に発散の定義と同値な条件②」で示した数列の正の無限大に発散の定義と同値な条件を満たしているため、
\[\large\lim_{n\to\infty}\bigl(a_n -c_n\bigr)=\infty\]
が成り立つことがわかります。

$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\bigl(d_n -b_n\bigr)=-\infty$

 $\displaystyle\lim_{n\to\infty}b_n=\infty, \lim_{n\to\infty}d_n=-\infty$より、
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在し、$n>N$を満たすすべての$n$において
\[b_n>K\ かつ\ d_n<-K\]
が成り立ちます。
この$n$において、
\[b_n>K\ かつ\ -d_n>K\]
とでき、この2式の辺々を加えると
\begin{align*}b_n -d_n&>2K\\[0.5em]d_n -b_n&<-2K\end{align*}
となります。
したがって、数列$\{d_n -b_n\}$について
任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在して、$n>N$を満たすすべての$n$において$d_n -b_n<-2K$が成り立つ。
となり、これは「数列の収束・無限大に発散の定義と同値な条件②」で示した数列の負の無限大に発散の定義と同値な条件を満たしているため、
\[\large\lim_{n\to\infty}\bigl(d_n -b_n\bigr)=-\infty\]
が成り立つことがわかります。

 数列$\{a_n -b_n\}$など、同じ方向の無限大に発散する数列同士の差も不定形となります。
例えば、
  • $a_n=n, b_n=n+2$のとき、$a_n -b_n=-2$なので、$-2$に収束します。
  • $a_n=2n, b_n=n+2$のとき、$a_n -b_n=n-2$なので、正の無限大に発散します。
  • $c_n=-2n-2, d_n=-n$のとき、$c_n -d_n=-n-2$なので、負の無限大に発散します。
  • $c_n=-n-(-1)^n, d_n=-n$のとき、$c_n -d_n=-(-1)^n$なので、振動します。
このように、数列によって収束したり、正・負の無限大に発散したり、振動したりします。
これも$\infty-\infty$型の不定形となります。

数列の積の極限

$\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n b_n=\infty$

 $\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\infty, \lim_{n\to\infty}b_n=\infty$とは、「数列の収束・無限大に発散の定義と同値な条件①」で示した数列の正の無限大に発散の定義と同値な条件より
$K>1$を満たす任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在し、$n>N$を満たすすべての$n$において
\[a_n>K\ かつ\ b_n>K\]
が成り立ちます。
この$n$において、上の2式の辺々を掛けると、$a_n, b_n, K$はともに正なので
\begin{equation}a_n b_n>K^2\end{equation}
となります。
ここで、$K>1$の両辺に$K$を掛けると、
\begin{equation}K^2>K\end{equation}
となります。
$(1), (2)$より
\begin{align*}a_n b_n>K^2&>K\\[0.5em]a_n b_n&>K\end{align*}
となります。
したがって、数列$\{a_n b_n\}$について
$K>1$を満たす任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在し、$n>N$を満たすすべての$n$において$a_n b_n>K$が成り立つ。
という、「数列の収束・無限大に発散の定義と同値な条件①」で示した数列の正の無限大に発散の定義と同値な条件を満たしているため、
\[\large\lim_{n\to\infty}a_n b_n=\infty\]
が成り立つことがわかります。

$\displaystyle\lim_{n\to\infty}b_n c_n=-\infty$

 $\displaystyle\lim_{n\to\infty}b_n=\infty, \lim_{n\to\infty}c_n=-\infty$とは、「数列の収束・無限大に発散の定義と同値な条件①」で示した数列の正・負の無限大に発散の定義と同値な条件より
$K>1$を満たす任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在し、$n>N$を満たすすべての$n$において
\[b_n>K\ かつ\ c_n<-K\]
が成り立ちます。
この$n$において、
\[b_n>K\ かつ\ -c_n>K\]
とでき、上の2式の辺々を掛けると、$b_n, -c_n, K$はともに正なので
\begin{equation}-b_n c_n>K^2\end{equation}
となります。
$(2), (3)$より
\begin{align*}-b_n c_n>K^2&>K\\[0.5em]-b_n c_n&>K\\[0.5em]b_n c_n&<-K\end{align*}
となります。
したがって、数列$\{b_n c_n\}$について
$K>1$を満たす任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在し、$n>N$を満たすすべての$n$において$b_n c_n<-K$が成り立つ。
となり、これは「数列の収束・無限大に発散の定義と同値な条件①」で示した数列の負の無限大に発散の定義と同値な条件を満たしているため、
\[\large\lim_{n\to\infty}b_n c_n=-\infty\]
が成り立つことがわかります。

$\displaystyle\lim_{n\to\infty}c_n d_n=\infty$

 $\displaystyle\lim_{n\to\infty}c_n=-\infty, \lim_{n\to\infty}d_n=-\infty$とは、「数列の収束・無限大に発散の定義と同値な条件①」で示した数列の正の無限大に発散の定義と同値な条件より
$K>1$を満たす任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在し、$n>N$を満たすすべての$n$において
\[c_n<-K\ かつ\ d_n<-K\]
が成り立ちます。
この$n$において、
\[-c_n>K\ かつ\ -d_n>K\]
とでき、上の2式の辺々を掛けると、$-c_n, -d_n, K$はともに正なので
\begin{equation}c_n d_n>K^2\end{equation}
となります。
$(2), (4)$より
\begin{align*}c_n d_n>K^2&>K\\[0.5em]c_n d_n&>K\end{align*}
となります。
したがって、数列$\{c_n d_n\}$について
$K>1$を満たす任意の正の数$K$に対し、ある自然数$N$が存在し、$n>N$を満たすすべての$n$において$c_n d_n>K$が成り立つ。
という、「数列の収束・無限大に発散の定義と同値な条件①」で示した数列の正の無限大に発散の定義と同値な条件を満たしているため、
\[\large\lim_{n\to\infty}c_n d_n=\infty\]
が成り立つことがわかります。

数列の商の極限

 数列$\left\{\dfrac{a_n}{b_n}\right\}$など、無限大に発散する数列同士の商は不定形となります。
例えば、
  • $a_n=3n, b_n=n$のとき、$\dfrac{a_n}{b_n}=3$なので、$3$に収束します。
  • $a_n=n^2, b_n=n$のとき、$\dfrac{a_n}{b_n}=n$なので、正の無限大に発散します。
  • $c_n=-n^3, b_n=n$のとき、$\dfrac{c_n}{b_n}=-n^2$なので、負の無限大に発散します。
  • $c_n=n\bigl\{-2+(-1)^n\bigr\}, b_n=n$のとき、$\dfrac{c_n}{b_n}=-2+(-1)^n$なので、振動します。
このように、数列によって収束したり、正・負の無限大に発散したり、振動したりします。
これらは極限の記号をもちいて表すと$\dfrac{\infty}{\infty}, \dfrac{-\infty}{\infty},$ $\dfrac{\infty}{-\infty},\dfrac{-\infty}{-\infty}$という形になり、総じて$\dfrac{\infty}{\infty}$型の不定形といいます。

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