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2025年8月3日

正の数の有理数乗の大小関係

 正の数の有理数乗の大小関係は以下のようになります。
$0<a<1$である正の数$a$と有理数$s$について
\begin{cases}1<a^s&(s<0)\\[0.5em]a^s=1&(s=0)\\[0.5em]0<a^s<1&(s>0)\end{cases}
$a=1$である正の数$a$と有理数$s$について、$s$の値にかかわらず
\[a^s=1\]
$1<a$である正の数$a$と有理数$s$について
\begin{cases}0<a^s<1&(s<0)\\[0.5em]a^s=1&(s=0)\\[0.5em]1<a^s&(s>0)\end{cases}
正の数$a$と$s<t$である有理数$s, t$について
\begin{cases}a^s>a^t&(0<a<1)\\[0.5em]a^s<a^t&(1<a)\end{cases}
$a=1$である正の数$a$と有理数$s, t$について、$s, t$の大小関係にかかわらず
\[a^s=a^t=1\]
$a<b$である正の数$a, b$と有理数$s$について
\begin{cases}a^s>b^s&(s<0)\\[0.5em]a^s=b^s=1&(s=0)\\[0.5em]a^s<b^s&(s>0)\end{cases}
これらが成り立つことを確かめてみます。

 正の数$a$と有理数$\dfrac{m}{n}$($m:$整数、$n:$自然数)をもちいた有理数乗$a^\frac{m}{n}$は
\[a^\frac{m}{n}=\sqrt[n]{a^m}\]
と累乗根によって定義されています。
なので、正の数の有理数乗の大小関係を調べるには、正の数の累乗根の大小関係を利用します。

正の数の有理数乗の大きさ

 まずは、正の数$a$と有理数$s$をもちいた正の数の有理数乗$a^s$の大きさについて調べます。

$0<a<1$のとき

 累乗根の大きさ
$0<a<1$である正の数$a$と自然数$n$、整数$p$について
\begin{cases}1<\sqrt[n]{a^p}&(p<0)\\[0.5em]\sqrt[n]{a^p}=1&(p=0)\\[0.5em]0<\sqrt[n]{a^p}<1&(p>0)\end{cases}
は、有理数乗の定義より
\[\begin{cases}1<a^\frac{p}{n}&(p<0)\\[0.5em]a^\frac{p}{n}=1&(p=0)\\[0.5em]0<a^\frac{p}{n}<1&(p>0)\end{cases}\tag{i}\]
と書くことができます。
ここで、自然数$n$と整数$p$について
\[\begin{aligned}p<0\ &\Leftrightarrow\ \frac{p}{n}<0\\[0.5em]p=0\ &\Leftrightarrow\ \frac{p}{n}=0\\[0.5em]p>0\ &\Leftrightarrow\ \frac{p}{n}>0\end{aligned}\tag{*}\]
であるので、$\text{(i)}$は
\begin{cases}1<a^\frac{p}{n}&\left(\dfrac{p}{n}<0\right)\\[0.5em]a^\frac{p}{n}=1&\left(\dfrac{p}{n}=0\right)\\[0.5em]0<a^\frac{p}{n}<1&\left(\dfrac{p}{n}>0\right)\end{cases}
と書き換えることができます。
さらに、$s=\dfrac{p}{n}$とおけば以下のようになります。
$0<a<1$である正の数$a$と有理数$s$について
\begin{equation}\begin{cases}1<a^s&(s<0)\\[0.5em]a^s=1&(s=0)\\[0.5em]0<a^s<1&(s>0)\end{cases}\end{equation}

$a=1$のとき

 累乗根の大きさ
$a=1$である正の数$a$と自然数$n$、整数$p$について、$p$の値にかかわらず
\[\sqrt[n]{a^p}=1\]
は、有理数乗の定義より
\[a^\frac{p}{n}=1\]
と書くことができます。
さらに、$s=\dfrac{p}{n}$とおけば以下のようになります。
$a=1$である正の数$a$と有理数$s$について、$s$の値にかかわらず
\begin{equation}a^s=1\end{equation}

