二項定理とは、2項式の累乗を展開した多項式の各項の係数に関する定理のことで、(a+b)n(a+b)n(ただし、a≠0a≠0かつb≠0b≠0)という2項式の自然数nn乗を展開したとき、
(a+b)n=nC0anb0+nC1an−1b1+nC2an−2b2+⋯+nCn−2a2bn−2+nCn−1a1bn−1+nCna0bn(a+b)n=nC0anb0+nC1an−1b1+nC2an−2b2+⋯+nCn−2a2bn−2+nCn−1a1bn−1+nCna0bn
∑∑をもちいれば
(a+b)n=n∑k=0nCkan−kbk(a+b)n=n∑k=0nCkan−kbk
と表せるという定理のことです。
また、an−kbkan−kbk(ただし、0≦k≦n0≦k≦n)の係数はnCknCkであるという定理でもあり、nCknCkのことを二項係数といいます。
2項式の積
まず、2項式の積について考えます。
(a1+a2)(b1+b2)(c1+c2)⋯(a1+a2)(b1+b2)(c1+c2)⋯
という2項式の積は1つずつ分配法則を利用して展開していきます。
a1+a2=A,b1+b2=B,a1+a2=A,b1+b2=B,c1+c2=C,⋯c1+c2=C,⋯とおくと
(a1+a2)(b1+b2)(c1+c2)⋯=ABC⋯(a1+a2)(b1+b2)(c1+c2)⋯=ABC⋯
と書くことができます。
AAだけを戻して分配法則より
ABC⋯=(a1+a2)BC⋯=a1BC⋯+a2BC⋯ABC⋯=(a1+a2)BC⋯=a1BC⋯+a2BC⋯
となります。この展開により、2項式a1+a2a1+a2のa1a1を因数に選んだ項とa2a2を因数に選んだ項の2つができます。
今度は、同様にBBだけを戻して分配法則より
ABC⋯=a1(b1+b2)C⋯+a2(b1+b2)C⋯=a1b1C⋯+a1b2C⋯+a2b1C⋯+a2b2C⋯ABC⋯=a1(b1+b2)C⋯+a2(b1+b2)C⋯=a1b1C⋯+a1b2C⋯+a2b1C⋯+a2b2C⋯
となります。この展開により、a1a1を因数に選んだ項とa2a2を因数に選んだ項は、さらにそれぞれ2項式b1+b2b1+b2のb1b1を因数に選んだ項とb2b2を因数に選んだ項の2つに分かれ、全体で4つの項ができます。
2項式の累乗
次に、2項式の累乗について考えます。
(a+b)n=n個⏞(a+b)(a+b)(a+b)⋯(a+b)(a+b)n=n個(a+b)(a+b)(a+b)⋯(a+b)
(a+b)n(a+b)n(a≠0a≠0かつb≠0b≠0、n:n≧2n:n≧2の自然数)という2項式の累乗は、2項式a+ba+bをnn個掛け合わせる計算を表します。
2項式はすべてa+ba+bでありnn個あることから、展開式のどの項もaaとbbを合計nn個掛け合わせることでつくられており、bbをkk個(ただし、0≦k≦n0≦k≦n)掛け合わせている項はan−kbkan−kbkと書けます。
(k=0k=0のときの項はanan、k=nk=nのときの項はbnbnとなりますが、a0=b0=1a0=b0=1なのでan=an⋅1=anb0,an=an⋅1=anb0,bn=1⋅bn=a0bnbn=1⋅bn=a0bnと書けます。)
(k=0k=0のときの項はanan、k=nk=nのときの項はbnbnとなりますが、a0=b0=1a0=b0=1なのでan=an⋅1=anb0,an=an⋅1=anb0,bn=1⋅bn=a0bnbn=1⋅bn=a0bnと書けます。)
上の樹形図の経路をaaとbbの掛け合わせる順番とすると、展開式の項の中には掛け合わせる順番が異なるだけでaaとbbをそれぞれ掛け合わせた個数が一致する、すなわちan−kbkan−kbkのkkが一致するものが存在する場合があります。
