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2026年3月14日

円に内接・外接する正多角形を利用して円の面積の公式を導く(取りつくし法)

 円に内接・外接する正多角形を利用して、円の面積の公式を導く方法を考えてみます。


円に内接・外接する正多角形

円に内接する正多角形の面積は円の面積より小さく、外接する正多角形は大きい
 円に内接する正多角形は、面積が円の面積より小さい図形です。
一方、円に外接する正多角形は、面積が円の面積より大きい図形です。
したがって、円と内接・外接正多角形の間には面積について以下のような関係が常に成り立ちます。
\begin{equation}(内接正多角形の面積)<(円の面積)<(外接正多角形の面積)\end{equation}
この性質を利用してどのように円の面積の公式を導き出すのかというと、円の内接・外接正多角形の頂点の数を2倍ずつ増やしていくことで円に近づけていく方法をとります。この方法のことを取りつくし法といいます。

 まずは、内接・外接正多角形の頂点の数を2倍にしたときの性質を考えます。

円に内接する正多角形

 円に内接する正多角形の頂点の数を2倍にした場合を考えます。
これは、元の内接正多角形の頂点の数を$n$としたとき、新たに内接正$2n$角形を作図するということです。
内接正$2n$角形は元の内接正$n$角形を利用して次のように作図できます。
内接正n角形の外側に二等辺三角形を付け加えて内接正2n角形をつくる
元の内接正$n$角形の1辺の垂直二等分線を引くと、この直線は円周と交わります。
この交点と垂直二等分線を引いた辺の両端の頂点を結びます。

これを元の内接正$n$角形のすべての辺で行えば、内接正$2n$角形が作図できます。

すなわち、元の内接正$n$角形の各辺に二等辺三角形を付け加えるようにして内接正$2n$角形をつくります。

したがって作図法より、内接正$2n$角形の面積は元の内接正$n$角形の面積より大きくなります。
また、頂点の数を2倍ずつ増やしていくと、内接正多角形の面積は大きくなっていきます。

ただし、$(1)$の関係は常に成り立つので、内接正多角形の面積には円の面積という上限があることになります。
すなわち、頂点の数が増えると、内接正多角形は内側から円に近づくような変化が起こります。

円に外接する正多角形

 円に外接する正多角形の頂点の数を2倍にした場合を考えます。
これは、元の外接正多角形の頂点の数を$n$としたとき、新たに外接正$2n$角形を作図するということです。
外接正$2n$角形は元の外接正$n$角形を利用して次のように作図できます。
外接正n角形の頂点周辺を二等辺三角形の形に切り落として外接正2n角形をつくる
元の外接正$n$角形の頂点と円の中心を結ぶ線分を引き、円周との交点をとります。
この点を通る円の接線を引くと、元の外接正$n$角形と交わります。

これを元の外接正$n$角形のすべての頂点で行い、元の外接正$n$角形と円の接線の交点を結ぶと外接正$2n$角形が作図できます。

すなわち、元の外接正$n$角形の頂点の周辺を二等辺三角形の形に切り落とすようにして外接正$2n$角形をつくります。

したがって、外接正$2n$角形の面積は元の外接正$n$角形の面積より小さくなります。
また、頂点の数を2倍ずつ増やしていくと、外接正多角形の面積は小さくなっていきます。

ただし、$(1)$の関係は常に成り立つので、外接正多角形の面積には円の面積という下限があることになります。
すなわち、頂点の数が増えると、外接正多角形は外側から円に近づくような変化が起こります。

頂点の数を2倍にすると内接・外接正多角形は円に近づく
 これらの性質より、頂点の数を2倍ずつ増やしていくと、円の内接正多角形の面積は大きくなり続け、外接正多角形の面積は小さくなり続けます。
$(1)$より、これらの間には必ず円の面積があるため、円の面積はこの2つの値に挟まれた値として求めることができます。
また、頂点の数が増えるほど範囲が狭まり、円の面積をより正確に求めることができます。