$1<a$のとき

 累乗根の大きさ
$1<a$である正の数$a$と自然数$n$、整数$p$について
\begin{cases}0<\sqrt[n]{a^p}<1&(p<0)\\[0.5em]\sqrt[n]{a^p}=1&(p=0)\\[0.5em]1<\sqrt[n]{a^p}&(p>0)\end{cases}
は、有理数乗の定義より
\[\begin{cases}0<a^\frac{p}{n}<1&(p<0)\\[0.5em]a^\frac{p}{n}=1&(p=0)\\[0.5em]1<a^\frac{p}{n}&(p>0)\end{cases}\tag{ii}\]
と書くことができます。
$(*)$より$\text{(ii)}$は
\begin{cases}0<a^\frac{p}{n}<1&\left(\frac{p}{n}<0\right)\\[0.5em]a^\frac{p}{n}=1&\left(\frac{p}{n}=0\right)\\[0.5em]1<a^\frac{p}{n}&\left(\frac{p}{n}>0\right)\end{cases}
となり、$s=\dfrac{p}{n}$とおけば以下のようになります。
$1<a$である正の数$a$と有理数$s$について
\begin{equation}\begin{cases}0<a^s<1&(s<0)\\[0.5em]a^s=1&(s=0)\\[0.5em]1<a^s&(s>0)\end{cases}\end{equation}

同じ底の有理数乗の大小関係

 正の数$a$と$s<t$である有理数$s, t$をもちいた$a^s, a^t$の比を利用して、これらの大小関係を調べてみます。

$0<a<1$のとき

 $a^s, a^t$の比$\dfrac{a^s}{a^t}$は有理数乗の指数法則より
\[\frac{a^s}{a^t}=a^{s-t}\]
と書けます。
$s<t$より$s-t<0$なので、$(1)$より
\[a^{s-t}>1\]
すなわち
\[\frac{a^s}{a^t}>1\]
となります。
これの両辺に$a^t$を掛けると、$(1)$より$t$の値にかかわらず$a^t>0$ともいえるので
\[a^s>a^t\]
となります。
したがって、以下のことがいえます。
$0<a<1$である正の数$a$と$s<t$である有理数$s, t$について
\begin{equation}\large a^s>a^t\end{equation}
これは正の数の累乗根の大小関係における
$0<a<1$である正の数$a$と$m<n$である自然数$m, n$について
\[\sqrt[m]{a}<\sqrt[n]{a}\]
$0<a<1$である正の数$a$と自然数$n$、$p<q$である整数$p, q$について
\[\sqrt[n]{a^p}>\sqrt[n]{a^q}\]
$0<a<1$である正の数$a$と自然数$m, n$、整数$p, q$について
\[np-mq<0\ \Rightarrow\ \sqrt[m]{a^p}>\sqrt[n]{a^q}\]
に対応します。

$a=1$のとき

 $(2)$より、$s, t$それぞれの値にかかわらず$a^s=a^t=1$となります。
したがって、以下のことがいえます。
$a=1$である正の数$a$と有理数$s, t$について、$s, t$の大小関係にかかわらず
\[a^s=a^t=1\]
これは正の数の累乗根の大小関係における
$a=1$である正の数$a$と自然数$m, n$について、$m, n$の大小関係にかかわらず
\[\sqrt[m]{a}=\sqrt[n]{a}=1\]
$a=1$である正の数$a$と自然数$n$、整数$p, q$について、$p, q$の大小関係にかかわらず
\[\sqrt[m]{a^p}=\sqrt[n]{a^q}=1\]
$a=1$である正の数$a$と自然数$m, n$、整数$p, q$について、$m, n, p, q$の値にかかわらず
\[\sqrt[m]{a^p}=\sqrt[n]{a^q}=1\]
に対応します。

