$△ABC$の辺$BC$上に点$P$をうち、線分$AP$を引くと
\[CP\cdot AB^2+BP\cdot AC^2=BC\bigl(AP^2+BP\cdot CP\bigr)\]
という関係が成り立ちます。この関係のことをスチュワートの定理といいます。
なぜこれが成り立つといえるのでしょうか?
余弦定理を利用して成り立つことを確かめます。
$△ABC$の辺$BC$上に点$P$をうち、$∠APB=θ$とします。
これを$\cosθ$について解くと
\begin{align*}2AP\cdot
BP\cos\theta&=AP^2+BP^2-AB^2\\[0.5em]\cos\theta&=\frac{AP^2+BP^2-AB^2}{2AP\cdot
BP}\tag1\end{align*}
となります。
次に$△ACP$に着目すると$∠APB=θ$より$∠APC=180°-θ$なので、余弦定理より
\[AC^2=AP^2+CP^2-2AP\cdot CP\cos(180°-\theta)\]
が成り立ちます。
また、三角関数の性質より$\cos(180°-θ)=-\cosθ$なので
\begin{align*}AC^2&=AP^2+CP^2-2AP\cdot
CP(-\cos\theta)\\[0.5em]&=AP^2+CP^2+2AP\cdot
CP\cos\theta\end{align*}
となり、$\cosθ$について解くと
\begin{align*}2AP\cdot
CP\cos\theta&=AC^2-AP^2-CP^2\\[0.5em]\cos\theta&=\frac{AC^2-AP^2-CP^2}{2AP\cdot
CP}\tag2\end{align*}
となります。
$(1),(2)$より
\begin{align*}\frac{AP^2+BP^2-AB^2}{2AP\cdot
BP}&=\frac{AC^2-AP^2-CP^2}{2AP\cdot
CP}\\[0.5em]\frac{AP^2+BP^2-AB^2}{BP}&=\frac{AC^2-AP^2-CP^2}{CP}\\[0.5em]CP\bigl(AP^2+BP^2-AB^2\bigr)&=BP\bigl(AC^2-AP^2-CP^2\bigr)\\[0.5em]CP\cdot
AB^2+BP\cdot AC^2&=(BP+CP)AP^2+BP\cdot
CP(BP+CP)\\[0.5em]&=(BP+CP)\bigl(AP^2+BP\cdot CP\bigr)\end{align*}
$BP+CP=BC$より
\[CP\cdot AB^2+BP\cdot AC^2=BC\bigl(AP^2+BP\cdot CP\bigr)\]
となり、スチュワートの定理が成り立つことがわかります。
点$P$が辺$BC$を$m:n$に内分すると考えると$BP=\dfrac{m}{m+n}BC,CP=\dfrac{n}{m+n}BC$となるので、スチュワートの定理の式は以下のように変形できます。
\begin{align*}\frac{n}{m+n}BC\cdot AB^2+\frac{m}{m+n}BC\cdot
AC^2&=BC\left\{AP^2+\frac{mn}{(m+n)^2}BC^2\right\}\end{align*}
両辺に$\dfrac{m+n}{BC}$を掛ければ
\[nAB^2+mAC^2=(m+n)AP^2+\frac{mn}{m+n}BC^2\]
点$P$が辺$BC$の中点であるとき、$BP=CP,BC=2BP$となるためスチュワートの定理の式は
\begin{align*}BP\cdot AB^2+BP\cdot
AC^2&=2BP\bigl(AP^2+BP^2\bigr)\\[0.5em]\therefore&AB^2+AC^2=2\bigl(AP^2+BP^2\bigr)\end{align*}
となり、中線定理の式となります。
線分$AP$が$∠BAC$の二等分線であるとき、スチュワートの定理から線分$AP$の長さを求める式をつくることができます。
三角形の内角の二等分線と比の性質より$BP:CP=AB:AC$が成り立ち、これを変形すると$CP\cdot
AB=BP\cdot AC$となります。
スチュワートの定理の式を変形します。
\begin{align*}CP\cdot AB^2+BP\cdot AC^2&=BC\cdot AP^2+BC\cdot BP\cdot
CP\\[0.5em]BC\cdot AP^2&=CP\cdot AB^2+BP\cdot AC^2-BC\cdot BP\cdot
CP\end{align*}
ここで、$CP\cdot AB=BP\cdot AC$より
\begin{align*}BC\cdot AP^2&=BP\cdot AB\cdot AC+CP\cdot AB\cdot
AC-BC\cdot BP\cdot CP\\[0.5em]&=(BP+CP)AB\cdot AC-BC\cdot BP\cdot
CP\end{align*}
$BP+CP=BC$より
\begin{align*}BC\cdot AP^2&=BC\cdot AB\cdot AC-BC\cdot BP\cdot
CP\\[0.5em]AP^2&=AB\cdot AC-BP\cdot CP\\[0.5em]AP&=\sqrt{AB\cdot
AC-BP\cdot CP}&(\because AP>0)\end{align*}
となります。
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