展開式の項のうちbbをkk個掛け合わせてつくられているan−kbkan−kbkの個数は、nn個からkk個選び取るときの選び方の総数に等しいのでnCknCk個あり、すべてのan−kbkan−kbkを足し合わせるとnCkan−kbknCkan−kbkとなります。
したがって、展開式のすべての項を同類項でまとめて整理すると
ただし、これはn≧2n≧2の場合であったので、n=1n=1のときも確認します。
(a+b)n=nC0anb0+nC1an−1b1+nC2an−2b2+⋯+nCn−2a2bn−2+nCn−1a1bn−1+nCna0bn(a+b)n=nC0anb0+nC1an−1b1+nC2an−2b2+⋯+nCn−2a2bn−2+nCn−1a1bn−1+nCna0bn(*)
と書け、∑∑をもちいれば
(a+b)n=n∑k=0nCkan−kbk(a+b)n=n∑k=0nCkan−kbk
と表せることがわかります。ただし、これはn≧2n≧2の場合であったので、n=1n=1のときも確認します。
n=1n=1のとき、(∗)(∗)の左辺は
(a+b)1=a+b(a+b)1=a+b
(∗)(∗)の右辺は
1C0a1b0+1C1a0b1=1⋅a⋅1+1⋅1⋅b=a+b1C0a1b0+1C1a0b1=1⋅a⋅1+1⋅1⋅b=a+b
となるため、成り立つことがわかります。
したがって、自然数nnにおいて(∗)(∗)は成り立つ、すなわち二項定理が成り立つことがわかります。
ちなみに、nCk=nCn−knCk=nCn−kであることより、(∗)(∗)は
すなわち、二項定理の式は
(a+b)n=nC0anb0+nC1an−1b1+nC2an−2b2+⋯+nCn−2a2bn−2+nCn−1a1bn−1+nCna0bn=nCnanb0+nCn−1an−1b1+nCn−2an−2b2+⋯+nC2a2bn−2+nC1a1bn−1+nC0a0bn=nC0a0bn+nC1a1bn−1+nC2a2bn−2+⋯+nCn−2an−2b2+nCn−1an−1b1+nCnanb0(∵交換法則)(a+b)n=nC0anb0+nC1an−1b1+nC2an−2b2+⋯+nCn−2a2bn−2+nCn−1a1bn−1+nCna0bn=nCnanb0+nCn−1an−1b1+nCn−2an−2b2+⋯+nC2a2bn−2+nC1a1bn−1+nC0a0bn=nC0a0bn+nC1a1bn−1+nC2a2bn−2+⋯+nCn−2an−2b2+nCn−1an−1b1+nCnanb0(∵交換法則)
とも書くことができます。すなわち、二項定理の式は
(a+b)n=nC0a0bn+nC1a1bn−1+nC2a2bn−2+⋯+nCn−2an−2b2+nCn−1an−1b1+nCnanb0(a+b)n=nC0a0bn+nC1a1bn−1+nC2a2bn−2+⋯+nCn−2an−2b2+nCn−1an−1b1+nCnanb0
や∑∑をもちいて表した
(a+b)n=n∑k=0nCkakbn−k(a+b)n=n∑k=0nCkakbn−k
という冒頭の式のaaとbbの指数を入れ替えた書き方もあるということです。
また、nC0=nCn=1,nC0=nCn=1,nC1=nCn−1=n,nC1=nCn−1=n,a0=b0=1,a0=b0=1,a1=a,b1=ba1=a,b1=bであることから、(∗)(∗)の右辺の1,2,(n−1),n1,2,(n−1),n番目の項は
(a+b)n=an+nan−1b+nC2an−2b2+⋯+nCn−2a2bn−2+nabn−1+bn(a+b)n=an+nan−1b+nC2an−2b2+⋯+nCn−2a2bn−2+nabn−1+bn
と書くことができます。
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