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2025年3月5日

等脚台形とは?

等脚台形
等脚台形とうきゃくだいけいとは、狭義の台形において「きゃくの長さが等しい台形」のことです。
しかし、広義の台形においては「1つの底辺の両端の内角が等しい台形」が等脚台形の定義となります。

(以降、狭義の台形の中の等脚台形を狭義の等脚台形、広義の台形の中の等脚台形を広義の等脚台形と呼ぶことにします。)

広義の台形には平行四辺形が含まれており、平行四辺形には「2組の対辺の長さがそれぞれ等しい」という性質があります。
すると、「脚の長さが等しい台形」は狭義の台形においては等脚台形のみを指して平行四辺形は含まれませんが、広義の台形においては等脚台形と平行四辺形の両方を指すことになってしまいます。
そこで、狭義の等脚台形と同値な四角形である「1つの底辺の両端の内角が等しい狭義の台形」を広義の等脚台形の定義に利用しています。(定義では「1つの底辺の両端の内角が等しい(広義の)台形」に変えています。)
この四角形を利用すると、「1辺の両端の内角の和は$180°$」という性質がある平行四辺形は”ほぼ”取り除かれ、狭義の等脚台形との齟齬が最小に抑えられています。
「1つの底辺の両端の内角が等しい狭義の台形」が狭義の等脚台形と同値な四角形であることを確かめるため、まずは狭義の等脚台形の性質を調べます。

狭義の等脚台形の性質

1. 1つの底辺の両端の内角が等しい

狭義の等脚台形の1つの底辺の両端の内角は等しいか?
 $\text{AB}//\text{CD}$である等脚台形$\text{ABCD}$の頂点$\text{A},\text{B}$から辺$\text{CD}$またはその延長へ垂線をおろし、それぞれの足を$\text{E},\text{F}$とします。
$△\text{ADE}$と$△\text{BCF}$に着目すると、
  • 仮定より$\text{AD}=\text{BC}$
  • 線分$\text{AE},\text{BF}$は等脚台形$\text{ABCD}$の辺$\text{CD}$またはその延長へおろした垂線なので$∠\text{AED}=∠\text{BFC}=90°$
  • 四角形$\text{ABFE}$は長方形なので$\text{AE}=\text{BF}$
直角三角形の斜辺と他の1組の辺がそれぞれ等しいので合同であることがわかります。
このことから$∠\text{ADE}=∠\text{BCF}$です。$\cdots(1)$
$\text{AB}<\text{CD}$のとき、$∠\text{ADE},∠\text{BCF}$はそれぞれ等脚台形$\text{ABCD}$の底辺$\text{CD}$の両端の内角$∠\text{D},∠\text{C}$と同じ角なので、$∠\text{C}=∠\text{D}$が成り立ちます。
$\text{AB}>\text{CD}$のとき、$∠\text{ADE},∠\text{BCF}$はそれぞれ等脚台形$\text{ABCD}$の底辺$\text{CD}$の両端の内角$∠\text{D},∠\text{C}$の外角であり、隣接する外角と内角の和は$180°$なので、
\begin{align*}\angle \text{ADE}+\angle \text{D}&=180°\tag2\\[1em]\angle \text{BCF}+\angle \text{C}&=180°\tag3\end{align*}
となります。$(2)$に$(1)$を代入して
\[\angle \text{BCF}+\angle \text{D}=180°\tag*{(2)'}\]
$(2)',(3)$より$∠\text{C}=∠\text{D}$が成り立ちます。

したがって、底辺$\text{AB},\text{CD}$の長さにかかわらず等脚台形には「1つの底辺の両端の内角が等しい」という性質があることがわかります。

 頂点$\text{C},\text{D}$から辺$\text{AB}$へ垂線を下ろして$∠\text{C}=∠\text{D}$の証明と全く同じ方法で$∠\text{A}=∠\text{B}$を示すことができ、これらの事実から等脚台形には「すべての底辺の両端の内角はそれぞれ等しい」という性質があることがわかりますが、これは冗長です。
なので、等脚台形の性質は最初に得た「1つの底辺の両端の内角が等しい」で十分です。

