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2021年7月21日

円に内接・外接する正六角形の周長と面積から円周率との関係を考える

 円に内接・外接する正六角形の周の長さを求める方法と面積を求める方法、2つのアプローチで円周率の値の範囲を調べてみようと思います。


円に内接する正六角形

円に内接する正六角形
 半径が$1$である円を考えます。この円の面積は$\pi$円周は$2\pi$です。
その円に内接する六角形を描き、円の中心を通る対角線を引きます。すると、6つの正三角形ができます。

周の長さ

 正六角形の周となる正三角形の1辺の長さ$l_1$は$1$です。したがって、正六角形の周の長さ$L_1$は$l_1$の6倍の$6$となります。
 円周と内接する正六角形の周を比較すると円周のほうが長いので
\begin{align*}2\pi&>6\\[0.5em]\therefore\pi&>3\end{align*}
となります。すなわち、円周率$\pi$は$3$より大きいことがわかります。

面積

 正六角形の中の正三角形は1辺の長さが$1$、1つの角の大きさが$60°$なので面積$s_1$は以下のように求められます。
\begin{align*}s_1&=\frac{1}{2}×1×1×\sin60°\\[0.5em]&=\frac{\sqrt{3}}{4}\end{align*}
正六角形の面積$S_1$は1辺の長さが$1$の正三角形6つ分なので
\begin{align*}S_1&=6s_1\\[0.5em]&=\frac{3\sqrt{3}}{2}≒2.60\end{align*}
となります。
 円と内接する正六角形の面積を比較すると円の面積のほうが大きいので
\[\pi>\frac{3\sqrt{3}}{2}≒2.60\]
となります。すなわち、円周率$\pi$は$\dfrac{3\sqrt{3}}{2}$(およそ$2.60$)より大きいことがわかります。

円に外接する正六角形

円に外接する正六角形
 次に外接する正六角形について見ていきます。円は先ほどと同じく半径$1$です。
中心を通る対角線を引き、正六角形を6つの正三角形に分けます。

周の長さ

 正三角形の高さとなる対角を通る垂線は円の半径と一致するので長さは$1$です。この垂線によってできる直角三角形の三角比より正三角形の1辺の長さ$l_2$は以下のようになります。
\begin{align*}l_2:1&=2:\sqrt{3}\\[0.5em]\sqrt{3}l_2&=2\\[0.5em]l_2&=\frac{2}{\sqrt{3}}\\[0.5em]&=\frac{2\sqrt{3}}{3}\end{align*}
したがって、正六角形の周の長さ$L_2$は
\begin{align*}L_2&=6l_2\\[0.5em]&=4\sqrt{3}≒6.93\end{align*}
となります。
 円周と正六角形の周の長さを比較すると円周のほうが短いので
\begin{align*}2\pi&<4\sqrt{3}\\[0.5em]\therefore\pi&<2\sqrt{3}≒3.46\end{align*}
となります。すなわち、円周率$\pi$は$2\sqrt{3}$(およそ$3.46$)より小さいことがわかります。

面積

 正三角形の高さと辺の長さは先ほどわかったので、それらを使って以下のように面積$s_2$を求めることができます。
\begin{align*}s_2&=\frac{1}{2}×\frac{2\sqrt{3}}{3}×1\\[0.5em]&=\frac{\sqrt{3}}{3}\end{align*}
したがって、円と外接する正六角形の面積$S_2$は
\begin{align*}S_2&=6s_2\\[0.5em]&=2\sqrt{3}≒3.46\end{align*}
となります。
 円と外接する正六角形の面積を比較すると円の面積のほうが小さいので
\[\pi<2\sqrt{3}≒3.46\]
となります。すなわち、円周率$\pi$は$2\sqrt{3}$(およそ$3.46$)より小さいことがわかります。

円周率$\pi$のとりうる値の範囲は?

 ここまででわかったことをまとめると

周の長さより、円周率$\pi$は$3$より大きく$2\sqrt{3}$より小さい
($3<\pi<2\sqrt{3}$)

面積より、円周率$\pi$は$\dfrac{3\sqrt{3}}{2}$より大きく$2\sqrt{3}$より小さい
($\dfrac{3\sqrt{3}}{2}<\pi<2\sqrt{3}$)

となります。
 これらの値の範囲を数直線上で表すと下図のようになります。
円に内接・外接する正六角形より求められる円周率πの取りうる値の範囲
赤く示した範囲が周の長さの関係からわかった円周率$\pi$のとりうる値の範囲、青く示した範囲が面積の関係からわかった円周率$\pi$のとりうる値の範囲です。
この2つの範囲をもちいて円周率$\pi$がとりうる値の範囲を絞り込むには、2つの値の範囲の重なる部分を探します。これは赤く示した範囲である$3<\pi<2\sqrt{3}$となります。

 したがって、円に内接・外接する正六角形の周の長さの関係と面積の関係より円周率$\pi$がとりうる値の範囲は$3<\pi<2\sqrt{3}$、すなわち$3$より大きくおよそ$3.46$より小さいことがわかります。

(2024/3)内容を修正しました。
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