$1<a$のとき

 $a^s, a^t$の比$\dfrac{a^s}{a^t}$は有理数乗の指数法則より
\[\frac{a^s}{a^t}=a^{s-t}\]
と書け、$s<t$より$s-t<0$なので、$(3)$より
\[0<a^{s-t}<1\]
すなわち
\[0<\frac{a^s}{a^t}<1\]
となります。
これの各辺に$a^t$を掛けると、$(3)$からも$t$の値にかかわらず$a^t>0$といえるので
\[0<a^s<a^t\]
となります。
したがって、以下のことがいえます。
$1<a$である正の数$a$と$s<t$である有理数$s, t$について
\begin{equation}\large a^s<a^t\end{equation}
これは正の数の累乗根の大小関係における
$1<a$である正の数$a$と$m<n$である自然数$m, n$について
\[\sqrt[m]{a}>\sqrt[n]{a}\]
$1<a$である正の数$a$と自然数$n$、$p<q$である整数$p, q$について
\[\sqrt[n]{a^p}<\sqrt[n]{a^q}\]
$1<a$である正の数$a$と自然数$m, n$、整数$p, q$について
\[np-mq<0\ \Rightarrow\ \sqrt[m]{a^p}<\sqrt[n]{a^q}\]
に対応します。

 $(4),(5)$をまとめると以下のように書けます。
正の数$a$と$s<t$である有理数$s, t$について
\begin{cases}a^s>a^t&(0<a<1)\\[0.5em]a^s<a^t&(1<a)\end{cases}

異なる底の有理数乗の大小関係

 $a<b$である正の数$a, b$と有理数$s$をもちいた$a^s, b^s$の大小関係について調べます。
$a^s, b^s$の比$\dfrac{a^s}{b^s}$は有理数乗の指数法則より
\[\frac{a^s}{b^s}=\left(\frac{a}{b}\right)^s\]
と書けます。
$a<b$より$\dfrac{a}{b}<1$、さらに$a, b$ともに正より$0<\dfrac{a}{b}<1$なので、$(1)$より
\begin{cases}1<\left(\dfrac{a}{b}\right)^s&(s<0)\\[0.5em]\left(\dfrac{a}{b}\right)^s=1&(s=0)\\[0.5em]0<\left(\dfrac{a}{b}\right)^s<1&(s>0)\end{cases}
すなわち
\begin{cases}1<\dfrac{a^s}{b^s}&(s<0)\\[0.5em]\dfrac{a^s}{b^s}=1&(s=0)\\[0.5em]0<\dfrac{a^s}{b^s}<1&(s>0)\end{cases}
となります。
これらの各辺に$b^s$を掛けると、$(1),(2),(3)$より$b, s$の値にかかわらず$b^s>0$といえるので
\begin{cases}b^s<a^s&(s<0)\\[0.5em]a^s=b^s&(s=0)\\[0.5em]0<a^s<b^s&(s>0)\end{cases}
となり、整理すると以下のように書くことができます。
$a<b$である正の数$a, b$と有理数$s$について
\begin{cases}a^s>b^s&(s<0)\\[0.5em]a^s=b^s=1&(s=0)\\[0.5em]a^s<b^s&(s>0)\end{cases}
$s=0$のとき、整数乗の定義より$a^s=b^s=1$となります。
これは正の数の累乗根の大小関係における
$a<b$である正の数$a, b$と自然数$n$、整数$p$について
\begin{align*}\sqrt[n]{a^p}>\sqrt[n]{b^p}&(p<0)\\[0.5em]\sqrt[n]{a^p}=\sqrt[n]{b^p}=1&(p=0)\\[0.5em]\sqrt[n]{a^p}<\sqrt[n]{b^p}&(p>0)\end{align*}
に対応します。

 底も指数も異なる有理数乗、すなわち正の数$a, b$と有理数$s, t$をもちいた$a^s, b^t$の大小関係は、整数乗の場合と同様に底や指数をそろえる手段がある、または有理数乗の具体的な値が求められる場合以外には簡単には知ることができません。

(2025/9)内容を変更しました。

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