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2025年6月4日

定積分の性質 King Property

 定積分の性質にKing Propertyと呼ばれるものがあります。
これは
abf(x)dx=abf(a+bx)dx
が成り立つというものです。

なぜこれが成り立つのでしょうか?


a>bのときの∫[a→b]f(x)dxの図
 abf(x)dxy=f(x)のグラフと直線x=a,x=b、x軸に囲まれた図形(以下、図形A)の面積、abf(a+bx)dxy=f(a+bx)のグラフと直線x=a,x=b、x軸に囲まれた図形(以下、図形B)の面積を表します。

 y=f(x)y=f(a+bx)に着目します。
y=f(x)のグラフを直線x=αに関して対称移動させた後のグラフの方程式はy=f(2αx)と書けます。
y=f(x)とy=f(a+b-x)のグラフは互いにx=(a+b)/2に関して対称
このことから、y=f(a+bx)のグラフはy=f(x)のグラフを直線x=a+b2に関して対称移動したものとなります。

次に直線x=a+b2に着目すると、a+b2は区間[a,b]の中央値であるから、直線x=ax=bはそれぞれ直線x=a+b2からの距離が等しい、すなわち直線x=ax=bは直線x=a+b2に関して対称であることがわかります。

図形Aと図形Bは直線x=(a+b)/2に関して対称
したがって、図形Aと図形Bは直線x=a+b2に関して対称であり、各図形は合同であることがわかります。

無数の長方形で近似して面積を求めるのが定積分の考え方
ところで、図形をy軸に平行な直線で細かく分割し、各部分を長方形で近似して長方形の面積の総和として元の図形の面積を求めるというのが定積分の大まかな考え方です。
このとき、長方形の各辺の長さはそれぞれx軸方向、y軸方向を正とする符号を考慮した長さとなるため、面積もまた符号を考慮した値となります。
図形Aと図形Bは合同なので、少なくとも面積の絶対値が等しいことがわかります。
面積の符号が一致しているのかは近似した長方形の各辺の長さのとる方向によって決まります。

y=f(x)のグラフとy=f(a+bx)のグラフが直線x=a+b2に関して対称であるということは、対応するグラフ上の点のy座標は等しい、すなわち図形Aと図形Bの対応する近似した長方形のy軸に平行な辺の長さは同じ方向にとっていることがわかります。
あとは、近似した長方形のx軸に平行な辺の長さを同じ方向にとっていることがわかれば各図形の面積は等しいといえます。

近似した長方形の各辺の長さのとる方向が一致しているので、総和として得られる各図形の面積は等しくなる
そこで、近似した長方形のx軸に平行な辺の長さのとる方向について調べてみると、abf(x)dxabf(a+bx)dxはともに定積分の向きがaからb、すなわち近似した長方形のx軸に平行な辺の長さを同じ方向にとっています。
したがって、図形Aと図形Bの面積が等しい、すなわち
abf(x)dx=abf(a+bx)dx
が成り立つことがわかります。

 King Propertyは置換積分によって確かに成り立つことがわかります。
abf(a+bx)dxというxの定積分を
(1)a+bx=t
とおくことでtの定積分に置換します。
(1)x=aのとき
a+ba=tt=b
x=bのとき
a+bb=tt=a
となります。すなわち、xaからbまでの定積分はtbからaまでの定積分に置換されます。
また、(1)の両辺をxで微分すると
ddx(a+bx)=dtdx1=dtdxdx=dtdx=dt
となります。
以上から、abf(a+bx)dxtの定積分に置換すると
abf(a+bx)dx=baf(t)(dt)=ba{f(t)}dt=baf(t)dt
となります。
ここで、定積分の性質
abf(x)dx=baf(x)dx
より
baf(t)dt=abf(t)dt
となるので、
abf(a+bx)dx=abf(t)dt
が成り立ちます。
abf(t)dtabf(x)dxの積分変数xtに変えただけなので定積分の値は変わりません。
したがって、abf(t)dt=abf(x)dxより
abf(x)dx=abf(a+bx)dx
が成り立ちます。

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