 では、上記の方法で半径$1$の円の面積を求める工程を見てみます。

半径$1$の円の面積を求める

半径1の円の内接・外接正六角形
 出発点としてもちいる正多角形は面積を求めやすいものがよいので、その1つである正六角形から始めます。

円に内接・外接する正六角形の面積

 半径$1$の円に内接・外接する正六角形を考え、それぞれの面積を求めます。

内接正六角形の面積

半径1の円の内接正六角形
 内接正六角形の頂点と円の中心を結ぶと、合同な正三角形が6個できます。
これら正三角形の1辺の長さは半径に等しい$1$なので、$30°-60°-90°$の直角三角形の3辺の比より高さは$\dfrac{\sqrt{3}}{2}$となります。
したがって、内接正六角形の面積は
\[1\times\frac{\sqrt{3}}{2}\div2\times6=\mathbf{\frac{3\sqrt{3}}{2}}\]
であることがわかります。

外接正六角形の面積

半径1の円の外接正六角形
 外接正六角形の頂点と円の中心を結び、合同な正三角形を6個つくります。
これら正三角形の高さは半径に等しい$1$なので、$30°-60°-90°$の直角三角形の3辺の比より1辺の長さは$\dfrac{2\sqrt{3}}{3}$となります。
したがって、外接正六角形の面積は
\[\frac{2\sqrt{3}}{3}\times1\div2\times6=\mathbf{2\sqrt{3}}\]
であることがわかります。

 以上より、$(1)$から
\[\frac{3\sqrt{3}}{2}<(円の面積)<2\sqrt{3}\]
小数に直せば
\[2.5980\cdots<(円の面積)<3.4641\cdots\]
が成り立つことがわかり、半径$1$の円の面積がどのくらいなのかの最初の絞り込みができました。
この時点ではまだ精度は高くなく、半径$1$の円の面積は$2.5$より少し大きいことしかわかりません。

しかし、上述したように頂点の数を増やせば、より高い精度で円の面積の値を絞り込むことができます。


 次は、頂点の数を2倍にした内接・外接正十二角形を考え、それぞれの面積を求めます。

円に内接・外接する正十二角形の面積

半径1の円の内接・外接正十二角形

内接正十二角形の面積

 元の内接正$n$角形を利用して内接正$2n$角形を作図する方法は、いわば元の内接$n$角形に二等辺三角形を付け加える方法でした。今回の場合は、元の内接正$n$角形とは内接正六角形、内接正$2n$角形とは内接正十二角形のことです。
この二等辺三角形の面積を内接正六角形の面積に加えることで内接正十二角形の面積を求めることができます。
 まずは、内接正六角形の1辺に着目します。
半径1の円の内接正十二角形の面積を求めるために二等辺三角形の面積を求める
内接正六角形の1辺の両端をそれぞれ$\text{A}, \text{B}$とし、中点を$\text{M}$とします。
円の中心$\text{O}$から中点$\text{M}$を通る半直線を引き、円周との交点を$\text{C}$とします。
すると、$△\text{ABC}$が内接正十二角形を作図する際に内接正六角形に付け加えられた$\text{AC}=\text{BC}$である二等辺三角形であり、辺$\text{AC}, \text{BC}$は内接正十二角形の辺になります。
$△\text{OAB}$は1辺の長さが$1$である正三角形なので、$\text{AM}=\text{BM}=\dfrac{1}{2}$、$30°-60°-90°$の直角三角形の3辺の比より$\text{OM}=\dfrac{\sqrt{3}}{2}$です。
$\text{OC}=1$より$\text{CM}=\text{OC}-\text{OM}=\dfrac{2-\sqrt{3}}{2}$となります。
$△\text{ABC}$において、底辺の長さは$\text{AB}=1$、高さは$\text{CM}=\dfrac{2-\sqrt{3}}{2}$なので、面積は
\[\triangle \text{ABC}=1\times\frac{2-\sqrt{3}}{2}\div2=\frac{2-\sqrt{3}}{4}\]
となります。
したがって、内接正十二角形は内接正六角形に$△\text{ABC}$と合同な二等辺三角形を6個付け加えてできているため、面積は
\begin{align*}\frac{3\sqrt{3}}{2}+\frac{2-\sqrt{3}}{4}\times6&=\frac{3\sqrt{3}}{2}+\frac{6-3\sqrt{3}}{2}\\[0.5em]&=\frac{6}{2}\\[0.5em]&=\mathbf{3}\end{align*}
であることがわかります。

