三角形の外心と垂心には次のような性質があります。
「三角形のある頂点から垂心までの距離は、その対辺から外心までの距離の2倍である。」
上図のように頂点AAとその対辺BCBCに着目した場合は、頂点AAから垂心HHまでの距離AHAHと外心OOから対辺BCBCまでの距離OMOMの間にはAH=2OMAH=2OMが成り立ちます。
これが成り立つことを鋭角三角形、直角三角形、鈍角三角形それぞれの場合にわけて確かめてみます。
鋭角三角形の場合
鋭角三角形
ABCABCの垂心を
HHと外心を
OOとします。また、外接円の半径を
RRとします。
頂点AAとその対辺BCBCに着目した場合を考えます。
頂点
AAから垂心
HHまでの距離、すなわち線分
AHAHの長さは
鋭角三角形の3本の垂線の性質より
AH=2Rcos∠AAH=2Rcos∠A
となります。
外心Oから辺BCまでの距離はOからBCへおろした垂線の長さとなります。すなわち、その垂線の足をMとすると、線分OMの長さとなります。
ここで、
△OBCに着目すると内角
∠BOCは弧
BCに対する中心角であることがわかります。また、弧
BCに対する円周角は
∠Aなので、円周角の定理より
∠BOC=2∠Aとなります。
さらに△OBCはBO=CO=Rより二等辺三角形なので、OMは辺BCの垂直二等分線かつ∠BOCの二等分線であるとわかります。
このことから、点Mは辺BCの中点であり、∠BOM=∠Aとなることがわかります。
△OBMに着目すると三角比より
OM=BOcos∠BOM=Rcos∠A
となります。
したがって、AH=2OMが成り立つことがわかります。
これは頂点Bとその対辺AC、頂点Cとその対辺ABそれぞれに着目した場合も同様に成り立つことを確かめることができます。
直角三角形の場合
∠A=90°である直角三角形の垂心
Hは頂点
Aと重なり、外心
Oは斜辺
BCの中点
Mと重なります。
したがって、頂点Aとその対辺BCに着目した場合、頂点Aから垂心Hまでの距離も外心Oから辺BCまでの距離も0となるため、AH=2OMが成り立っているといえます。
頂点
Bとその対辺
ACに着目した場合、頂点
Bから垂心
Hまでの距離は、直角三角形
ABCの垂心
Hと頂点
Aが一致していることから辺
ABの長さに等しいです。
外心O辺ACまでの距離は、OからACへおろした垂線の足をPとすると線分OPの長さとなります。これは相似を利用して求めます。
△ABCと△POCに着目すると、∠BAC=∠OPC=90°、共通の角∠ACB=∠PCOより2組の角がそれぞれ等しいので相似であることがわかります。
その相似比は
BC:OC=2:1となります。また、
AB:PO=2:1でもあるので
AB=2PO∴AB=2OP
となり、成り立つことがわかります。
頂点Cとその対辺ABに着目した場合も同様に成り立つことを確かめることができます。
鈍角三角形の場合
∠Aが鈍角である鈍角三角形ABCについて考えます。
鈍角三角形
ABCの垂心
Hと外心
Oはともに三角形の外部に存在します。
頂点Aとその対辺BCに着目した場合を考えます。
外心Oから辺BCまでの距離は、OからBCへおろした垂線の足をMとすると線分OMの長さとなります。
△OBCに着目すると内角でないほうの∠BOCは点Aを含まないほうの弧BCの中心角で、大きさは∠BOC=2∠Aとなります。
すると、内角∠BOCの大きさは∠BOC(内角)=360°−2∠Aとなります。
さらに△OBCはBO=CO=Rより二等辺三角形なので、OMは辺BCの垂直二等分線かつ∠BOC(内角)の二等分線であるとわかります。
このことから、点Mは辺BCの中点であり、∠BOM=180°−∠Aとなることがわかります。
△OBMに着目すると三角比より
OM=BOcos∠BOM=Rcos(180°−∠A)=−Rcos∠A(∵cos(180°−θ)=−cosθ)
となります。
したがって、AH=2OMが成り立つことがわかります。
これは頂点Bとその対辺AC、頂点Cとその対辺ABそれぞれに着目した場合も同様に成り立つことを確かめることができます。
以上より、いずれの三角形の場合でも
「三角形のある頂点から垂心までの距離は、その頂点の対辺から外心までの距離の2倍である。」
が成り立つことがわかります。
二等辺三角形の外心と垂心
また、特定の場合の性質として「二等辺三角形の外心と垂心は底辺の垂直二等分線上に存在する」というものがあります。
これは底辺の垂直二等分線が外心が存在している「辺の垂直二等分線」であり、垂心が存在している「頂点から対辺へおろした垂線」でもあるためです。
では、二等辺三角形の外心と垂心が重なる条件は何でしょうか?
上図の∠B=∠Cである二等辺三角形ABCの外心と垂心が重なる可能性のあるのは、∠Aが鋭角のときだけです。
∠A=90°のときは外心は辺BCの中点Mと重なり、垂心は頂点Aと重なっているため、外心と垂心が重なることはありません。
また、∠Aが鈍角のとき、頂点Aを通る中線のAの側を延長した先に垂心が、辺BCの中点Mの側を延長した先に外心があるため、このときも外心と垂心は重なりません。
∠Aが鋭角のとき、頂点
Aから垂心
Hまでの距離
AHは
2Rcos∠A、外心
Oから辺
BCまでの距離
OMは
Rcos∠Aとなります。また、辺
BCの垂直二等分線
AMの長さは
鋭角三角形の3本の垂線の性質より
2Rsin∠Bsin∠Cとなります。
外心と垂心が重なるならば、
AH+OM=AMが成り立つので
2Rcos∠A+Rcos∠A=2Rsin∠Bsin∠C3cos∠A=2sin∠Bsin∠C3cos{180°−(∠B+∠C)}=2sin∠Bsin∠C(∵∠A=180°−(∠B+∠C))3cos(180°−2∠B)=2sin2∠B(∵∠B=∠C)−3cos2∠B=2sin2∠B−3(1−2sin2∠B)=2sin2∠B(∵cos2θ=1−2sin2θ)4sin2∠B-3=0sin2∠B=34sin∠B=±√32
ここで、二等辺三角形の底角は頂角に関わらず常に鋭角なので
sin∠B>0となります。
したがって、
sin∠B=√32∠B=60°(∵0°<∠B<90°)
∠B=∠C=60°なので∠A=60°であり、外心と垂心が一致する三角形は正三角形であることがわかります。