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2021年7月22日

円に内接・外接する正八角形の周長と面積から円周率との関係を考える

 円に内接・外接する正八角形の周の長さを求める方法と面積を求める方法、2つのアプローチで円周率の値の範囲を調べてみようと思います。


円に内接する正八角形

円に内接する正八角形
 半径$1$の円を考えます。この円の円周は$2\pi$面積は$\pi$です。
この円に内接する正八角形を描き、中心を通る対角線を引きます。すると、合同な二等辺三角形8つができます。

周の長さ

 正八角形の辺の一部である二等辺三角形の底辺の長さ$l_1$は余弦定理によって求められます。
底辺以外の辺の長さは$1$、その間の角は$45°$なので$l_1$は
\begin{align*}l_1&=\sqrt{1^2+1^2-2×1×1×\cos45°}\\[0.5em]&=\sqrt{2-\sqrt{2}}\end{align*}
正八角形の周の長さ$L_1$は$l_1$の8倍なので
\begin{align*}L_1&=8l_1\\[0.5em]&=8\sqrt{2-\sqrt{2}}≒6.12\end{align*}
となります。

 円周と内接する正六角形の周の長さを比較すると円周のほうが長いので
\begin{align*}2\pi&>8\sqrt{2-\sqrt{2}}\\[0.5em]\therefore\pi&>4\sqrt{2-\sqrt{2}}≒3.06\end{align*}
となります。すなわち、円周率$\pi$は$4\sqrt{2-\sqrt{2}}$(およそ$3.06$)より大きいことがわかります。

面積

二等辺三角形の面積$s_1$は、等しい辺の長さが$1$、その間の角が$45°$であることから以下のように求められます。
\begin{align*}s_1&=\frac{1}{2}×1×1×\sin45°\\[0.5em]&=\frac{\sqrt{2}}{4}\end{align*}
円に内接する正八角形の面積$S_1$は$s_1$の8倍なので
\begin{align*}S_1&=8s_1\\[0.5em]&=2\sqrt{2}≒2.83\end{align*}
となります。

 円と内接する正六角形の面積を比較すると円の面積のほうが大きいので
\[\pi>2\sqrt{2}≒2.83\]
となります。すなわち、円周率$\pi$は$2\sqrt{2}$(およそ$2.83$)より大きいことがわかります。

円に外接する正八角形

円に外接する正八角形
 円に内接する正八角形のときのように、半径$1$の円を考え、それに外接する正八角形を描きます。円の中心を通る対角線を引くと正八角形は円の半径を高さとする合同な8つの二等辺三角形に分かれます。

周の長さ

 二等辺三角形の頂角から底辺に引いた垂線によってできる直角三角形は垂線の長さが$1$、垂線と斜辺からなる角が頂角の$45°$の半分の$22.5°$となります。したがって、底辺の長さ$l_2$は三角比より$\tan22.5°$を使って求められます。
\begin{align*}l_2&=2×1×\tan22.5°\\[0.5em]&=2\tan22.5°\end{align*}
したがって、円に外接する正八角形の周の長さ$L_2$は
\begin{align*}L_2&=8l_2\\[0.5em]&=16\tan22.5°\end{align*}
となります。
ところで、$\tan22.5°$は半角の公式より以下のように求められます。
\begin{align*}\tan\frac{\alpha}{2}&=\frac{\sin\alpha}{1+\cos\alpha}\\[1em]\therefore\tan22.5°&=\frac{\sin45°}{1+\cos45°}\\[0.5em]&=\frac{\cfrac{1}{\sqrt{2}}}{1+\cfrac{1}{\sqrt{2}}}\\[0.5em]&=\frac{1}{\sqrt{2}+1}\\[0.5em]&=\sqrt{2}-1\end{align*}
すると、$L_2$は上記をもちいて
\[L_2=16(\sqrt{2}-1)=16\sqrt{2}-16\]
と書けます。

 円周と外接する正八角形の周の長さを比較すると円周のほうが短いので
\begin{align*}2\pi&<16\sqrt{2}-16\\[0.5em]\therefore\pi&<8\sqrt{2}-8≒3.31\end{align*}
となります。すなわち、円周率$\pi$は$8\sqrt{2}-8$(およそ$3.31$)より小さいことがわかります。

面積

 さきほど二等辺三角形の高さが$1$、底辺の長さ$l_2$が$2\tan22.5°$とわかったので、二等辺三角形の面積$s_2$を求めることができます。
\begin{align*}s_2&=\frac{1}{2}×l_2×1\\[0.5em]&=\tan22.5°\end{align*}
したがって、円に外接する正八角形の面積$S_2$は$s_2$の8倍なので
\begin{align*}S_2&=8s_2\\[0.5em]&=8\tan22.5°\\[0.5em]&=8\sqrt{2}-8≒3.31\end{align*}
となります。

 円と外接する正八角形の面積を比較すると円の面積のほうが小さいので
\[\pi<8\sqrt{2}-8≒3.31\]
となります。すなわち、円周率$\pi$は$8\sqrt{2}-8$(およそ$3.31$)より小さいことがわかります。

円周率$\pi$がとりうる値の範囲

 ここまででわかったことをまとめると

周の長さより、円周率$\pi$は$4\sqrt{2-\sqrt{2}}$より大きく、$8\sqrt{2}-8$より小さい
($4\sqrt{2-\sqrt{2}}<\pi<8\sqrt{2}-8$)

面積より、円周率$\pi$は$2\sqrt{2}$より大きく、$8\sqrt{2}-8$より小さい
($2\sqrt{2}<\pi<8\sqrt{2}-8$)

となります。

 これらを数直線で表してみると下図のようになります。
円周率πがとりうる値の範囲
赤く示した範囲が周の長さの関係からわかった円周率$pi$がとりうる値の範囲、青く示した範囲が面積の関係からわかった円周率$pi$がとりうる値の範囲です。
この2つの範囲をもちいて円周率$\pi$がとりうる値の範囲を絞り込むには、2つの値の範囲の重なる部分を探します。これは赤く示した範囲である$4\sqrt{2-\sqrt{2}}<\pi<8\sqrt{2}-8$となります。

以上より円に内接・外接する正八角形の周の長さの関係と面積の関係より円周率$\pi$がとりうる値の範囲は$4\sqrt{2-\sqrt{2}}<\pi<8\sqrt{2}-8$、すなわちおよそ$3.06$より大きくおよそ$3.31$より小さいことがわかります。

 「」よりわかった円周率$\pi$がとりうる値の範囲$3<\pi<2\sqrt{3}$($3$より大きくおよそ$3.46$より小さい)よりも狭い範囲に絞り込むことができました。より頂点の多い多角形を使えば周の長さと面積が円周と円の面積により近づくので、円周率のとりうる値の範囲をより精密に絞り込むことができます。

(2024/4)内容を修正しました。
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