外接正十二角形の面積

 元の外接正$n$角形を利用して外接正$2n$角形を作図する方法は、いわば元の外接正$n$角形から二等辺三角形を切り落とす方法でした。今回の場合は、元の外接正$n$角形とは外接正六角形、外接正$2n$角形とは外接正十二角形のことです。
この二等辺三角形の面積を外接正六角形の面積から引くことで外接正十二角形の面積を求めることができます。
 まずは、外接正六角形の1つの頂点とその周辺に着目します。
半径1の円の外接正十二角形の面積を求めるために二等辺三角形の面積を求める
外接正六角形の1つの頂点を$\text{A}$とし、頂点$\text{A}$を端とする2つの辺それぞれの円の接点を$\text{P}, \text{Q}$とします。点$\text{P}, \text{Q}$は外接正六角形の各辺の中点でもあります。
円の中心$\text{O}$と頂点$\text{A}$を線分で結ぶと円周と交わり、この交点を$\text{R}$とします。
そして、点$\text{R}$を通る円$\text{O}$の接線と線分$\text{AP}, \text{AQ}$との交点をそれぞれ$\text{B}, \text{C}$とします。
すると、$△\text{ABC}$が外接正十二角形を作図する際に外接正六角形から切り落とされる$\text{AB}=\text{AC}$である二等辺三角形であり、辺$\text{BC}$は外接正十二角形の辺になります。
半径$1$の円の外接正六角形より$\text{OA}=\dfrac{2\sqrt{3}}{3}, \text{OR}=1$なので、$\text{AR}=\text{OA}-\text{OR}=\dfrac{2\sqrt{3}-3}{3}$となります。
また、線分$\text{AP}$は外接正六角形の辺の半分なので、$\text{AP}=\dfrac{\sqrt{3}}{3}$です。
外接正十二角形の1辺の長さを$x$とおくと、$\text{BC}=x, \text{BP}=\text{BR}=\dfrac{x}{2}$となるので、$\text{AB}=\text{AP}-\text{BP}=\dfrac{2\sqrt{3}-3x}{6}$となります。
$△\text{ABR}$において、三平方の定理より
\begin{align*}\text{AB}^2&=\text{AR}^2+\text{BR}^2\\[0.5em]\left(\frac{2\sqrt{3}-3x}{6}\right)^2&=\left(\frac{2\sqrt{3}-3}{3}\right)^2+\left(\frac{x}{2}\right)^2\\[0.5em]\frac{9x^2-12\sqrt{3}x+12}{36}&=\frac{21-12\sqrt{3}}{9}+\frac{x^2}{4}\\[0.5em]9x^2-12\sqrt{3}x+12&=84-48\sqrt{3}+9x^2\\[0.5em]-12\sqrt{3}x&=72-48\sqrt{3}\\[0.5em]\sqrt{3}x&=4\sqrt{3}-6\\[0.5em]x&=4-2\sqrt{3}\end{align*}
となります。
したがって、外接正十二角形の1辺の長さは$4-2\sqrt{3}$であるとわかります。
$△\text{ABC}$において、底辺の長さは$\text{BC}=4-2\sqrt{3}$、高さは$\text{AR}=\dfrac{2\sqrt{3}-3}{3}$なので、面積は
\begin{align*}\triangle \text{ABC}&=(4-2\sqrt{3})\times\frac{2\sqrt{3}-3}{3}\div2\\[0.5em]&=\frac{(2-\sqrt{3})(2\sqrt{3}-3)}{3}\\[0.5em]&=\frac{7\sqrt{3}-12}{3}\end{align*}
となります。
したがって、外接正十二角形は外接正六角形から$△\text{ABC}$と合同な二等辺三角形を6個切り落としてできているため、面積は
\begin{align*}2\sqrt{3}-\frac{7\sqrt{3}-12}{3}\times6&=2\sqrt{3}-(14\sqrt{3}-24)\\[0.5em]&=\mathbf{24-12\sqrt{3}}\end{align*}
であることがわかります。

 以上より、$(1)$から
\[3<(円の面積)<24-12\sqrt{3}\]
小数に直せば
\[3<(円の面積)<3.2153\cdots\]
が成り立つことがわかります。
内接・外接正六角形をもちいたときより範囲が狭まり、半径$1$の円の面積が$3$より少し大きいことがわかるようになりました。

