指数方程式とは、指数が未知数のべき乗(指数関数)が含まれる方程式のことです。
例えば、
例えば、
\[\large 2^x=8\]
のような方程式のことです。
指数方程式の実数解はどのように求めるのでしょうか?
底が正の数の場合
底が$1$以外の場合
指数方程式
\[a^x=a^b\quad(a:正の数, a\neq1; b:実数)\]
について考えます。
この方程式の実数解は、正の数の実数乗の値と指数の関係
$1$でない正の数$a$と実数$x, y$について
より$x=b$であることがわかります。
\[x=y\ \Leftrightarrow\ a^x=a^y\]
しかし、大抵の指数方程式は
\[a^x=M\quad(M:実数)\]
という形になっているので、右辺を左辺と底を揃えた$a^b$の形に変形する必要があります。
1. $M$の値で選別
正の数の実数乗の値は必ず正の数となります。
したがって、$M≦0$の場合は正の数の実数乗がとらない値であるため、実数解なしとなります。
したがって、$M≦0$の場合は正の数の実数乗がとらない値であるため、実数解なしとなります。
$M>0$の場合は次の工程に進みます。
2. 有理数乗への変形
$M$が整数の場合は素因数分解するなどの方法で$M$を$a$の整数乗や有理数乗に変形します。
冒頭で例に出した指数方程式の場合、$8$を素因数分解すると$8=2^3$となるので
\[2^x=2^3\]
となり、この方程式の解は$x=3$であることがわかります。
また、場合によっては$a$を素因数分解して実数乗の底を変える場合もあります。
例えば、指数方程式
例えば、指数方程式
\[4^x=8\]
を解く場合、$4$と$8$を素因数分解するとそれぞれ$4=2^2, 8=2^3$となるので
\[\bigl(2^2\bigr)^x=2^3\]
となり、実数乗の計算法則より左辺は
\[2^{2x}=2^3\]
となります。
したがって、この方程式の解は$2x=3$より$x=\dfrac{3}{2}$であることがわかります。
\[2^x=\frac{1}{32}\]
といった指数方程式の場合でも、$32$を素因数分解すると$32=2^5$、負の整数乗の定義より$2^{-5}=\dfrac{1}{32}$となることから
\[2^x=2^{-5}\]
と書けます。
したがって、素因数分解とべき乗の定義よりこの方程式の解は$x=-5$と求めることができます。
両辺の底を揃えることができなかった場合は次の工程に進みます。
3. 対数を利用しての実数乗への変形
指数関数$y=a^x$の$x$と$y$が一対一対応していることから、どの正の数に対してもそれを値とする正の数の実数乗が存在します。
なので、前の工程で$M$を$a$の整数乗や有理数乗に変形できなかった場合は、対数を利用して$M$を$a$の実数乗に変形します。
例えば、指数方程式
\[2^x=12\]
を解く場合、$12$を素因数分解すると$12=2^2×3$となるので、
\[2^x=2^2\times3\]
となり、右辺を$2$のべき乗にできません。
そこで、対数の定義より
\[x=\log_2{2^2\times3}\]
と書くことができ、対数の計算法則より
\begin{align*}x&=\log_2{2^2}+\log_2{3}&(\because\log_a{MN}=\log_a{M}+\log_a{N})\\[0.5em]&=2\log_2{2}+\log_2{3}&(\because
p\log_a{M}=\log_a{M^p})\\[0.5em]&=2+\log_2{3}&(\because
\log_a{a}=1)\end{align*}
となり、この方程式の解は$x=2\log_2{3}$となります。
また、別の方法として素因数分解前の
これを対数の計算法則で変形すれば
\[2^x=12\]
から直接対数の定義より
\[x=\log_2{12}\]
とする方法もあります。これを対数の計算法則で変形すれば
\begin{align*}x&=\log_2{2^2\times3}\\[0.5em]&=\log_2{2^2}+\log_2{3}\\[0.5em]&=2\log_2{2}+\log_2{3}\\[0.5em]&=2+\log_2{3}\end{align*}
となり、指数方程式の同じ解を求められたことがわかります。
底が$1$のとき
\[1^x=M\]
という指数方程式について考えます。
$1$の実数乗は常に$1$であることから、$M=1$のときの実数解はすべての実数、$M\neq1$のときは実数解なしとなります。
底が負の数の場合
底が$-1$以外のとき
底が負の数である指数方程式
\begin{equation}(-a)^x=(-a)^b\quad(a:正の数, b:実数)\end{equation}
について考えます。
