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2023年7月9日

「AさんとBさんは嘘つき」の否定は?

「Aさん、Bさん、Cさんの3人からそれぞれ以下のような話を聞くことができた。

A:Cさんは正直者です。
B:Aさんは嘘つきです。
C:AさんとBさんは嘘つきです。

3人のうち2人が嘘つきで1人だけが正直者であるとき、正直者であるのは誰か?」

このような問題でCさんが嘘つきであると仮定したとき、Cさんの発言内容からわかることは何でしょうか?


 先に言ってしまいますが、「AさんとBさんは正直者」ではありません。

「Aさんは嘘つき」という発言が嘘のとき、事実は「Aさんは正直者」となります。これらを比較すると「嘘つき」の部分が否定され「正直者」になっているので、「AさんとBさんは嘘つき」を否定する場合も同様に「嘘つき」の部分を否定すれば事実になる、と考えてしまうからと思われます。

しかし、嘘とは「事実でない事柄」のことです。なので、Cさんの発言が嘘であった場合に否定されるのは『「AさんとBさんは嘘つき」が事実であること』そのものとなります。

 ここで、AさんとBさんの正直者か嘘つきかの組み合わせは以下の4通りが考えられます。
タイプ Aさん Bさん
1 正直者 正直者
2 嘘つき 正直者
3 正直者 嘘つき
4 嘘つき 嘘つき
Cさんの発言内容はタイプ4の組み合わせであることを示しています。
Cさんが嘘つきであると仮定した場合、「AさんとBさんは嘘つき」が事実でなくなるということは、タイプ4の可能性が消えるだけでタイプ1、2、3の3つは依然として残ったままです。Cさんの嘘の発言内容からだけでは、残る3つのタイプのどれが事実かを確定することはできません。
したがって、「AさんとBさんは嘘つき」を否定するとタイプ1、2、3を総合した「AさんとBさんのうち最低1人が正直者」となります。

 「AさんとBさんは嘘つき」は「Aさんは嘘つきかつBさんは嘘つき」とも書けます。
するとこれの否定は、ド・モルガンの法則
\[\lnot(A\land B)=\lnot A\lor\lnot B\]
より「Aさんは嘘つきでない、またはBさんは嘘つきでない」であり、「AさんとBさんのうち最低1人が正直者」に等しい主張であることがわかります。

 このCさんの発言内容に対する認識の違いは上記の問題が解けるかどうかに大きく関わります。
Cさんの嘘の発言内容を誤った「AさんとBさんは正直者」でとらえた場合と正しい「AさんとBさんのうち最低1人が正直者」でとらえた場合とで解答にどのような差ができるかを見てみます。

「AさんとBさんは正直者」

 Cさんが嘘つきであると仮定したとき、発言内容より「AさんとBさんは正直者」となりますが、正直者は3人のうち1人だけなので矛盾します。
したがって、Cさんは正直者で確定します。
しかし、嘘つきであるはずのAさんは事実を話しているので、また矛盾が生じてしまいます。

つまり、Cさんが正直者でも嘘つきでも3人の発言をすり合わせたときに矛盾が生じるので、誰が正直者なのかがわかりません。

「AさんとBさんのうち最低1人が正直者」

 Cさんが嘘つきであると仮定したとき、発言内容より「AさんとBさんのうち最低1人が正直者」となります。これだけでは誰が正直者なのかがわからないので、もう1人の嘘つきを仮定します。

新たにBさんを嘘つきであると仮定すると、発言内容からAさんは正直者となります。
しかし、Aさんの発言内容とCさんが嘘つきであるという仮定が矛盾するので、Bさんが嘘つきという新たな仮定は誤りということになり、Bさんが正直者であると確定します。
すると、Aさんは嘘つきとなり、Aさんの発言内容と最初の仮定とは矛盾しなくなり、Aさんが嘘つき、Bさんが正直者という状態は「AさんとBさんのうち最低1人が正直者」とも矛盾しません。

したがって、AさんとCさんが嘘つきで、正直者はBさんというのが答えとなります。


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