四角形が以下の5つの中のいずれか1つの性質をもつとき、その四角形は平行四辺形となります。
- 2組の対辺がそれぞれ平行
- 2組の対辺の長さがそれぞれ等しい
- 2組の対角の大きさがそれぞれ等しい
- 1組の対辺が平行かつ長さが等しい
- 対角線が互いの中点で交わる
これらの四角形の性質のことを
平行四辺形の成立条件といいます。
上記のいずれかの性質をもつ四角形が本当に平行四辺形となるかを確かめてみます。
1. 2組の対辺がそれぞれ平行
2組の対辺がそれぞれ平行である四角形というのは平行四辺形の定義そのものです。
したがって、この性質をもつ四角形は平行四辺形となります。
2. 2組の対辺の長さがそれぞれ等しい
「2組の対辺の長さがそれぞれ等しい」というのは平行四辺形のもつ性質です。
逆にこの性質をもつ四角形が平行四辺形となるのかを確かめてみます。
$AB=CD,AD=BC$である四角形$ABCD$に対角線$AC$を引きます。
$△ABC$と$△CDA$に着目すると
- 仮定より$AB=CD$
- 同様に仮定より$BC=DA$
- 共通の辺なので$AC=CA$
3組の辺がそれぞれ等しいので合同であることがわかります。
このことから$∠BAC=∠DCA,∠ACB=∠CAD$です。
2直線$AB,CD$において$∠BAC,∠DCA$は錯角なので、$∠BAC=∠DCA$より$AB//CD$であることがわかります。
同様に、2直線$AD,BC$において$∠ACB,∠CAD$は錯角なので、$∠ACB=∠CAD$より$AD//BC$であることがわかります。
したがって、四角形$ABCD$は2組の対辺がそれぞれ平行なので平行四辺形となります。
すなわち、2組の対辺の長さがそれぞれ等しい四角形は平行四辺形となります。
3. 2組の対角の大きさがそれぞれ等しい
「2組の対角の大きさがそれぞれ等しい」というのも平行四辺形がもつ性質です。
逆にこの性質をもつ四角形が平行四辺形となるのかを確かめてみます。
$∠A=∠C,∠B=∠D$である四角形$ABCD$を考えます。
四角形の内角の和が$360°$であることより
\begin{equation}\angle A+\angle B+\angle C+\angle D=360°\end{equation}
が成り立ち、仮定より$∠B=∠D,∠C=∠A$なので
\begin{align*}\angle A+\angle D+\angle A+\angle
D&=360°\\[0.5em]2\angle A+2\angle D&=360°\\[0.5em]2(\angle
A+\angle D)&=360°\\[0.5em]\angle A+\angle
D&=180°\tag2\end{align*}
となります。
また、辺$CD$の頂点$D$の側を延長し、その延長上に点$E$をとると、
\[\angle ADE+\angle D=180°\tag3\]
が成り立ちます。
$(2),(3)$より$∠A=∠ADE$です。
2直線$AB,CD$において$∠A,∠ADE$は錯角なので、$AB//CD$であることがわかります。
$(2)$を導いたのと同様にして、$(1)$と仮定$∠C=∠A,∠D=∠B$より
\[\angle A+\angle B=180°\tag4\]
となります。
また、辺$BC$の頂点$B$の側を延長し、その延長上に点$F$をとると
\[\angle ABF+\angle B=180°\tag5\]
が成り立ちます。
$(4),(5)$より$∠A=∠ABF$です。
2直線$AD,BC$において$∠A,∠ABF$は錯角なので、$AD//BC$であることがわかります。
以上より、四角形$ABCD$は2組の対辺がそれぞれ平行なので平行四辺形となります。
すなわち、2組の対角の大きさがそれぞれ等しい四角形は平行四辺形となります。
4. 1組の対辺が平行かつ長さが等しい
「1組の対辺が平行かつ長さが等しい」というのは、平行四辺形の性質「2組の対辺がそれぞれ等しく、かつそれぞれ長さが等しい」を弱めたものです。
この性質をもつ四角形が平行四辺形となるのかを確かめてみます。
$AB=CD$かつ$AB//CD$である四角形$ABCD$に対角線$AC$を引きます。
$△ABC$と$△CDA$に着目すると
- 仮定より$AB=CD$
- $AB//CD$より錯角が等しいので$∠BAC=∠DCA$
- 共通の辺なので$AC=CA$
2組の辺とその間の角がそれぞれ等しいので合同であることがわかります。
このことから$∠ACB=∠CAD$です。
2直線$AD,BC$において$∠ACB,∠CAD$は錯角なので、$AD//BC$であることがわかります。
したがって、四角形$ABCD$は2組の対辺がそれぞれ平行なので平行四辺形となります。
すなわち、1組の対辺が平行かつ長さが等しい四角形は平行四辺形となります。
5. 対角線が互いの中点で交わる
「対角線が互いの中点で交わる」というのは平行四辺形がもつ性質です。
逆に対角線が互いの中点で交わる四角形が平行四辺形となるのかを確かめてみます。
四角形$ABCD$について、対角線$AC,BD$の交点を$P$としたとき$PA=PB,PC=PD$が成り立つ場合を考えます。
$△PAB$と$△PCD$に着目すると
- 仮定より$PA=PB$
- 同様に仮定より$PC=PD$
- 対頂角は等しいので$∠APB=∠CPD$
2組の辺とその間の角がそれぞれ等しいので合同であることがわかります。
このことから$∠ABP=∠CDP$です。
2直線$AB,CD$において$∠ABP,∠CDP$は錯角なので、$AB//CD$であることがわかります。
今度は$△PAD$と$△PCB$に着目すると
- 仮定より$PA=PB$
- 同様に仮定より$PD=PC$
- 対頂角は等しいので$∠APD=∠CPB$
2組の辺とその間の角がそれぞれ等しいので合同であることがわかります。
このことから$∠ADP=∠CBP$です。
2直線$AD,BC$において$∠ADP,∠CBP$は錯角なので、$AD//BC$であることがわかります。
以上より、四角形$ABCD$は2組の対辺がそれぞれ平行なので平行四辺形となります。
すなわち、対角線が互いの中点で交わる四角形は平行四辺形となります。
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https://p-suugaku.blogspot.com/2025/03/heikoushihenkei-seiritsu.html平行四辺形の成立条件