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2023年7月13日

約分可能な有理関数のグラフは?

「次の関数のグラフの概形を描け。

(1)$\large y=\dfrac{x^2}{x}$

(2)$\large y=\dfrac{(2x+3)(x+1)(x-2)}{x+1}$

(3)$\large y=\dfrac{x^3+4x^2-11x-30}{x^2-3x-10}$」


(1)$y=\tfrac{x^2}{x}$

 右辺を約分すると
\[\frac{x^2}{x}=x\tag{*}\]
となります。
だから、$y=x$のグラフを描けば正解……ではありません。

$y=x$のグラフとほぼ同じなのですが、唯一違う箇所が存在します。
それは$x=0$における点が存在しないことです。これは関数の定義域は元々の式の形によることと分数の分母は$0$になると値が定義できないことが理由となります。
$\dfrac{x^2}{x}$は分母が$0$になる$x=0$のときの値が定義できません。なので、$y=\dfrac{x^2}{x}$の定義域は$x=0$を除くすべての実数となります。これは約分後の$y=x$の定義域としても引き継がれています。
$(*)$も任意の$x$で成り立つものではなく、明記されていないものの分母が$0$になる$x=0$以外で成り立つという条件がついています。

$y=x$において$x=0$における点とは$(0,0)$すなわち原点のことです。
したがって、$y=\dfrac{x^2}{x}$のグラフは$y=x$のグラフから原点を除いた以下のようなものとなります。
y=x^2/xのグラフ

(2)$y=\tfrac{(2x+3)(x+1)(x-2)}{x+1}$

 分母が$0$になる条件は$x+1=0$、すなわち$x=-1$です。この$x$における点は存在しません。
右辺を約分すると
\[\frac{(2x+3)(x+1)(x-2)}{x+1}=(2x+3)(x-2)\]
となります。
$y=(2x+3)(x-2)$において$x=-1$のとき$y=-3$なので、$y=\dfrac{(2x+3)(x+1)(x-2)}{x+1}$のグラフには点$(-1,-3)$が存在しません。

$y=(2x+3)(x-2)$が$y=0$となるとき、$x=-\dfrac{3}{2},2$なので、$\left(-\dfrac{3}{2},0\right),(2,0)$がx軸との共有点となります。
また、$x=0$のとき$y=-6$なので、$(0,-6)$がy軸との共有点となります。

右辺を展開して平方完成すると
\begin{align*}(2x+3)(x-2)&=2x^2-x-6\\[0.5em]&=2\left(x-\frac{1}{4}\right)^2-\frac{49}{8}\end{align*}
となるので、頂点の座標は$\left(\dfrac{1}{4},\dfrac{49}{8}\right)$であるとわかります。
したがって、$y=\dfrac{(2x+3)(x+1)(x-2)}{x+1}$のグラフは以下のようになります。
y=(2x+3)(x+1)(x-2)/(x+1)のグラフ

(3)$y=\tfrac{x^3+4x^2-11x-30}{x^2-3x-10}$

 分母と分子をそれぞれ因数分解すると
\begin{align*}x^3+4x^2-11x-30&=(x+5)(x+2)(x-3)\\[0.5em]x^2-3x-10&=(x+2)(x-5)\end{align*}
となるので、分母が$0$になる条件$(x+2)(x-5)=0$すなわち$x=-2,5$における点は存在しません。
右辺を約分すると
\[\frac{(x+5)(x+2)(x-3)}{(x+2)(x-5)}=\frac{(x+5)(x-3)}{x-5}\]
となります。
$y=\dfrac{(x+5)(x-3)}{x-5}$において$x=-2$のとき$y=\dfrac{15}{7}$なので、$y=\dfrac{x^3+4x^2-11x-30}{x^2-3x-10}$のグラフには点$\left(-2,\dfrac{15}{7}\right)$が存在しません。$x=5$については後で触れます。