ちなみに、$\text{AB}=\text{CD}$の場合を考えないのは、狭義の台形において平行四辺形は台形に含まれないことから、台形の一種の等脚台形は平行四辺形の成立条件「2組の対辺がそれぞれ等しい」を満たさない、といえるからです。

2. 対角線の長さが等しい

狭義の等脚台形の対角線の長さは等しいか?
 対角線$\text{AC},\text{BD}$を引きます。
$△\text{ACD}$と$△\text{BCD}$に着目すると、
  • 仮定より$\text{AD}=\text{BC}$
  • 共通の辺なので$\text{CD}=\text{DC}$
  • 等脚台形の性質1.より$∠\text{D}=∠\text{C}$
2組の辺とその間の角がそれぞれ等しいので合同であることがわかります。
このことから$\text{AC}=\text{BD}$、すなわち等脚台形には「対角線の長さが等しい」という性質があることがわかります。

狭義の等脚台形と同値な四角形

 狭義の等脚台形と同値な四角形は、狭義の等脚台形と同じ性質を有しているはずです。
上で分かった狭義の等脚台形の性質をもつ四角形が等脚台形であることがわかれば、それは狭義の等脚台形と同値な四角形であることがわかります。

1. 1つの底辺の両端の内角が等しい狭義の台形

 狭義の等脚台形の性質「1つの底辺の両端の内角が等しい」の底辺は台形の底辺のことなので、この性質をもつ四角形は少なくとも狭義の台形である必要があります。

1つの底辺の両端の内角が等しい狭義の台形は狭義の等脚台形と同値か?
$\text{AB}//\text{CD}$である狭義の台形$\text{ABCD}$の底辺$\text{CD}$の両端の内角$∠\text{C},∠\text{D}$について、$∠\text{C}=∠\text{D}$が成り立っている場合を考えます。
頂点$\text{A},\text{B}$からそれぞれ辺$\text{C},\text{D}$またはその延長へ垂線をおろし、その足を$\text{E},\text{F}$とします。

$△\text{ADE}$と$△\text{BCF}$に着目すると
  • 線分$\text{AE},\text{BF}$は台形$\text{ABCD}$の辺$\text{CD}$またはその延長へおろした垂線なので$∠\text{AEC}=∠\text{BFD}=90°$
  • 仮定より$∠\text{C}=∠\text{D}$
    • $\text{AB}>\text{CD}$のとき、$∠\text{D},∠\text{C}$は$∠\text{ADE},∠\text{BCF}$の外角なので、外角の定理より
      \begin{align*}\angle \text{DAE}&=\angle \text{D}-\angle \text{AED}\\[1em]\angle \text{CBF}&=\angle \text{C}-\angle \text{BFC}\end{align*}
      ゆえに$∠\text{DAE}=∠\text{CBF}$
    • $\text{AB}<\text{CD}$のとき、$∠\text{D}=∠\text{ADE},∠\text{C}=∠\text{BCF}$なので
      \begin{align*}\angle \text{DAE}&=\angle \text{ADE}-\angle \text{AED}\\[1em]\angle \text{CBF}&=\angle \text{BCF}-\angle \text{BFC}\end{align*}
      ゆえに$∠\text{DAE}=∠\text{CBF}$
  • 四角形$\text{ABFE}$は長方形なので$\text{AE}=\text{BF}$
台形の底辺$\text{AB},\text{CD}$の長さに関係なく、1組の辺と両端の角がそれぞれ等しいので合同であることがわかります。
このことから、$\text{AD}=\text{BC}$、すなわち狭義の台形$\text{ABCD}$は狭義の等脚台形であることがわかります。

したがって、「1つの底辺の両端の内角が等しい狭義の台形」は狭義の等脚台形と同値な四角形であることがわかります。


2. 対角線の長さが等しい四角形

凧型四角形
 対角線の長さが等しい四角形には、例えば上図のような台形でない凧形四角形が含まれるので、必ずしも等脚台形にならないことがわかります。
そこで、1組の対辺が平行である、すなわち狭義の台形であるという条件を追加して「対角線の長さが等しい狭義の台形」について考えます。

