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2023年4月28日

虚数単位と平方根の積の公式

虚数単位とは?

 実数の範囲では非負実数のものしか考えられない平方根ですが、考える範囲を負の実数にまで拡張したときに導入される実数とは異なる数が虚数であり、その基礎となるのが虚数単位です。
\[x^2=-1\]
という方程式を考えたとき、これを満たす$x$は以下のように求めます。
\begin{align*}x^2+1&=0\\[0.5em]x^2-(-1)&=0\\[0.5em](x+\sqrt{-1})(x-\sqrt{-1})&=0\\[0.5em]x&=\pm\sqrt{-1}\end{align*}
ここで$\sqrt{-1}=i \tag1$とすると、方程式を満たす$x$は$i$と$-i$であることがわかります。
この$i$のことを虚数単位と呼びます。
上の結果から以下が成り立ちます。
\[i^2=-1 \tag2\]

 ここで、任意の負の数$-a\ (a>0)$をもちいて
\[x^2=-a\]
を満たす$x$を考えると、上記と同様に解いて
\begin{align*}x^2+a&=0\\[0.5em]x^2-(-a)&=0\\[0.5em](x+\sqrt{-a})(x-\sqrt{-a})&=0\\[0.5em]x&=\pm\sqrt{-a}\end{align*}
となります。すなわち、$\left(\sqrt{-a}\right)^2=-a \tag3$です。

$i$と$\sqrt{-a}$にはどのような関係があるのかを次で調べます。


$i$と$\sqrt{-a}$の関係

 平方根の計算法則
\[\sqrt{a}\cdot\sqrt{b}=\sqrt{ab}\quad(a>0,b>0)\]
が$a>0,b=-1$のときにも成り立つかを(1)、(2)、(3)を利用して確かめます。

$a>0,b=-1$のとき
\begin{align*}(左辺)^2&=\left(\sqrt{a}\cdot\sqrt{-1}\right)^2\\[0.5em]&=\left(\sqrt{a}\cdot i\right)^2&\left(\because(1)\right)\\[0.5em]&=\left(\sqrt{a}\right)^2i^2\\[0.5em]&=-a&\left(\because(2)\right)\\[1.5em](右辺)^2&=\left(\sqrt{-a}\right)^2\\[0.5em]&=-a&\left(\because(3)\right)\end{align*}
$(左辺)^2=(右辺)^2=-a$となり、両辺ともに$-a$の同符号の平方根であるので成り立つことがわかります。また、式の対称性より$a=-1,b>0$のときも成り立ちます。
よって、平方根の計算法則から
\[\sqrt{-a}=\sqrt{a}\sqrt{-1}=\sqrt{a}i \tag4\]
という式が導かれ、$\sqrt{-a}$は虚数単位を実数倍した$\sqrt{a}i$であることがわかります。これは虚数に関する公式の1つとなります。

虚数単位と平方根の積の公式

 先ほどの平方根の積の公式
\[\sqrt{a}\cdot\sqrt{b}=\sqrt{ab}\quad(a>0,b>0)\]
の$a,b$の条件を$a>0,b<0$とした場合は成り立つでしょうか?確かめてみます。
 $a>0,b<0$のとき、$b=-b'\ (b'>0)$とすると
\begin{align*}(左辺)^2&=\left(\sqrt{a}\cdot\sqrt{-b'}\right)^2\\[0.5em]&=\left(\sqrt{a}\cdot\sqrt{b'}i\right)^2&\left(\because(4)\right)\\[0.5em]&=\left(\sqrt{a}\right)^2\left(\sqrt{b'}i\right)^2\\[0.5em]&=a\left(\sqrt{b'}\right)^2i^2\\[0.5em]&=-ab'&\left(\because(3)\right)\\[1.5em](右辺)^2&=\left(\sqrt{-ab'}\right)^2\\[0.5em]&=-ab'&\left(\because(3)\right)\end{align*}
$(左辺)^2=(右辺)^2=-ab'$となり、両辺ともに$-ab'$の同符号の平方根であるので成り立つことがわかります。また、式の対称性より$a<0,b>0$のときも成り立ちます。
 今度は$a<0,b<0$のときを調べてみます。$a=-a',b=-b'\ (a'>0,b'>0)$とすると
\begin{align*}(左辺)&=\sqrt{-a'}\cdot\sqrt{-b'}\\[0.5em]&=\sqrt{a'}i\cdot\sqrt{b'}i&\left(\because(4)\right)\\[0.5em]&=\sqrt{a'}\cdot\sqrt{b'}i^2\\[0.5em]&=-\sqrt{a'b'}&\left(\because(2)\right)\\[1.5em](右辺)&=\sqrt{-a'\cdot(-b')}\\[0.5em]&=\sqrt{a'b'}\end{align*}
となり、左辺と右辺で異符号となるので成り立たないことがわかります。

すなわち、$\sqrt{-2}\cdot\sqrt{-3}$のような計算を行う場合、
\begin{align*}\sqrt{-2}\cdot\sqrt{-3}&=\sqrt{-2\cdot(-3)}\\[0.5em]&=\sqrt{6}\end{align*}
とはできないということであり、(4)を利用して
\begin{align*}\sqrt{-2}\cdot\sqrt{-3}&=\sqrt{2}i\cdot\sqrt{3}i\\[0.5em]&=\sqrt{2\cdot3}i^2\\[0.5em]&=-\sqrt{6}\end{align*}
のように計算しなければならないということです。

また、以上の結果から平方根の積
\[\sqrt{a}\cdot\sqrt{b}=\sqrt{ab}\]
には$a,b$の条件として「$a>0,b>0$」とありますが、「$a<0$かつ$b<0$」のときのみ成り立たないことから「$a>0$または$b>0$」と読み替えることができそうです。ただし、これは複素数の範囲で考えた場合で実数の範囲においては「$a>0$かつ$b>0$」です。

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