$y=\dfrac{(x+5)(x-3)}{x-5}$が$y=0$となるとき、これは分子が$0$になるときなので$(x+5)(x-3)=0$すなわち$x=-5,3$です。したがって、$(-5,0),(3,0)$がx軸との共有点となります。
また、$x=0$のとき$y=3$なので、$(0,3)$がy軸との共有点となります。

$y=\dfrac{(x+5)(x-3)}{x-5}$の導関数を求めると
\begin{align*}y'&=\frac{\bigl\{(x+5)(x-3)\bigr\}'(x-5)-(x+5)(x-3)(x-5)'}{(x-5)^2}\\[0.5em]&=\frac{\bigl\{(x+5)'(x-3)+(x+5)(x-3)'\bigr\}(x-5)-(x+5)(x-3)}{(x-5)^2}\\[0.5em]&=\frac{(2x+2)(x-5)-(x+5)(x-3)}{(x-5)^2}\\[0.5em]&=\frac{x^2-10x+5}{x^2-10x+25}\\[0.5em]&=\frac{(x^2-10x+25)-20}{x^2-10x+25}\\[0.5em]&=\frac{(x-5)^2-20}{(x-5)^2}\tag{*}\\[0.5em]&=1-\frac{20}{(x-5)^2}\end{align*}
となります。
$(*)$より$y'=0$となるのは、分子が$0$になるときなので
\begin{align*}(x-5)^2-20&=0\\[0.5em]\{(x-5)+2\sqrt{5}\}\{(x-5)-2\sqrt{5}\}&=0\\[0.5em]\{x-(5-2\sqrt{5})\}\{x-(5+2\sqrt{5})\}&=0\\[0.5em]x&=5\pm2\sqrt{5}\end{align*}
のときです。
$x=5-2\sqrt{5}$のとき$y=12-4\sqrt{5}$、$x=5+2\sqrt{5}$のとき$y=12+4\sqrt{5}$なので、これらがそれぞれ極値となります。
$y'>0$となるのは
\begin{align*}(x-5)^2-20&>0\\[0.5em]\{x-(5-2\sqrt{5})\}\{x-(5+2\sqrt{5})\}&>0\\[0.5em]x<5-2\sqrt{5},5+2\sqrt{5}<x\end{align*}
のときです。このとき$y$は増加します。
$y'<0$となるのは
\begin{align*}(x-5)^2-20&<0\\[0.5em]\{x-(5-2\sqrt{5})\}\{x-(5+2\sqrt{5})\}&<0\\[0.5em]5-2\sqrt{5}<x<5+2\sqrt{5}\end{align*}
ただし、$y,y'$ともに$x=5$では定義されていないので$5-2\sqrt{5}<x<5,5<x<5+2\sqrt{5}$となります。このとき$y$は減少します。
したがって、$y=\dfrac{(x+5)(x-3)}{x-5}$の増減表は以下のようになります。
y=(x+5)(x-3)/(x-5)の増減表
増減表より$12-4\sqrt{5}$は極大値、$12+4\sqrt{5}$は極小値であることがわかります。
また、$y=\dfrac{(x+5)(x-3)}{x-5}$を変形し
\begin{align*}y&=\frac{x^2+2x-15}{x-5}\\[0.5em]&=\frac{(x^2-5x)+7x-15}{x-5}\\[0.5em]&=\frac{x(x-5)+(7x-35)+20}{x-5}\\[0.5em]&=\frac{x(x-5)+7(x-5)+20}{x-5}\\[0.5em]&=\frac{(x+7)(x-5)+20}{x-5}\\[0.5em]&=x+7+\frac{20}{x-5}\end{align*}
とすると、漸近線は$y=x+7,x=5$であることがわかります。約分前後どちらの有理関数においても定義できない$x=5$は漸近線の方程式となります。
したがって、以上のことから$y=\dfrac{x^3+4x^2-11x-30}{x^2-3x-10}$のグラフは以下のようになります。
y=(x+5)(x+2)(x-3)/(x+2)(x-5)のグラフ

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