正の数の実数乗の大小関係は以下のようになります。
これらが成り立つことを確かめてみます。
$0<a<1$である正の数$a$と実数$x$について
\begin{cases}1<a^x&(x<0)\\[0.5em]a^x=1&(x=0)\\[0.5em]0<a^x<1&(x>0)\end{cases}
$a=1$である正の数$a$と実数$x$について、$x$の値にかかわらず
\[a^x=1\]
$1<a$である正の数$a$と実数$x$について
\begin{cases}0<a^x<1&(x<0)\\[0.5em]a^x=1&(x=0)\\[0.5em]1<a^x&(x>0)\end{cases}
正の数$a$と$x<y$である実数$x, y$について
\begin{cases}a^x>a^y&(0<a<1)\\[0.5em]a^x=a^y=1&(a=1)\\[0.5em]a^x<a^y&(1<a)\end{cases}
$a=1$である正の数$a$と実数$x, y$について、$x, y$の大小関係にかかわらず
\[a^x=a^y=1\]
$a<b$である正の数$a, b$と実数$x$について
\begin{cases}a^x>b^x&(x<0)\\[0.5em]a^x=b^x=1&(x=0)\\[0.5em]a^x<b^x&(x>0)\end{cases}
正の数の実数乗のうち有理数乗の大小関係はわかっているので、無理数乗も含めたときの大小関係がどうなるのかを調べる必要があります。
正の数$a$と無理数$r$をもちいた無理数乗$a^r$の定義は、$r$に収束する有理数数列$\{r_n\}$をもちいて
\[\large a^r=\lim_{n\to\infty}a^{r_n}\]
です。
無理数$r$に収束する有理数数列として、常に$p_n<r$である数列$\{p_n\}$と常に$q_n>r$である数列$\{q_n\}$の2つを考えると
\begin{align*}p_1<p_2<p_3&<\cdots<r\\[1em]r<\cdots<q_3&<q_2<q_1\end{align*}
すなわち
\[\textcolor{blue}{p_1<p_2<p_3<\cdots}<\textcolor{red}{r}<\textcolor{green}{\cdots<q_3<q_2<q_1}\]
のような大小関係になっており、無理数の$r$を除いた大小関係と正の数の有理数乗の大小関係より、
$0<a<1$のとき
\[\textcolor{green}{a^{q_1}<a^{q_2}<a^{q_3}<\cdots}<\textcolor{blue}{\cdots<a^{p_3}<a^{p_2}<a^{p_1}}\]
$a=1$のとき
\[\textcolor{blue}{a^{p_1}=a^{p_2}=a^{p_3}=\cdots}=\textcolor{green}{a^{q_1}=a^{q_2}=a^{q_3}=\cdots}=1\]
$1<a$のとき
となります。
\[\textcolor{blue}{a^{p_1}<a^{p_2}<a^{p_3}<\cdots}<\textcolor{green}{\cdots<a^{q_3}<a^{q_2}<a^{q_1}}\]
ここで、無理数乗の定義より$p_n, q_n$が$r$に収束するとき、$a^{p_n},
a^{q_n}$が収束する共通の値が$a^r$であることから、
$0<a<1$のとき
\[\textcolor{green}{a^{q_1}<a^{q_2}<a^{q_3}<\cdots}<\textcolor{red}{a^r}<\textcolor{blue}{\cdots<a^{p_3}<a^{p_2}<a^{p_1}}\]
$a=1$のとき
\[\textcolor{blue}{a^{p_1}=a^{p_2}=a^{p_3}=\cdots}=\textcolor{red}{a^r}=\textcolor{green}{\cdots=a^{q_3}=a^{q_2}=a^{q_1}}=1\]
$1<a$のとき
と書けます。
\[\textcolor{blue}{a^{p_1}<a^{p_2}<a^{p_3}<\cdots}<\textcolor{red}{a^r}<\textcolor{green}{\cdots<a^{q_3}<a^{q_2}<a^{q_1}}\]
より簡潔にまとめると、
正の数$a$と$s<r<t$である有理数$s,t$と無理数$r$について
となるということです。
\begin{cases}a^s>a^r>a^t&(0<a<1)&\cdots\text{(i)}\\[0.5em]a^s=a^r=a^t=1&(a=1)&\cdots\text{(ii)}\\[0.5em]a^s<a^r<a^t&(1<a)&\cdots\text{(iii)}\end{cases}
さらに、正の数の有理数乗の大小関係より$a^s,
a^t>0$であるので、正の数$a$がどんな値であったとしても$a^r>0$もまた成り立つことがわかります。
すなわち、以下のことがいえます。
すなわち、以下のことがいえます。
正の数$a$と無理数$r$について
\begin{equation}\large a^r>0\end{equation}
また、$\text{i}$において$t=0$のとき$a^t=1$となり、$r<t$より$r<0$なので、
$0<a<1$である正の数$a$と$r<0$である無理数$r$について
ということができ、$s=0$のとき$a^s=1$、$s<r$より$r>0$であり、$(1)$より
\[1<a^r\tag{iv}\]
$0<a<1$である正の数$a$と$r>0$である無理数$r$について
ということができます。
\[0<a^r<1\tag{v}\]
$\text{(ii)}$においては
