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2023年7月31日

三角形の外心と垂心の関係

  三角形の外心と垂心には次のような性質があります。

頂点から垂心までの距離と対辺から外心までの距離の関係
「三角形のある頂点から垂心までの距離は、その対辺から外心までの距離の2倍である。」

上図のように頂点$A$とその対辺$BC$に着目した場合は、頂点$A$から垂心$H$までの距離$AH$と外心$O$から対辺$BC$までの距離$OM$の間には$AH=2OM$が成り立ちます。
これが成り立つことを鋭角三角形、直角三角形、鈍角三角形それぞれの場合にわけて確かめてみます。


鋭角三角形の場合

鋭角三角形の場合の垂心と外心の関係
 鋭角三角形$ABC$の垂心を$H$と外心を$O$とします。また、外接円の半径を$R$とします。
頂点$A$とその対辺$BC$に着目した場合を考えます。

 外心$O$から辺$BC$までの距離は$O$から$BC$へおろした垂線の長さとなります。すなわち、その垂線の足を$M$とすると、線分$OM$の長さとなります。

ここで、$△OBC$に着目すると内角$∠BOC$は弧$BC$に対する中心角であることがわかります。また、弧$BC$に対する円周角は$∠A$なので、円周角の定理より$∠BOC=2∠A$となります。

関連:円周角の定理 なぜ成り立つのか?

さらに$△OBC$は$BO=CO=R$より二等辺三角形なので、$OM$は辺$BC$の垂直二等分線かつ$∠BOC$の二等分線であるとわかります。
このことから、点$M$は辺$BC$の中点であり、$∠BOM=∠A$となることがわかります。

$△OBM$に着目すると三角比より
\[OM=BO\cos∠BOM=R\cos∠A\]
となります。

したがって、$AH=2OM$が成り立つことがわかります。
これは頂点$B$とその対辺$AC$、頂点$C$とその対辺$AB$それぞれに着目した場合も同様に成り立つことを確かめることができます。


直角三角形の場合

直角三角形の垂心と外心
 $∠A=90°$である直角三角形の垂心$H$は頂点$A$と重なり、外心$O$は斜辺$BC$の中点$M$と重なります。
したがって、頂点$A$とその対辺$BC$に着目した場合、頂点$A$から垂心$H$までの距離も外心$O$から辺$BC$までの距離も$0$となるため、$AH=2OM$が成り立っているといえます。

直角以外の頂点に着目したときの垂心と外心の関係
 頂点$B$とその対辺$AC$に着目した場合、頂点$B$から垂心$H$までの距離は、直角三角形$ABC$の垂心$H$と頂点$A$が一致していることから辺$AB$の長さに等しいです。

外心$O$辺$AC$までの距離は、$O$から$AC$へおろした垂線の足を$P$とすると線分$OP$の長さとなります。これは相似を利用して求めます。

$△ABC$と$△POC$に着目すると、$∠BAC=∠OPC=90°$、共通の角$∠ACB=∠PCO$より2組の角がそれぞれ等しいので相似であることがわかります。
その相似比は$BC:OC=2:1$となります。また、$AB:PO=2:1$でもあるので
\begin{align*}AB&=2PO\\[0.5em]\therefore&AB=2OP\end{align*}
となり、成り立つことがわかります。
頂点$C$とその対辺$AB$に着目した場合も同様に成り立つことを確かめることができます。

鈍角三角形の場合

 $∠A$が鈍角である鈍角三角形$ABC$について考えます。
鈍角三角形の場合の垂心と外心の関係
鈍角三角形$ABC$の垂心$H$と外心$O$はともに三角形の外部に存在します。
頂点$A$とその対辺$BC$に着目した場合を考えます。
 外心$O$から辺$BC$までの距離は、$O$から$BC$へおろした垂線の足を$M$とすると線分$OM$の長さとなります。
$△OBC$に着目すると内角でないほうの$∠BOC$は点$A$を含まないほうの弧$BC$の中心角で、大きさは$∠BOC=2∠A$となります。
すると、内角$∠BOC$の大きさは$∠BOC_{(内角)}=360°-2∠A$となります。

