円に内接・外接する正多角形を利用して、円周率や円周の公式を導く方法を考えてみます。
円に内接・外接する正多角形
円に内接する正多角形は、周の長さが円周より短い図形です。
一方、円に外接する正多角形は、周の長さが円周より長い図形です。
したがって、内接・外接正多角形と円の間には周の長さについて以下のような関係が常に成り立ちます。
\begin{equation}(内接正多角形の周)<(円周)<(外接正多角形の周)\end{equation}
この性質を利用してどのように円周率と円周の公式を導き出すのかというと、円の内接・外接正多角形の頂点の数を2倍ずつ増やしていくことで円に近づけていく方法をとります。
まずは、内接・外接正多角形の頂点の数を2倍にしたときの性質を考えます。
円に内接する正多角形
円に内接する正多角形の頂点の数を2倍にした場合を考えます。
これは、元の内接正多角形の頂点の数を$n$としたとき、新たに内接正$2n$角形を作図するということです。
内接正$2n$角形は元の内接正$n$角形を利用して次のように作図できます。
元の内接正$n$角形の1辺の垂直二等分線を引くと、この直線は円周と交わります。
この交点と垂直二等分線を引いた辺の両端の頂点を結びます。
これを元の内接正$n$角形のすべての辺で行えば、内接正$2n$角形が作図できます。
すなわち、元の内接正$n$角形の各辺に二等辺三角形を付け加えるようにして内接正$2n$角形をつくります。
このとき、三角形の2辺の和は残り1辺より長くなることから、元の内接正$n$角形の1辺の長さより新たに引いた内接正$2n$角形の2辺の長さの和のほうが長くなります。
したがって、内接正$2n$角形の周は元の内接正$n$角形の周より長くなります。
また、頂点の数を2倍ずつ増やしていくと、内接正多角形の周は長くなっていきます。
ただし、$(1)$の関係は常に成り立つので、内接正多角形の周の長さには円周という上限があることになります。
すなわち、頂点の数が増えると、内接正多角形は内側から円周に近づくような変化が起こります。
円に外接する正多角形
円に外接する正多角形の頂点の数を2倍にした場合を考えます。
これは、元の外接正多角形の頂点の数を$n$としたとき、新たに外接正$2n$角形を作図するということです。
外接正$2n$角形は元の外接正$n$角形を利用して次のように作図できます。
元の外接正$n$角形の頂点と円の中心を結ぶ線分を引き、円周との交点をとります。
この点を通る円の接線を引くと、元の外接正$n$角形と交わります。
これを元の外接正$n$角形のすべての頂点で行い、元の外接正$n$角形と円の接線の交点を結ぶと外接正$2n$角形が作図できます。
すなわち、元の外接正$n$角形の頂点の周辺を二等辺三角形の形に切り落とすようにして外接正$2n$角形をつくります。
このとき、三角形において1辺は他の2辺の和より短くなることから、切り落とされた元の外接正$n$角形の辺の長さの総和よりも、新たに外接正$2n$角形の辺として引いた線分の長さのほうが短くなります。
したがって、外接正$2n$角形の周は元の外接正$n$角形の周より短くなります。
また、頂点の数を2倍ずつ増やしていくと、外接正多角形の周は短くなっていきます。
ただし、$(1)$の関係は常に成り立つので、外接正多角形の周の長さには円周という下限があることになります。
すなわち、頂点の数が増えると、外接正多角形は外側から円周に近づくような変化が起こります。
これらの性質より、頂点の数を2倍ずつ増やしていくと、円の内接正多角形の周は長くなり続け、外接正多角形の周は短くなり続けます。
$(1)$より、これらの間には必ず円周の長さがあるため、円周の長さはこの2つの値に挟まれた値として求めることができます。
また、頂点の数が増えるほど範囲が狭まり、円周の長さをより正確に求めることができます。
では、上記の方法で直径$1$の円周の長さを求める工程を見てみます。
直径$1$の円の周の長さを求める
出発点としてもちいる正多角形は辺の長さを求めやすいものがよいので、その1つである正六角形から始めます。
円に内接・外接する正六角形の周の長さ
直径$1$(半径$\dfrac{1}{2}$)の円に内接・外接する正六角形を考え、それぞれの周の長さを求めます。
内接正六角形の周の長さ
内接正六角形の頂点と円の中心を結ぶと、合同な正三角形が6個できます。
これら正三角形の1辺の長さは半径に等しい$\dfrac{1}{2}$なので、内接正六角形の周の長さは$\mathbf{3}$であることがわかります。
外接正六角形の周の長さ
外接正六角形でも頂点と円の中心を結び、合同な正三角形を6個つくります。
これら正三角形の高さは半径に等しい$\dfrac{1}{2}$なので、$30°-60°-90°$の直角三角形の3辺の比より1辺の長さは$\dfrac{\sqrt{3}}{3}$となります。
したがって、外接正六角形の周の長さは$\mathbf{2\sqrt{3}}$であることがわかります。
以上より、$(1)$から
\[3<(円周)<2\sqrt{3}\]
小数に直せば
\[3<(円周)<3.4641\cdots\]
が成り立つことがわかり、直径$1$の円の周の長さがどのくらいなのかの最初の絞り込みができました。
この時点ではまだ精度は高くなく、直径$1$の円の周の長さは$3$より少し大きいことしかわかりません。