 このように、頂点の数を増やすことで2つの正多角形の面積の間の値の範囲が狭まります。
さらに頂点の数を増やし続ければ、この値の範囲はいくらでも小さくすることができるので、円の面積をより正確に求めることができます。
したがって、この作業を続けていくことで半径$1$の円の面積は
\[\large 3.1415\cdots\]
という値であることが次第に明らかになっていきます。

 次に、円の面積を求める公式を導き出してみます。

円の面積の公式を導く

 半径$r$の円の面積を、半径$1$の円のときと同様に内接・外接正多角形をもちいて求めます。

内接正多角形の面積

円の内接正多角形を分割して組み替えて台形をつくる
 内接正$n$角形の頂点と円の中心を線分で結び、合同な二等辺三角形を$n$個つくります。
これら二等辺三角形を交互に並べるように組み替えると台形ができます。($n$が偶数のときできるのは平行四辺形ですが、これも台形の1つです。)
この台形の上底と下底の長さの和は内接正$n$角形の周の長さ、高さは二等辺三角形の高さとなります。
ここで、$n$を限りなく大きくする、すなわち頂点の数を限りなく増やした場合を考えます。
円に内接・外接する正多角形を利用して円周率・円周の公式を導く」で示したように、内接正$n$角形の周の長さは円周の長さ$2\pi r$に限りなく近づきます。
また、内接正$n$角形を分割した二等辺三角形の頂角は限りなく小さくなり、高さは円の半径$r$に限りなく近づきます。
nを限りなく大きくすると、上底と下底の長さの和が円周、高さが半径の台形とみなせる
したがって、$n$が限りなく大きくなったとき、二等辺三角形を組み替えてつくった台形の上底と下底の長さの和は円周の長さ$2\pi r$、高さは円の半径$r$に限りなく近づくため、面積は
\[2\pi r\times r\div2=\mathbf{\pi r^2}\]
に限りなく近づきます。

外接正多角形の面積

円の外接正多角形を分割して組み替えると台形ができる
 外接正$n$角形の頂点と円の中心を線分で結び、合同な二等辺三角形を$n$個つくります。
これら二等辺三角形を交互に並べるように組み替えると台形ができます。
この台形の上底と下底の長さの和は外接正$n$角形の周の長さ、高さは円の半径に等しい$r$となります。
ここで、$n$を限りなく大きくする、すなわち外接正$n$角形の頂点の数を限りなく増やした場合を考えます。
こちらも「円に内接・外接する正多角形を利用して円周率・円周の公式を導く」で示したように、外接正$n$角形の周の長さは円周の長さ$2\pi r$に限りなく近づきます。
nを限りなく大きくすると、上底と下底の和が円周、高さが半径の台形とみなせる
したがって、$n$が限りなく大きくなったとき、二等辺三角形を組み替えてつくった台形の上底と下底の長さの和は円周の長さ$2\pi r$に限りなく近づき、高さは$r$であるため、面積は
\[2\pi r\times r\div2=\mathbf{\pi r^2}\]
に限りなく近づきます。

 ところで、$(1)$より円と内接・外接正多角形の間には
\[(内接正多角形の面積)<(円の面積)<(外接正多角形の面積)\]
の関係がありました。
このことと上記の結果を合わせると、頂点の数を限りなく増やすと半径$r$の円の内接・外接正多角形の面積は$\pi r^2$に両側から限りなく近づき挟み撃ちにするということです。
したがって、半径$r$の円の面積は
\[\large \pi r^2\]
と表されることがわかります。
すなわち、
\[\large (円の面積)=(円周率)\times(半径)^2\]
というのが円の面積の公式です。
また、$\pi r^2$が現れる過程より、円の面積は
\[\large 2\pi r\times r\div2\]
とも書けますが、このことから円の面積の公式は
\[\large(円の面積)=(円周)\times(半径)\div2=(円周の半分)\times(半径)\]
と表すこともできます。

 ちなみに、円の面積の公式より、半径$1$の円の面積は
\[\pi\times1^2=\pi\]
となります。
すなわち、円に内接・外接する正多角形を利用して半径$1$の円の面積として次第に明らかになっていく$3.1415\cdots$という値は、円周率に近い値ではなく円周率そのものの値であることがわかります。

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