実数の範囲における負の数のべき乗は、指数が整数の範囲でのみ定義されています。
すなわち、$(1)$に実数解があるならばそれは整数解であるということで、$b$が整数のときのみ$(1)$に実数解が存在します。
すなわち、$(1)$に実数解があるならばそれは整数解であるということで、$b$が整数のときのみ$(1)$に実数解が存在します。
$b$を整数とすると負の数の整数乗の性質より
$1$でない正の数$a$と整数$p, q$について
という命題が真であることがわかります。
\[p\neq q\ \Rightarrow\ (-a)^p\neq(-a)^q\]
これの対偶は
$1$でない正の数$a$と整数$p, q$について
であり、これも真であることがわかります。
\[(-a)^p=(-a)^q\ \Rightarrow\ p=q\]
したがって、指数方程式$(1)$が実数の範囲で成り立つのは$b$が整数のときだけで、このときの実数解は$x=b$($b:$整数)となることがわかります。
しかし、大抵の指数方程式は
\[(-a)^x=M\quad(M:実数)\]
という形になっているので、まずは$M$を$(-a)^b$に変形する必要があります。
$M=(-a)^b$と変形できる条件について考えると
\begin{align*}|M|&=\left|(-a)^b\right|\\[0.5em]&=a^b\\[1em](-a)^b&=(-1)^b
a^b\\[0.5em]&=(-1)^b |M|\end{align*}
より、
- $|M|$が$a$の整数乗$a^b$に変形できる
- $|M|$と$(-1)^b$($a^b$と同じ指数をもつ$-1$の整数乗)の積が$M$になる
1. $M$の値で選別
負の数の整数乗は必ず$0$以外の値をとります。
$(-a)^b=(-1)^b a^b$より、$(-1)^b$は$1$か$-1$のどちらかをとり、$a^b>0$である、すなわちどちらの因数も$0$にならないため、積が$0$となることはありません。
$(-a)^b=(-1)^b a^b$より、$(-1)^b$は$1$か$-1$のどちらかをとり、$a^b>0$である、すなわちどちらの因数も$0$にならないため、積が$0$となることはありません。
したがって、$M=0$のときは実数解なしです。
2. $|M|$を$a$の整数乗に変形
$M$の絶対値を$a$の整数乗に変形できるかを調べます。
例えば、指数方程式
\[(-2)^x=64\]
を解く場合、$|M|=|64|=64,$
$a=2$なので、$64$を$2$の整数乗に変形できるかを調べます。
$64$を素因数分解すると$64=2^6$という$2$の整数乗に変形できます。
整数乗に変形できなかった場合、元の指数方程式の実数解はないことになります。
3. $M=(-1)^b |M|$が成り立つかを調べる
$|M|=a^b$と変形できたら、次は等式
この等式が成り立つかは$M$と$(-1)^b$の正負が一致するかで決まるので、これを確認するだけで上記の等式が成り立つかを確認できます。
\[M=(-1)^b |M|\]
が成り立つかを調べます。
この等式が成り立つかは$M$と$(-1)^b$の正負が一致するかで決まるので、これを確認するだけで上記の等式が成り立つかを確認できます。
ところで、$(-1)^b$は$b$が奇数ならば$(-1)^b=-1$となり、偶数ならば$(-1)^b=1$となります。
したがって、
したがって、
\begin{cases}bが奇数かつM<0\\[0.5em]bが偶数かつM>0\end{cases}
のどちらかが成り立っていれば、等式$M=(-1)^b
a^b$も成り立つことがわかります。
上記の等式が成り立つということは、指数方程式が
\[(-a)^x=(-a)^b\]
という形に変形できるということであり、解が$x=b$であるということでもあります。
等式$M=(-1)^b a^b$が成り立たなかった場合、指数方程式の実数解はないということになります。
例の指数方程式の場合、
\[64=(-1)^6\times64\]
が成り立つかを調べると、$b=6$で偶数かつ$M=64>0$なので両辺の正負が一致しており、等式が成り立つことがわかります。
すなわち、指数方程式
\[(-2)^x=(-2)^6\]
とできるということであり、解は$x=6$であるとわかります。
底が$-1$のとき
\[(-1)^x=M\]
という指数方程式について考えます。
$-1$の偶数乗は$1$となり、奇数乗は$-1$となることから、$M=1$のときの実数解はすべての偶数、$M=-1$のときの実数解はすべての奇数となります。
$M\neq\pm1$のときは実数解なしとなります。
(2025/9)内容を修正しました。
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