対角線の長さが等しい狭義の台形は狭義の等脚台形と同値か?①
$\text{AB}//\text{CD}$である狭義の台形$\text{ABCD}$の対角線$\text{AC},\text{BD}$について、$\text{AC}=\text{BD}$が成り立っている場合を考えます。
$\text{AB}<\text{CD}$であるとして、頂点$\text{A},\text{B}$からそれぞれ辺$\text{CD}$へ垂線をおろし、その足を$\text{E},\text{F}$とします。

$△\text{ACE}$と$△\text{BDF}$に着目すると、
  • 仮定より$\text{AC}=\text{BD}$
  • 線分$\text{AE},\text{BF}$は台形$\text{ABCD}$の辺$\text{CD}$へおろした垂線なので$∠\text{AEC}=∠\text{BFD}=90°$
  • 四角形$\text{ABFE}$は長方形なので$\text{AE}=\text{BF}$
直角三角形の斜辺と他の1組の辺がそれぞれ等しいので合同であることがわかります。
このことから$∠\text{ACE}=∠\text{BDF}$です。
対角線の長さが等しい狭義の台形は狭義の等脚台形と同値か?②
次に、$△\text{ACD}$と$△\text{BDC}$に着目すると、
  • 仮定より$\text{AC}=\text{BD}$
  • 共通の辺なので$\text{CD}=\text{DC}$
  • 先ほどわかった$∠\text{ACE}=∠\text{BDF}$、すなわち$∠\text{ACD}=∠\text{BDC}$
2組の辺とその間の角がそれぞれ等しいので合同であることがわかります。
このことから$\text{AD}=\text{BC}$、すなわち狭義の台形$\text{ABCD}$は狭義の等脚台形であることがわかります。

したがって、「対角線の長さが等しい狭義の台形」は狭義の等脚台形と同値な四角形であることがわかります。


 以上より、狭義の等脚台形と同値の四角形は、
  1. 脚の長さが等しい狭義の台形(狭義の等脚台形の定義)
  2. 1つの底辺の両端の内角が等しい狭義の台形
  3. 対角線の長さが等しい狭義の台形
の3つあることがわかりました。

これら3つの四角形の「狭義の台形」の部分を「広義の台形」に変えたとき、どれくらいの平行四辺形が含まれるのかを調べてみます。

「脚の長さが等しい広義の台形」には、上で書いたようにすべての平行四辺形が含まれてしまいます。

「1つの底辺の両端の内角が等しい広義の台形」について考えます。
$\text{AB}//\text{CD}$かつ$∠\text{A}=∠\text{B}$である広義の台形$\text{ABCD}$の内角$∠\text{A},∠\text{B}$に着目したとき、
\begin{align*}\angle \text{A}+\angle \text{B}&=180°\\[1em]\angle \text{A}&=\angle \text{B}\end{align*}
を満たす場合が$∠\text{A}=∠\text{B}=90°$しかなく、このときの広義の台形$\text{ABCD}$は長方形となります。
すなわち、「1つの底辺の両端の内角が等しい広義の台形」に含まれる平行四辺形は長方形のみです。

「対角線の長さが等しい広義の台形」について考えます。
「対角線の長さが等しい平行四辺形」が長方形のみであることから、「対角線の長さが等しい広義の台形」に含まれる平行四辺形は長方形のみです。

したがって、狭義の等脚台形との齟齬を最小にして広義の等脚台形を定義できるのは、「1つの底辺の両端の内角が等しい広義の台形」と「対角線の長さが等しい広義の台形」であることがわかります。
また、広義の等脚台形には、狭義の等脚台形と異なり平行四辺形の1つである長方形が含まれることがわかります。

広義の等脚台形の定義として「対角線の長さが等しい広義の台形」ではなく「1つの底辺の両端の内角が等しい広義の台形」のほうが採用されている理由は、四角形の最も基本的な要素である辺と内角のみで定義を構成できることにあると考察します。

(2025/8)内容を変更しました。
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