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2025年4月21日

等比数列の項はnが大きくなるとどうなるか?(等比数列の極限)

 等比数列の一般項は
an=arn1(a:,r:,n:)an=arn1(a:,r:,n:)
と表せます。(ただし、a0,r0a0,r0
nnが大きくなっていくと等比数列の項はどうなるでしょうか?

a>0a>0かつr>0r>0のとき

 a>0a>0かつr>0r>0のときは公比rrによって3つの場合が考えられます。

0<r<10<r<1のとき

 0<r<10<r<1という不等式は、べき乗の性質より
0<r1<r00<r1<r0
と書くことができます。各辺にaaを掛けると、a>0a>0より
0<ar1<ar00<ar1<ar0(1)
となります。
0<arn<arn10<arn<arn1が成り立つと仮定し、各辺にrrを掛けると
0<arn+1<arn0<arn+1<arn(2)
が成り立つことがわかります。
(1)(1)は仮定0<arn<arn10<arn<arn1n=1n=1における不等式なので、(2)(2)よりn2n2においても仮定が成り立つことが数学的帰納法によってわかります。
またこのことから、nnが大きくなっていくとarnarnは常に正のまま00に近づいていくこともわかります。
これはnnn1n1に置き換えても同様なので、nnが大きくなっていくと等比数列の項arn1arn1常に正のまま00に近づいていく(00に収束する)ことがわかります。

r=1r=1のとき

 r=1r=1のとき、
arn1=aarn1=a
となるので、nnにかかわらず等比数列の項arn1arn1常にaaである(aaに収束する)ことがわかります。

r>1r>1のとき

 r>1r>1という不等式は、べき乗の性質より
r1>r0r1>r0
と書くことができます。両辺にaaを掛けると、a>0a>0より
ar1>ar0ar1>ar0(3)
となります。
arn>arn1arn>arn1が成り立つと仮定し、両辺にrrを掛けると
arn+1>arnarn+1>arn(4)
が成り立つことがわかります。
(3)(3)は仮定arn>arn1arn>arn1n=1n=1における不等式なので、(4)よりn2においても仮定が成り立つことが数学的帰納法によってわかります。
またこのことから、nが大きくなっていくとarnも大きくなっていくということもわかります。
これはnn1に置き換えても同様なので、nが大きくなっていくと等比数列の項arn1大きくなっていくことがわかります。
 今度は、等比数列の項arn1にはこれ以上大きくならないという上限があるのかを調べます。
どんなnのときでもarnが決して超えることができない実数Mが存在すると仮定します。
すなわち、どんなnのときでも
arnM
が成り立つような実数Mが存在すると仮定するということです。
r>1よりr=1+pp>0)とおくと、rnは二項定理より
rn=(1+p)n=nC01n+nC11n1p1+nC21n2p2++nCn212pn2+nCn111pn1+nCnpn=1+np+nC2p2++nCn2pn2+npn1+pn
となり、1,np,nC2p2,,nCn2pn2,npn1,pnはすべて正の数なので
1+np+nC2p2++nCn2pn2+npn1+pn>1+np
すなわち、
rn>1+np
が成り立ちます。
両辺にaを掛けるとa>0なので
arn>a(1+np)
となります。
ここで、実数Ma(1+np)について
M<a(1+np)
を満たすようなnを求めると
1+np>Manp>Ma1n>Ma1p(p>0)n>Maap
となります。自然数は無限に存在するのでnはこれを満たす値をとることができます。
()を満たすnのとき、()
arn>a(1+np)>Marn>M
となり、()に矛盾します。

したがって、仮定は誤りであり、どんなnのときでもrnが決して超えることができない実数Mは存在しないことがわかります。
これは、nn1に置き換えた場合も同様であり、等比数列の項arn1限りなく大きくなれるということを意味します。


以上より、nが大きくなっていくと等比数列の項arn1限りなく大きくなる(正の無限大に発散する)ことがわかります。


a<0かつr>0のとき

 a<0かつr>0のときも他の場合も公比rによって3つの場合が考えられます。

0<r<1のとき

 0<r<1
0<r1<r0
と書くことができ、各辺にaを掛けると、a<0より
0>ar1>ar0
となります。
0>arn>arn1が成り立つと仮定し、各辺にrを掛けると
0>arn+1>arn
が成り立つことがわかります。
(5)は仮定0>arn>arn1n=1における不等式なので、(6)よりn2においても仮定が成り立つことが数学的帰納法によってわかります。
またこのことから、nが大きくなっていくとarnは常に負のまま0に近づいていくこともわかります。
これはnn1に置き換えても同様なので、nが大きくなっていくと等比数列の項arn1は常に負のまま0に近づいていく(0に収束する)こともわかります。

r=1のとき

 r=1のとき、
arn1=a
となるので、nにかかわらず等比数列の項arn1常にaである(aに収束する)ことがわかります。

r>1のとき

 r>1
r1>r0
と書くことができ、両辺にaを掛けると、a<0より
ar1<ar0
となります。
arn<arn1が成り立つと仮定し、両辺にrを掛けると
arn+1<arn
が成り立つことがわかります。
(7)は仮定arn<arn1n=1における不等式なので、(8)よりn2においても仮定が成り立つことが数学的帰納法によってわかります。
またこのことから、nが大きくなっていくとarnは小さくなっていくということもわかります。
これは、nn1に置き換えても同様であり、nが大きくなっていくと等比数列の項arn1小さくなっていくことがわかります。
 次に、a<0よりa=|a|と書けるので
arn1=|a|rn1
となります。

|a|rn1は、|a|>0かつr>1のときなのでa>0かつr>1のときと同様に考えてnが大きくなると限りなく大きくなれることがわかります。
したがって、符号が反転している|a|rn1、すなわちこのときの等比数列の項arn1nが大きくなると限りなく小さくなれることがわかります。

