正の数$a$の累乗・整数乗の大小関係は以下のようになります。
$0<a<1$である正の数$a$と$p<q$である整数$p,q$について
\[\large a^p>a^q\]
$1<a$である正の数$a$と$p<q$である整数$p,q$について
\[\large a^p<a^q\]
$a<b$である正の数$a,b$と整数$p$について
\begin{cases}a^p>b^p&(p<0)\\[0.5em]a^p=b^p&(p=0)\\[0.5em]a^p<b^p&(p>0)\end{cases}
なぜこれらが成り立つのでしょうか?
正の数の累乗の大小関係
正の数$a$と$m<n$である自然数$m,n$をもちいた累乗$a^m,
a^n$の大小関係について調べます。
正の数が$1$未満のとき
正の数$a$が$1$未満、すなわち
\[0<a<1\tag{i}\]
のとき、$\text{(i)}$の各辺に$a$を掛けると
\[0<a^2<a\tag{ii}\]
となります。
$\text{(ii)}$は、$\text{(i)}$より
\[0<a^2<a<1\tag*{(ii)'}\]
と書けます。
さらに$\text{(ii)'}$の各辺に$a$を掛けると
\[0<a^3<a^2<a\tag{iii}\]
となり、$\text{(i)}$より$\text{(iii)}$は
\[0<a^3<a^2<a<1\]
と書けます。
これを繰り返していくと
\begin{align*}0<\cdots<a^{k+1}<a^k<a^{k-1}<\cdots&\large<a^2<a<1\\
&(k:自然数)\end{align*}
となり、$a^1=a$であることより
\begin{equation}\large0<\cdots<a^{k+1}<a^k<a^{k-1}<\cdots<a^2<a^1<1\end{equation}
となります。
$(1)$より、
$0<a<1$である正の数$a$の累乗$a^m,
a^n$について、$m<n$ならば$a^m>a^n$である。
といえます。
正の数が$1$より大きいとき
$a$が$1$より大きい、すなわち
\[1<a\tag{iv}\]
のとき、$\text{(iv)}$の両辺に$a$を掛けると
\[a<a^2\tag{v}\]
となり、$\text{(iv)}$より$\text{(v)}$は
\[1<a<a^2\]
と書けます。
$a$が$1$未満のときと同様にこれを繰り返していくと
\[1<a<a^2<\cdots<a^{k-1}<a^k<\cdots\]
となり、$a^1=a$より
\begin{equation}1<a^1<a^2<\cdots<a^{k-1}<a^k<\cdots\end{equation}
となります。
$(2)$より、
$1<a$である正の数$a$の累乗$a^m,
a^n$について、$m<n$ならば$a^m<a^n$である。
といえます。
正の数の整数乗の大小関係
正の数$a$と$p<q$である整数$p,q$をもちいた整数乗$a^p,
a^q$の大小関係について調べます。
正の数が$1$未満のとき
$p>1$の場合の大小関係は上で$(1)$となるとわかったので、$p\leqq0$の場合の大小関係を調べます。
$\text{(i)}$の各辺を$a$で割ると
\[0<1<\frac{1}{a}\]
となり、$1$と$\dfrac{1}{a}$の大小関係に着目すれば
\[1<\frac{1}{a}\tag*{(i)'}\]
です。
$\text{(i)'}$の各辺を$a$で割ると
\[\frac{1}{a}<\frac{1}{a^2}\tag{vi}\
となり、$\text{(i)'}$より$\text{(vi)}$は
\[1<\frac{1}{a}<\frac{1}{a^2}\]
と書けます。
これを繰り返していくと
\begin{equation}\large1<\frac{1}{a}<\frac{1}{a^2}<\cdots<\frac{1}{a^{k-1}}<\frac{1}{a^k}<\frac{1}{a^{k+1}}<\cdots\end{equation}
となります。
$(1), (3)$より