しかし、上述したように頂点の数を増やせば、より高い精度で円周の値を絞り込むことができます。
次は、頂点の数を2倍にした内接・外接正十二角形を考え、それぞれの周の長さを求めます。
円に内接・外接する正十二角形の周の長さ
内接正十二角形の周の長さ
元の内接正$n$角形を利用して内接正$2n$角形を作図する方法は、いわば元の内接正$n$角形に二等辺三角形を付け加える方法でした。
この付け加えられた二等辺三角形と三平方の定理を利用することで内接正$2n$角形、今回の場合は内接正十二角形の1辺の長さ、そして周の長さを求めることができます。
まずは、内接正六角形の1辺に着目します。
内接正六角形の1辺の両端をそれぞれ$\text{A},
\text{B}$とし、中点を$\text{M}$とします。
円の中心$\text{O}$から中点$\text{M}$を通る半直線を引き、円周との交点を$\text{C}$とします。
すると、$△\text{ABC}$が内接正十二角形を作図する際に内接正六角形に付け加えられた$\text{AC}=\text{BC}$である二等辺三角形であり、辺$\text{AC},
\text{BC}$は内接正十二角形の辺になります。
$△\text{OAB}$は1辺の長さが$\dfrac{1}{2}$である正三角形なので、$\text{AM}=\text{BM}=\dfrac{1}{4}$、$30°-60°-90°$の直角三角形の3辺の比より$\text{OM}=\dfrac{\sqrt{3}}{4}$です。
$\text{OC}=\dfrac{1}{2}$より$\text{CM}=\text{OC}-\text{OM}=\dfrac{2-\sqrt{3}}{4}$となります。
$△\text{ACM}$において、辺$\text{AC}$の長さは三平方の定理より
\begin{align*}\text{AC}^2&=\text{AM}^2+\text{CM}^2\\[0.5em]&=\left(\frac{1}{4}\right)^2+\left(\frac{2-\sqrt{3}}{4}\right)^2\\[0.5em]&=\frac{1}{16}+\frac{7-4\sqrt{3}}{16}\\[0.5em]&=\frac{8-4\sqrt{3}}{16}\\[0.5em]&=\frac{4-2\sqrt{3}}{8}\\[0.5em]\text{AC}&=\sqrt{\frac{4-2\sqrt{3}}{8}}&(\because
\text{AC}>0)\\[0.5em]&=\sqrt{\frac{(\sqrt{3}-1)^2}{(2\sqrt{2})^2}}\\[0.5em]&=\frac{\sqrt{3}-1}{2\sqrt{2}}\\[0.5em]\therefore
\text{AC}&=\frac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{4}\end{align*}
と求まります。
したがって、内接正十二角形の1辺の長さは$\dfrac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{4}$であるとわかり、周の長さは$\mathbf{3\sqrt{6}-3\sqrt{2}}$であることがわかります。
外接正十二角形の周の長さ
元の外接正$n$角形を利用して外接正$2n$角形を作図する方法は、いわば元の外接正$n$角形から二等辺三角形を切り落とす方法でした。
この二等辺三角形と三平方の定理を利用することで外接正$2n$角形、今回の場合は外接正十二角形の1辺の長さ、そして周の長さを求めることができます。
まずは、外接正六角形の1つの頂点とその周辺に着目します。
外接正六角形の1つの頂点を$\text{A}$とし、頂点$\text{A}$を端とする2つの辺それぞれの円の接点を$\text{P},
\text{Q}$とします。点$\text{P},
\text{Q}$は外接正六角形の各辺の中点でもあります。
円の中心$\text{O}$と頂点$\text{A}$を線分で結ぶと円周と交わり、この交点を$\text{R}$とします。
そして、点$\text{R}$を通る円$\text{O}$の接線と線分$\text{AP},
\text{AQ}$との交点をそれぞれ$\text{B}, \text{C}$とします。
すると、$△\text{ABC}$が外接正十二角形を作図する際に外接正六角形から切り落とされる$\text{AB}=\text{AC}$である二等辺三角形であり、辺$\text{BC}$は外接正十二角形の辺になります。
直径$1$の外接正六角形より$\text{OA}=\dfrac{\sqrt{3}}{3},
\text{OR}=\dfrac{1}{2}$なので、$\text{AR}=\text{OA}-\text{OR}=\dfrac{2\sqrt{3}-3}{6}$となります。
また、線分$\text{AP}$は外接正六角形の辺の半分なので、$\text{AP}=\dfrac{\sqrt{3}}{6}$です。
外接正十二角形の1辺の長さを$x$とおくと、$\text{BC}=x,$
$\text{BP}=\text{BR}=\dfrac{x}{2}$となるので、$\text{AB}=\text{AP}-\text{BP}=\dfrac{\sqrt{3}-3x}{6}$となります。