$a=1$である正の数$a$と無理数$r$について、$r$の値にかかわらず
ということができます。
\[a^r=1\tag{vi}\]
$\text{(iii)}$においては、$t=0$のとき
$1<a$である正の数$a$と$r<0$である無理数$r$について
$s=0$のとき
\[0<a^r<1\tag{vii}\]
$1<a$である正の数$a$と$r>0$である無理数$r$について
ということができます。
\[1<a^r\tag{viii}\]
正の数の有理数乗の大小関係と$\text{(iv),(v),(vi),(vii),(viii)}$をまとめると以下のようになります。
$0<a<1$である正の数$a$と実数$x$について
\[\begin{cases}1<a^x&(x<0)\\[0.5em]a^x=1&(x=0)\\[0.5em]0<a^x<1&(x>0)\end{cases}\tag2\]
$a=1$である正の数$a$と実数$x$について、$x$の値にかかわらず
\[a^x=1\tag3\]
$1<a$である正の数$a$と実数$x$について
\[\begin{cases}0<a^x<1&(x<0)\\[0.5em]a^x=1&(x=0)\\[0.5em]1<a^x&(x>0)\end{cases}\tag4\]
同じ底の実数乗の大小関係
比を利用して同じ底の実数乗の大小関係を調べます。
正の数$a$と$x<y$である実数$x,y$をもちいた比$\dfrac{a^x}{a^y}$は実数乗の指数法則より
\[\frac{a^x}{a^y}=a^{x-y}\tag{ix}\]
と書けます。$x<c$より$x-c<0$です。
$0<a<1$のとき
$x-y<0$と$(2)$より
\[1<a^{x-y}\]
$\text{(ix)}$より
\[1<\frac{a^x}{a^y}\]
$a^y>0$なので、両辺に$a^y$を掛けると
\[a^y<a^x\]
となります。
したがって、以下のことがいえます。
$0<a<1$である正の数$a$と$x<y$である実数$x, y$について
\[\large a^x>a^y\]
$a=1$のとき
$(3)$より、$x, y$それぞれの値にかかわらず$a^x=a^y=1$となります。
したがって、以下のことがいえます。
$a=1$である正の数$a$と$x<y$である実数$x, y$について
\[\large a^x=a^y=1\]
$1<a$のとき
$x-y<0$と$(4)$より
\[0<a^{x-y}<1\]
$\text{(ix)}$より
\[0<\frac{a^x}{a^y}<1\]
両辺に$a^y$を掛けると
\[0<a^x<a^y\]
となります。
したがって、以下のことがいえます。
$1<a$である正の数$a$と$x<y$である実数$x, y$について
\[\large a^x<a^y\]
以上をまとめると、以下のようになります。
正の数$a$と$x<y$である実数$x, y$について
\begin{cases}a^x>a^y&(0<a<1)\\[0.5em]a^x=a^y=1&(a=1)\\[0.5em]a^x<a^y&(1<a)\end{cases}
異なる底の実数乗の大小関係
$a<b$である正の数$a,
b$と実数$x$をもちいた比$\dfrac{a^x}{b^x}$は、実数乗の指数法則より
\[\frac{a^x}{b^x}=\left(\frac{a}{b}\right)^x\tag{x}\]
と書けます。$a<b$より$0<\dfrac{a}{b}<1$です。
すると、$(2)$より
\begin{cases}1<\left(\dfrac{a}{b}\right)^x&(x<0)\\[0.5em]\left(\dfrac{a}{b}\right)^x=1&(x=0)\\[0.5em]0<\left(\dfrac{a}{b}\right)^x<1&(x>0)\end{cases}
となります。
$x<0$のとき
$\text{(x)}$より
\[1<\frac{a^x}{b^x}\]
$b^x>0$なので、両辺に$b^x$を掛けると
\[b^x<a^x\]
となります。
したがって、以下のようにいえます。
$a<b$である正の数$a, b$と$x<0$である実数$x$について
\[a^x>b^x\]
$x=0$のとき
$\text{(x)}$より
\[\frac{a^x}{b^x}=1\]
両辺に$b^x$を掛けると
\[a^x=b^x\]
底がどのような値でも$x=0$のとき、べき乗は$1$となるので
\[a^x=b^x=1\]
となります。
したがって、以下のようにいえます。
$a<b$である正の数$a, b$と$x=0$である実数$x$について
\[a^x=b^x=1\]
$x>0$のとき
$\text{(x)}$より
\[0<\frac{a^x}{b^x}<1\]
両辺に$b^x$を掛けると
\[0<a^x<b^x\]
となります。
したがって、以下のようにいえます。
$a<b$である正の数$a, b$と$x>0$である実数$x$について
\[a^x<b^x\]
以上をまとめると、以下のようになります。
$a<b$である正の数$a, b$と実数$x$について
\begin{cases}a^x>b^x&(x<0)\\[0.5em]a^x=b^x=1&(x=0)\\[0.5em]a^x<b^x&(x>0)\end{cases}
底だけでなく指数も異なる実数乗、すなわち正の数$a,b$と実数$x,y$をもちいた実数乗$a^x,b^y$の大小関係は、整数乗や有理数乗の場合と同様で底や指数をそろえる手段がある、または実数乗の具体的な値が求められる場合以外には簡単には知ることができません。
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