中点連結定理を利用して次の性質を導くことができるでしょうか?
性質(I)(I):△ABC△ABCの2辺AB, ACAB, AC上にそれぞれAP:AB=AQ:AC=m:nAP:AB=AQ:AC=m:n
(ただしm,n:m,n:正の実数、m≠nm≠n)となる点P, QP, Qをとり、これらを結んだ線分PQPQは辺BCBCとPQ//BC, PQ:BC=m:nPQ//BC, PQ:BC=m:nという関係をもつ。
性質(I)(I)は成り立つか?
性質(I)(I)が成り立つかを示すにはm,nm,nの条件を中点連結定理の”m=1,n=2m=1,n=2”から”m,n:m,n:正の実数”まで段階的に拡張していきます。
m,nm,nが自然数の場合
m,nm,nが自然数の場合を考えます。
まずはm=1m=1のときを考え、任意の自然数m,nm,nでも成り立つかを調べてみます。
例としてm=1,n=3m=1,n=3のときを考えます。
△ARS△ARSに着目すると、三角形の中点連結定理より
PQ//RSPQ:RS=1:2PQ//RSPQ:RS=1:2(1)(2)
です。
また、四角形PQSRPQSRに着目すると(1)(1)より台形であることがわかります。
辺PR, QSPR, QSそれぞれの中点をT, UT, Uとすると、台形の中点連結定理と(2)(2)より
PQ//TU//RSTU=PQ+RS2=32PQPQ//TU//RSTU=PQ+RS2=32PQ(3)(4)
となります。
再び△ABC△ABCに着目すると、点T, UT, Uはそれぞれ辺AB, ACAB, ACの中点であるため、三角形の中点連結定理より
TU//BCTU:BC=1:2TU//BCTU:BC=1:2(5)(6)
となります。
(3),(5)(3),(5)より
PQ//BCPQ//BC
(4),(6)(4),(6)より
32PQ:BC=1:2PQ:BC=23:2=1:332PQ:BC=1:2PQ:BC=23:2=1:3
であることがわかります。これはm=1,n=3m=1,n=3における性質(I)(I)です。
n≧4n≧4である任意の自然数nnにおいても上と同様に三角形または台形の中点連結定理を利用することで、
PQ//BC, PQ:BC=1:n(n:自然数,n≠1)PQ//BC, PQ:BC=1:n(n:自然数,n≠1)(I')
を得ることができます。
また、m≧2m≧2の任意の自然数mmの場合はAP0:AP:AB=AQ0:AQ:AC=1:m:nAP0:AP:AB=AQ0:AQ:AC=1:m:nとなるように新たに点P0,Q0P0,Q0をとり、AP0:AP=AQ0:AQ=1:mAP0:AP=AQ0:AQ=1:mとAP0:AB=AQ0:AC=1:nAP0:AB=AQ0:AC=1:nの場合の結果から
PQ//BC, PQ:BC=m:n(m,n:自然数,m≠n)PQ//BC, PQ:BC=m:n(m,n:自然数,m≠n)(I'')
を得ることができます。
(I'')(I'')は性質(I)(I)のm,nm,nを自然数に限定したものです。
さらにm,nm,nが正の有理数の場合、rm,rnrm,rnが自然数となるような数rrが存在する、すなわちrm:rnrm:rnとすれば整数比に直すことができます。したがって、(I'')(I'')を満たします。
ここまでで性質(I)(I)の成り立つm,nm,nを正の有理数まで拡張することができました。
m,nm,nが正の無理数の場合
m,nm,nが正の無理数の場合にも性質(I)(I)が成立するかについては考察となります。
この場合、m,nm,nが正の有理数の場合のように必ずしも整数比rm:rnrm:rnとなるような数rrが存在するわけではありません。
そこで、指数関数y=axy=axの無理数xxの場合のyyを調べるときと似た方法をとるものと考えられます。
例としてm=1,n=√2m=1,n=√2の場合を考えます。
次のような数列を考えます。
a1=1a2=1.4a3=1.41⋮a10=1.414213562⋮a1=1a2=1.4a3=1.41⋮a10=1.414213562⋮
この数列aiaiは初項が11でiiの値が11増えるごとに小数点以下の桁が1つ増え、
limi→∞ai=√2limi→∞ai=√2
である数列です。また、10i−1ai10i−1aiは整数となります。
この数列をもちいて△ABC△ABCの2辺AB, ACAB, AC上にそれぞれAP:AB=AQ:AC=1:aiAP:AB=AQ:AC=1:aiとなる点P, QP, Qをとったとき1:ai1:aiは整数比10i−1:10i−1ai10i−1:10i−1aiに直せるため、(I'')(I'')より
PQ//BC, AP:AB=AQ:AC=PQ:BC=1:aiPQ//BC, AP:AB=AQ:AC=PQ:BC=1:ai(7)
が成り立ちます。
そして、iiを限りなく大きくすることで(7)(7)は
PQ//BC, AP:AB=AQ:AC=PQ:BC=1:√2PQ//BC, AP:AB=AQ:AC=PQ:BC=1:√2
に収束していきます。
このことからm=1,n=√2m=1,n=√2において性質(I)(I)が成り立つといえるようになります。
他の無理数nnでも同様に行うことでm=1m=1かつ任意の無理数nnの場合、(I')(I')が成り立つといえるようになります。
mmも任意の無理数である場合はm,nm,nが自然数の場合と同様にAP0:AP:AB=AQ0:AQ:AC=1:m:nAP0:AP:AB=AQ0:AQ:AC=1:m:n(ただし1<m<n1<m<n)またはAP0:AP:AB=AQ0:AQ:AC=1:rm:rnAP0:AP:AB=AQ0:AQ:AC=1:rm:rn(ただし1<rm<rn1<rm<rn、r:r:任意の実数)となるように新たに点P0,Q0P0,Q0をとれば、m,nm,nが無理数の場合でも性質(I)(I)が成り立つといえるようになります。
上の考察が正しいならば、性質(I)(I)が成り立つということになります。
性質(I)(I)の逆は成り立つか?
性質(I)(I)が成り立つとして、その逆、すなわち
性質(I)(I)の逆:「△ABC△ABCの2辺AB, ACAB, AC上にそれぞれ点P, QP, Qをとったとき、線分PQPQについて
は成り立つでしょうか?
PQ//BCPQ:BC=m:n(ただしm,n:正の実数;m≠n)PQ//BCPQ:BC=m:n(ただしm,n:正の実数;m≠n)
が成り立つならば点P, QP, QはAP:AB=AQ:AC=m:nAP:AB=AQ:AC=m:nを満たす。」
それは以下のように確かめることができます。
△ARS△ARSに着目すると性質(I)(I)より
PQ//RSPQ:RS=m:n2PQ//RSPQ:RS=m:n2(9)(10)
が成り立ちます。
次に△ABC△ABCに着目すると仮定と(9),(10)(9),(10)より
PQ//RS//BCPQ:RS:BC=m:n2:nPQ//RS//BCPQ:RS:BC=m:n2:n
特に
RS//BCRS:BC=1:2RS//BCRS:BC=1:2
に着目すると中点連結定理の逆より
AR:AB=AS:AC=1:2=n2:n
が成り立ちます。
したがって、(8),(11)より
AP:AR:AB=AQ:AS:AC=m:n2:n∴AP:AB=AQ:AC=m:n
なので、性質(I)の逆が成り立つことがわかります。
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