さらに$△OBC$は$BO=CO=R$より二等辺三角形なので、$OM$は辺$BC$の垂直二等分線かつ$∠BOC_{(内角)}$の二等分線であるとわかります。
このことから、点$M$は辺$BC$の中点であり、$∠BOM=180°-∠A$となることがわかります。

$△OBM$に着目すると三角比より
\begin{align*}OM&=BO\cos∠BOM\\[0.5em]&=R\cos(180°-∠A)\\[0.5em]&=-R\cos∠A&\bigl(\because \cos(180°-\theta)=-\cos\theta\bigr)\end{align*}
となります。

したがって、$AH=2OM$が成り立つことがわかります。
これは頂点$B$とその対辺$AC$、頂点$C$とその対辺$AB$それぞれに着目した場合も同様に成り立つことを確かめることができます。


 以上より、いずれの三角形の場合でも
「三角形のある頂点から垂心までの距離は、その頂点の対辺から外心までの距離の2倍である。」
が成り立つことがわかります。

二等辺三角形の外心と垂心

二等辺三角形の垂心と外心
 また、特定の場合の性質として「二等辺三角形の外心と垂心は底辺の垂直二等分線上に存在する」というものがあります。
これは底辺の垂直二等分線が外心が存在している「辺の垂直二等分線」であり、垂心が存在している「頂点から対辺へおろした垂線」でもあるためです。

 では、二等辺三角形の外心と垂心が重なる条件は何でしょうか?

上図の$∠B=∠C$である二等辺三角形$ABC$の外心と垂心が重なる可能性のあるのは、$∠A$が鋭角のときだけです。
$∠A=90°$のときは外心は辺$BC$の中点$M$と重なり、垂心は頂点$A$と重なっているため、外心と垂心が重なることはありません。
また、$∠A$が鈍角のとき、頂点$A$を通る中線の$A$の側を延長した先に垂心が、辺$BC$の中点$M$の側を延長した先に外心があるため、このときも外心と垂心は重なりません。

底辺の垂直二等分線の各線分の長さ
$∠A$が鋭角のとき、頂点$A$から垂心$H$までの距離$AH$は$2R\cos∠A$、外心$O$から辺$BC$までの距離$OM$は$R\cos∠A$となります。また、辺$BC$の垂直二等分線$AM$の長さは鋭角三角形の3本の垂線の性質より$2R\sin∠B\sin∠C$となります。
外心と垂心が重なるならば、$AH+OM=AM$が成り立つので
\begin{align*}2R\cos∠A+R\cos∠A&=2R\sin∠B\sin∠C\\[0.5em]3\cos∠A&=2\sin∠B\sin∠C\\[0.5em]3\cos\bigl\{180°-(∠B+∠C)\bigr\}&=2\sin∠B\sin∠C&&\bigl(\because∠A=180°-(∠B+∠C)\bigr)\\[0.5em]3\cos(180°-2∠B)&=2\sin^2∠B&&(\because∠B=∠C)\\[0.5em]-3\cos2∠B&=2\sin^2∠B\\[0.5em]-3(1-2\sin^2∠B)&=2\sin^2∠B&&(\because\cos2\theta=1-2\sin^2\theta)\\[0.5em]4\sin^2∠B-3&=0\\[0.5em]\sin^2∠B&=\frac{3}{4}\\[0.5em]\sin∠B&=\pm\frac{\sqrt{3}}{2}\end{align*}
ここで、二等辺三角形の底角は頂角に関わらず常に鋭角なので$\sin∠B>0$となります。
したがって、
\begin{align*}\sin∠B&=\frac{\sqrt{3}}{2}\\[0.5em]∠B&=60°&(\because 0°<∠B<90°)\end{align*}
$∠B=∠C=60°$なので$∠A=60°$であり、外心と垂心が一致する三角形は正三角形であることがわかります。

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