$△\text{ABR}$において、三平方の定理より
\begin{align*}\text{AB}^2&=\text{AR}^2+\text{BR}^2\\[0.5em]\left(\frac{\sqrt{3}-3x}{6}\right)^2&=\left(\frac{2\sqrt{3}-3}{6}\right)^2+\left(\frac{x}{2}\right)^2\\[0.5em]\frac{9x^2-6\sqrt{3}x+3}{36}&=\frac{21-12\sqrt{3}}{36}+\frac{x^2}{4}\\[0.5em]9x^2-6\sqrt{3}x+3&=21-12\sqrt{3}+9x^2\\[0.5em]-6\sqrt{3}x&=18-12\sqrt{3}\\[0.5em]18x&=36-18\sqrt{3}\\[0.5em]x&=2-\sqrt{3}\end{align*}
となります。
したがって、外接正十二角形の1辺の長さは$2-\sqrt{3}$であるとわかり、周の長さは$\mathbf{24-12\sqrt{3}}$であることがわかります。
以上より、$(1)$から
\[3\sqrt{6}-3\sqrt{2}<(円周)<24-12\sqrt{3}\]
小数に直せば
\[3.1058\cdots<(円周)<3.2153\cdots\]
が成り立つことがわかります。
内接・外接正六角形をもちいたときより範囲が狭まり、直径$1$の円の周の長さが$3.1$より少し大きいことがわかるようになりました。
このように、頂点の数を増やすことで2つの正多角形の周の長さの間の値の範囲が狭まります。
さらに頂点の数を増やし続ければ、この値の範囲はいくらでも小さくすることができるので、円周の長さをより正確に求めることができます。
したがって、この作業を続けていくことで直径$1$の円の周の長さは
\[\large 3.1415\cdots\]
という値であることが次第に明らかになっていきます。
次に、円周の長さを求める公式を導き出してみます。
円周率・円周の公式を導く
直径$d$の円の周の長さについて考え、直径$1$の円のときと同様に内接・外接正六角形の周の長さを求めてみます。
内接正六角形の周の長さ
内接正六角形の頂点と円の中心を線分で結ぶと、合同な正三角形が6個できます。
これら正三角形の1辺の長さは半径に等しい$\dfrac{d}{2}$なので、内接正六角形の周の長さは$\mathbf{3d}$であることがわかります。
外接正六角形の周の長さ
外接正六角形でも頂点と円の中心を結び、合同な正三角形を6個つくります。
これら正三角形の高さは半径に等しい$\dfrac{d}{2}$なので、$30°-60°-90°$の直角三角形の3辺の比より1辺の長さは$\dfrac{\sqrt{3}}{3}d$となります。
したがって、外接正六角形の周の長さは$\mathbf{2\sqrt{3}d}$であることがわかります。
ここで、直径$d$の円の内接・外接正六角形の周の長さはそれぞれ直径$1$の円の内接・外接正六角形の周の長さの$d$倍となっています。
すなわち、直径$1$と直径$d$それぞれの円における内接・外接正六角形は直径比$1:d$がそのまま相似比となっている相似な図形ということです。
これは他の内接・外接正多角形でも同様です。
したがって、頂点の数を増やすことで次第に明らかになる直径$d$の円の周の長さも直径$1$の円周の$d$倍となります。
すなわち、直径$d$の円の周の長さを$C$、直径$1$の円の周の長さを$c$とおけば
\begin{equation}C=cd\end{equation}
と表されるということです。
円周率
$(2)$の式を
\[c=\frac{C}{d}\]
という形に変形すると、この式は
どの円においても、直径に対する円周の長さの比は常に直径$1$の円の周の長さに等しい
ことを意味します。
直径に対する円周の長さの比のことを円周率といい、ギリシャ文字の$\pi$(パイ)で表されます。
そして、円周率$\pi$であり直径$1$の円の周の長さ$c$でもある値とは、円に内接・外接する正多角形を利用することで次第に明らかになっていく$3.1415\cdots$という値のことです。
以上をまとめると、
円周率$\pi$とは、どの円においても一定の値となる直径に対する円周の長さの比のことであり、
\[\large \pi=\frac{(\text{円周})}{(\text{直径})}=3.1415\cdots\]
です。
円周の公式
円周率$\pi$をもちいると$(2)$は
\[\large C=\pi d\]
という式になります。
すなわち、
\[\large(円周)=(円周率)\times(直径)\]
という公式です。
また、円の半径を$r$とおくと$d=2r$となるので
\[\large C=2\pi r\]
とも書くことができます。
すなわち、
\[\large(円周)=2\times(円周率)\times(半径)\]
という公式です。
このように、円に内接・外接する正多角形を利用した方法で円周率と円周の公式を導くことができます。
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