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2025年8月9日

べき乗とは? ④実数乗(無理数乗への拡張)

 指数の範囲は無理数乗を定義することで有理数全体から実数全体に拡張することができます。

無理数乗の定義

 正の数$a$と有理数$x$をもちいた有理数乗$a^x$について、$y=a^x$という方程式を満たす$x, y$の組を座標平面上の点$(x, y)$として表すと、すべての点は以下の破線上に存在します。
xが有理数のとき、y=a^xを満たす点のある場所
破線上に存在するそれぞれの点は互いにつながっていないため、これらの点をどれだけ集めても点と点の間の切れ目が埋まらず一本の線にはなることはありません。
これは、$x$が有理数であり、2つの異なる有理数同士をつなぐような数、すなわち無理数が存在していないためです。
xが任意の実数となったとき、y=a^xが連続関数となることが目標
そこで、$x$の範囲が無理数を含んで実数全体となったとき、$y=a^x$の点の集合が1本の線になるように無理数乗を定義します。
すなわち、$y=a^x$が任意の実数$x$で連続関数となるように無理数乗を定義します。
連続関数とは、関数$y=f(x)$が定義されている区間$a≦x≦b$内の任意の点$x=c$で
\[\lim_{x\to c}f(x)=f(c)\]
が成り立つことで、$x=c$における点とその近傍の点がつながっていることを表します。
したがって、$x$の範囲が無理数を含んで実数全体となったとき、$y=a^x$が任意の実数$x$で連続関数となるためには、$x$を有理数の範囲で無理数$r$に限りなく近づけたときの$a^x$の値、すなわち
\[\lim_{x\to r}a^x\quad(x:有理数)\]
が収束する必要があります。
ここで、例として$1<a, r=\sqrt{2}$の場合を考えます。
常に$p_n<\sqrt{2}$であり、$\sqrt{2}$に収束する有理数の数列$\{p_n\}$と常に$q_n>\sqrt{2}$であり、$\sqrt{2}$に収束する有理数の数列$\{q_n\}$を考えます。
例えば数列$\{p_n\}$とは、$\sqrt{2}=1.41421356\cdots$に対し
\begin{align*}p_1&=1\\[0.5em]p_2&=1.4\\[0.5em]p_3&=1.41\\[0.5em]p_4&=1.414\\ \ &\vdots\end{align*}
となるような数列で、数列$\{q_n\}$とは、
\begin{align*}q_1&=2\\[0.5em]q_2&=1.5\\[0.5em]q_3&=1.42\\[0.5em]q_4&=1.415\\ \ &\vdots\end{align*}
となるような数列のことです。
$\{p_n\}$は常に$p_n<p_{n+1}$であり、$\{q_n\}$は常に$q_n>q_{n+1}$です。
また、$p_n<\sqrt{2}, q_n>\sqrt{2}$より常に$p_n<q_n$でもあります。
このことから、$1<a$であることと正の数の有理数乗の大小関係より
\begin{align*}a^{p_n}&<a^{p_{n+1}}\tag{a}\\[1em]a^{q_n}&>a^{q_{n+1}}\tag{b}\\[1em]a^{p_n}&<a^{q_n}\tag{c}\end{align*}
となります。
p_n,q_nがrに収束するとa^{p_n},a^{q_n}はある値αただ1つに収束する
すると、$n$が限りなく大きくなったとき、すなわち$p_n,q_n$がともに$\sqrt{2}$に収束していくとき、$\text{(a),(b),(c)}$より$a^{p_n}$と$a^{q_n}$の値の差は縮まっていき、ある1つの値$α$をはさみうちにします。
したがって、$\lim_{x\to\sqrt{2}}a^x$はある値$α$に収束することがわかります。これは、他の無理数$r$においても、$0<a<1, a=1$の場合においても同様にいうことができます。
有理数の範囲でべき乗の指数を無理数に限りなく近づけると、べき乗は1つの値に収束することがわかったので、以下のように無理数乗を定義することができます。
正の数$a$と無理数$r$に収束する任意の有理数の数列$r_n$について
\[a^r=\lim_{n\to\infty}{a^{r_n}}\]
こうして、べき乗の指数の範囲は自然数全体から実数全体まで拡張されます。

実数乗の指数法則

 実数乗でも有理数乗と同様の指数法則
任意の正の数$a,p,q$と任意の実数$b,c,k$について
\begin{align}a^b\times a^c&=a^{b+c}\\[1em]\frac{a^b}{a^c}&=a^{b-c}\\[1em]\bigl(a^b\bigr)^c&=a^{bc}\\[1em](pq)^k&=p^k q^k\\[1em]\left(\frac{p}{q}\right)^k&=\frac{p^k}{q^k}\end{align}
が成り立ちます。
これらが実数乗の指数法則です。
※これらが本当に成り立つかの確認は、申し訳ありませんが省略します。
(後々記事、またはここに加筆する予定です。)

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