以上より、nが大きくなっていくと等比数列の項arn1限りなく小さくなる(負の無限大に発散する)ことがわかります。


a>0かつr<0のとき

1<r<0のとき

 1<r<0よりr=|r|と書けるので
arn1=a(|r|)n1=a(1)n1|r|n1=(1)n1a|r|n1
となります。
a|r|n1について、a>0かつ
1<r<01<|r|<00<|r|<1
であることより、上述のa>0,0<r<1のときと同様に考えて、常に正のまま0に近づいていく(0に収束する)といえることがわかります。
ただし、a>0よりa=|a|であることから
a|r|n1=|a||r|n1=|a||rn1|(|x|p=|xp|)=|arn1|(|x||y|=|xy|)
となり、a|r|n1のもつ性質はarn1の絶対値の性質となります。
また、(1)n1について、n1が奇数(nが偶数)のとき(1)n1=1となり、n1が偶数(nが奇数)のとき(1)n1=1となることがわかります。
すなわち、(1)n1正の値と負の値を交互にとります。
したがって、(1)n1a|r|n1の積である等比数列の項arn1は、nが大きくなっていくと正の値と負の値を交互にとりながら0に近づいていく(0に収束する)ことがわかります。

r=1のとき

 r=1のとき、
arn1=a(1)n1
と書けます。
すると、(1)n1について、n1が奇数(nが偶数)のとき(1)n1=1となり、n1が偶数(nが奇数)のとき(1)n1=1となることから、
arn1={a(n:)a(n:)
となることがわかります。
したがって、等比数列の項arn1は、nが大きくなっていくとaaを交互にとる(振動する)ことがわかります。

r<1のとき

 r=|r|より
arn1=(1)n1a|r|n1
です。
a|r|n1について、a>0かつ
r<1|r|<1|r|>1
であることより、上述のa>0,r>1のときと同様に考えて、限りなく大きくなる(正の無限大に発散する)といえることがわかります。
これも、a>0よりa=|a|であることから
a|r|n1=|arn1|
なので、a|r|n1のもつ性質はarn1の絶対値の性質となります。
また、(1)n1について、n1が奇数(nが偶数)のとき(1)n1=1となり、n1が偶数(nが奇数)のとき(1)n1=1となることから、(1)n1正の値と負の値を交互にとります。
したがって、(1)n1a|r|n1の積である等比数列の項arn1は、nが大きくなっていくと正の値と負の値を交互にとりながら絶対値を限りなく大きくなっていく(振動する)ことがわかります。

a<0かつr<0のとき

1<r<0のとき

 r=|r|a<0よりa=|a|であることから
arn1=|a|(|r|)n1=(1)|a|(1)n1|r|n1=(1)n|a||r|n1
となります。
|a||r|n1について、|a|>0かつ
1<r<00<|r|<1
であることより、上述のa>0,0<r<1のときと同様に考えて、常に正のまま0に近づいていく(0に収束する)といえることがわかります。
ただし、
|a||r|n1=|arn1|
であることから、|a||r|n1のもつ性質はarn1の絶対値の性質となります。
また、(1)nについて、nが奇数のとき(1)n=1となり、nが偶数のとき(1)n=1となることがわかります。
すなわち、(1)n正の値と負の値を交互にとります。
したがって、(1)n|a||r|n1の積である等比数列の項arn1は、nが大きくなっていくと正の値と負の値を交互にとりながら絶対値が0に近づいていく(0に収束する)ことがわかります。

r=1のとき

 r=1,a=|a|より
arn1=|a|(1)n1=|a|(1)n
と書けます。
すると、(1)nについて、nが奇数のとき(1)n=1となり、nが偶数のとき(1)n=1となることから、
arn1={|a|=a(n:)|a|=a(n:)
となることがわかります。
したがって、等比数列の項arn1は、nが大きくなっていくとaaを交互にとる(振動する)ことがわかります。

r1のとき

 r=|r|,a=|a|より
arn1=(1)n|a||r|n1
となります。
|a||r|n1について、|a|>0かつ
r<1|r|>1
であることより、上述のa>0,r>1のときと同様に考えて、限りなく大きくなっていく(正の無限大に発散する)といえることがわかります。
ただし、
|a||r|n1=|arn1|
であることから、|a||r|n1のもつ性質はarn1の絶対値の性質となります。
また、(1)nについて、nが奇数のとき(1)n=1となり、nが偶数のとき(1)n=1となることがわかります。
すなわち、(1)n正の値と負の値を交互にとります。
したがって、(1)n|a||r|n1の積である等比数列の項arn1は、nが大きくなっていくと正の値と負の値を交互にとりながら絶対値が限りなく大きくなっていく(振動する)ことがわかります。

まとめ

 以上の場合分けは同じ結論となったものでまとめることができます。
まず、0<r<1,1<r<0のとき、nが大きくなったときの等比数列の項arn1は必ず0に収束することがわかります。
これらrの範囲はまとめて|r|<1と書くことができます。
次に、r>1,r<1のとき、nが大きくなったときの等比数列の項arn1は必ず発散することがわかります。
これらrの範囲はまとめて|r|>1と書くことができます。
したがって、nが大きくなったときの等比数列の項arn1は公比rによって以下のように場合分けすることができます。
  • |r|<1のとき:0に収束する。
  • r=1のとき:aに収束する。
  • |r|>1,r=1のとき:発散する。
また、以下のように発散する場合をより細かく分けることもできます。
  • |r|<1のとき:0に収束する。
  • r=1のとき:aに収束する。
  • a>0かつr>1のとき:正の無限大に発散する。
  • a<0かつr>1のとき:負の無限大に発散する。
  • r1のとき:振動する。

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