\[0<\cdots<a^k<a^{k-1}<\cdots<a^1<1<\frac{1}{a}<\cdots<\frac{1}{a^{k-1}}<\frac{1}{a^k}<\cdots\]
となり、整数乗の定義
\begin{cases}a^0=1\\[0.5em]a^{-k}=\dfrac{1}{a^k}\end{cases}
より
\begin{equation}\large0<\cdots<a^k<a^{k-1}<\cdots<a^1<a^0<a^{-1}<\cdots<a^{-(k-1)}<a^{-k}<\cdots\end{equation}
と書くことができます。
$(4)$より
指数の範囲が自然数全体から整数全体に拡張されても、底が$1$未満の正の数のとき指数の大きいほうのべき乗のほうが小さいという関係は変わらないことがわかります。
$0<a<1$である正の数$a$の整数乗$a^p,
a^q$について、$p<q$ならば$a^p>a^q$である。
といえます。指数の範囲が自然数全体から整数全体に拡張されても、底が$1$未満の正の数のとき指数の大きいほうのべき乗のほうが小さいという関係は変わらないことがわかります。
正の数が$1$より大きいとき
$\text{(iv)}$に$0$と$1$の大小関係も書き加えると
\[0<1<a\tag*{(iv)'}\]
となります。
$\text{(iv)'}$の各辺を$a$で割ると
\[0<\frac{1}{a}<1\tag{vii}\]
となります。
$\text{(vii)}$の各辺を$a$で割ると
\[0<\frac{1}{a^2}<\frac{1}{a}\tag{viii}\]
となり、$\text{(iv)'}$より$\text{(viii)}$は
\[0<\frac{1}{a^2}<\frac{1}{a}<1\]
となります。
これを繰り返していくと
\begin{equation}0<\cdots<\frac{1}{a^{k+1}}<\frac{1}{a^k}<\frac{1}{a^{k-1}}<\cdots<\frac{1}{a^2}<\frac{1}{a}<1\end{equation}
となります。
$(2), (5)$より
\[0<\cdots<\frac{1}{a^k}<\frac{1}{a^{k-1}}<\cdots<\frac{1}{a}<1<a^1<\cdots<a^{k-1}<a^k<\cdots\]
となり、整数乗の定義より
\begin{equation}0<\cdots<a^{-k}<a^{-(k-1)}<\cdots<a^{-1}<a^0<a^1<\cdots<a^{k-1}<a^k<\cdots\end{equation}
と書くことができます。
$(6)$より、
指数の範囲が自然数全体から整数全体に拡張されても、底が$1$より大きい正の数のとき指数の大きいほうのべき乗のほうも大きいという関係は変わらないことがわかります。
$1<a$である正の数$a$の整数乗$a^p,
a^q$について、$p<q$ならば$a^p<a^q$である。
といえます。指数の範囲が自然数全体から整数全体に拡張されても、底が$1$より大きい正の数のとき指数の大きいほうのべき乗のほうも大きいという関係は変わらないことがわかります。
底の異なる整数乗の大小関係
$a<b$である正の数$a,b$と整数$p$をもちいた整数乗$a^p,
b^p$の大小関係は、比を利用することで調べることができます。
2つの正の数$A, B$の比$\dfrac{A}{B}$の値によって$A,
B$の大小関係がわかります。
$\dfrac{A}{B}<1$のとき、両辺に$B$を掛けると$B>0$より
\[A<B\]
となり、$A$より$B$のほうが大きいことがわかります。
$\dfrac{A}{B}=1$のとき、両辺に$B$を掛けると
\[A=B\]
となり、$A$と$B$は等しいことがわかります。
$\dfrac{A}{B}>1$のとき、両辺に$B$を掛けると$B>0$より
\[A>B\]
となり、$A$のほうが$B$より大きいことがわかります。
累乗$a^p, b^p$の比$\dfrac{a^p}{b^p}$は整数乗の計算法則より
$a>0, b>0$なので$\dfrac{a}{b}>0$です。また、$a<b$より$\dfrac{a}{b}<1$であることから、$0<\dfrac{a}{b}<1$であることがわかります。
\begin{equation}\frac{a^p}{b^p}=\left(\frac{a}{b}\right)^p\end{equation}
となります。$a>0, b>0$なので$\dfrac{a}{b}>0$です。また、$a<b$より$\dfrac{a}{b}<1$であることから、$0<\dfrac{a}{b}<1$であることがわかります。
すると、$p$の値によって比$\dfrac{a^p}{b^p}$の値が$1$より大きいか小さいかが変わります。
$p<0$のとき
$p<0$のとき、$(4)$より
\[1<\left(\frac{a}{b}\right)^p\]
であることがわかります。
これは$(7)$より
\[1<\frac{a^p}{b^p}\tag{ix}\]
ということで、$(4),
(6)$より$b>0$ならば$b^p>0$なので、$\text{(ix)}$の両辺に$b^p$を掛けると
\[b^p<a^p\]
となり、$a^p$のほうが$b^p$より大きいことがわかります。
$p=0$のとき
$p=0$のときは$0$乗の定義より$a^p=b^p=1$なので、$a^p$と$b^p$は等しいことがわかります。
$p>0$のとき
また、$p>0$のときは$(6)$より
\[0<\left(\frac{a}{b}\right)^p<1\]
となり、さらに$(7)$より
\[0<\frac{a^p}{b^p}<1\tag{x}\]
となります。
$\text{(x)}$の両辺に$b^p$を掛けると
\[0<a^p<b^p\ \Rightarrow a^p<b^p\]
となり、$a^p$より$b^p$のほうが大きいことがわかります。
以上より、
- $p<0$のとき、$a^p>b^p$
- $p=0$のとき、$a^p=b^p$
- $p>0$のとき、$a^p<b^p$
底も指数も異なる整数乗の大小関係は簡単にはできません。
相異なる正の数$a,b$と整数$p,q$をもちいた整数乗$a^p,
b^q$の比は、整数乗の計算法則をもちいて
\begin{align*}\frac{a^p}{b^q}&=\frac{a^q\times
a^{p-q}}{b^q}\\[0.5em]&=\frac{a^q}{b^q}\times
a^{p-q}\\[0.5em]&=\left(\frac{a}{b}\right)^q\times
a^{p-q}\end{align*}
と変形することができます。
$0<\left(\dfrac{a}{b}\right)^q<1$かつ$0<a^{p-q}<1$の場合は$0<\left(\dfrac{a}{b}\right)^q\times
a^{p-q}<1$であり$a^p<b^q$、
$1<\left(\dfrac{a}{b}\right)^q$かつ$1<a^{p-q}$の場合は$1<\left(\dfrac{a}{b}\right)^q\times a^{p-q}$であり$a^p>b^q$とわかるのですが、
$0<\left(\dfrac{a}{b}\right)^q<1$かつ$1<a^{p-q}$の場合や$1<\left(\dfrac{a}{b}\right)^q$かつ$0<a^{p-q}<1$の場合は、$a^p, b^q$の底または指数をそろえられるような変形を行うか、$a^p, b^q$それぞれの具体的な値が求まらないと大小関係を知ることはできなくなります。
$1<\left(\dfrac{a}{b}\right)^q$かつ$1<a^{p-q}$の場合は$1<\left(\dfrac{a}{b}\right)^q\times a^{p-q}$であり$a^p>b^q$とわかるのですが、
$0<\left(\dfrac{a}{b}\right)^q<1$かつ$1<a^{p-q}$の場合や$1<\left(\dfrac{a}{b}\right)^q$かつ$0<a^{p-q}<1$の場合は、$a^p, b^q$の底または指数をそろえられるような変形を行うか、$a^p, b^q$それぞれの具体的な値が求まらないと大小関係を知ることはできなくなります。
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