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2025年5月4日

二項定理とは?

 二項定理とは、2項式の累乗を展開した多項式の各項の係数に関する定理のことで、$(a+b)^n$(ただし、$a\neq0$かつ$b\neq0$)という2項式の自然数$n$乗を展開したとき、
\begin{align*}\large(a+b)^n&\large={_n\text{C}_0}a^n b^0+{_n\text{C}_1}a^{n-1} b^1+{_n\text{C}_2}a^{n-2} b^2+\cdots\\ &\large\quad+{_n\text{C}_{n-2}}a^2 b^{n-2}+{_n\text{C}_{n-1}}a^1 b^{n-1}+{_n\text{C}_n}a^0 b^n\end{align*}
$\sum$をもちいれば
\[\large (a+b)^n=\sum_{k=0}^n{{_n\text{C}_k}a^{n-k} b^k}\]
と表せるという定理のことです。

また、$a^{n-k}b^k$(ただし、$0\leqq k\leqq n$)の係数は${_n\text{C}_k}$であるという定理でもあり、${_n\text{C}_k}$のことを二項係数といいます。


2項式の積

 まず、2項式の積について考えます。
\[(a_1+a_2)(b_1+b_2)(c_1+c_2)\cdots\]
という2項式の積は1つずつ分配法則を利用して展開していきます。
$a_1+a_2=A,b_1+b_2=B,$$c_1+c_2=C,\cdots$とおくと
\[(a_1+a_2)(b_1+b_2)(c_1+c_2)\cdots=ABC\cdots\]
と書くことができます。
$A$だけを戻して分配法則より
\begin{align*}ABC\cdots&=(a_1+a_2)BC\cdots\\[0.5em]&=a_1 BC\cdots+a_2 BC\cdots\end{align*}
となります。この展開により、2項式$a_1+a_2$の$a_1$を因数に選んだ項と$a_2$を因数に選んだ項の2つができます。
今度は、同様に$B$だけを戻して分配法則より
\begin{align*}ABC\cdots&=a_1(b_1+b_2)C\cdots+a_2(b_1+b_2)C\cdots\\[0.5em]&=a_1 b_1 C\cdots+a_1 b_2 C\cdots\\ &\quad+a_2 b_1 C\cdots+a_2 b_2 C\cdots\end{align*}
となります。この展開により、$a_1$を因数に選んだ項と$a_2$を因数に選んだ項は、さらにそれぞれ2項式$b_1+b_2$の$b_1$を因数に選んだ項と$b_2$を因数に選んだ項の2つに分かれ、全体で4つの項ができます。
2項式の積 展開式の各項の因数の組み合わせは樹形図で表せる
$C$以降も同様に分配法則を利用して展開していくと、最終的に得られる多項式(以降、展開式)の各項は上の樹形図に現れる因数の組み合わせでつくられており、すべての因数の組み合わせが1回ずつ展開式の項として現れることがわかります。
掛け合わせる2項式1個につき展開式の項の個数が2倍になるので、$n$個の2項式を掛け合わせたときは$2^n$個の項をもつ展開式になります。

2項式の累乗

 次に、2項式の累乗について考えます。
\[(a+b)^n=\overbrace{(a+b)(a+b)(a+b)\cdots(a+b)}^{n\text{個}}\]
$(a+b)^n$($a\neq0$かつ$b\neq0$、$n: n\geqq2$の自然数)という2項式の累乗は、2項式$a+b$を$n$個掛け合わせる計算を表します。
(a+b)^nの展開式の各項の因数の組み合わせは樹形図で表せる
したがって、上述の2項式の積より、展開式の各項は上図の樹形図に現れる因数の組み合わせでできていることがわかります。
2項式はすべて$a+b$であり$n$個あることから、展開式のどの項も$a$と$b$を合計$n$個掛け合わせることでつくられており、$b$を$k$個(ただし、$0\leqq k\leqq n$)掛け合わせている項は$a^{n-k} b^k$と書けます。
($k=0$のときの項は$a^n$、$k=n$のときの項は$b^n$となりますが、$a^0=b^0=1$なので$a^n=a^n\cdot1=a^n b^0,$$b^n=1\cdot b^n=a^0 b^n$と書けます。)
 上の樹形図の経路を$a$と$b$の掛け合わせる順番とすると、展開式の項の中には掛け合わせる順番が異なるだけで$a$と$b$をそれぞれ掛け合わせた個数が一致する、すなわち$a^{n-k} b^k$の$k$が一致するものが存在する場合があります。
bをk個掛け合わせるときの順番はnCk通り
展開式の項のうち$b$を$k$個掛け合わせてつくられている$a^{n-k} b^k$の個数は、$n$個から$k$個選び取るときの選び方の総数に等しいので${_n\text{C}_k}$個あり、すべての$a^{n-k} b^k$を足し合わせると${_n\text{C}_k}a^{n-k} b^k$となります。
したがって、展開式のすべての項を同類項でまとめて整理すると
\[(a+b)^n=\begin{aligned}&{_n\text{C}_0}a^n b^0+{_n\text{C}_1}a^{n-1} b^1+{_n\text{C}_2}a^{n-2} b^2+\cdots\\ &\quad+{_n\text{C}_{n-2}}a^2 b^{n-2}+{_n\text{C}_{n-1}}a^1 b^{n-1}+{_n\text{C}_n}a^0 b^n\end{aligned}\tag{*}\]
と書け、$\sum$をもちいれば
\[(a+b)^n=\sum_{k=0}^n{{_n\text{C}_k}a^{n-k} b^k}\]
と表せることがわかります。
ただし、これは$n\geqq2$の場合であったので、$n=1$のときも確認します。
 $n=1$のとき、$(*)$の左辺は
\[(a+b)^1=a+b\]
$(*)$の右辺は
\begin{align*}{_1\text{C}_0}a^1 b^0+{_1\text{C}_1}a^0 b^1&=1\cdot a\cdot1+1\cdot1\cdot b\\[0.5em]&=a+b\end{align*}
となるため、成り立つことがわかります。

したがって、自然数$n$において$(*)$は成り立つ、すなわち二項定理が成り立つことがわかります。

ちなみに、${_n\text{C}_k}={_n\text{C}_{n-k}}$であることより、$(*)$は
\begin{align*}(a+b)^n&=\textcolor{red}{_n\text{C}_0}a^n b^0+\textcolor{red}{_n\text{C}_1}a^{n-1} b^1+\textcolor{red}{_n\text{C}_2}a^{n-2} b^2+\cdots\\ &\quad+\textcolor{red}{_n\text{C}_{n-2}}a^2 b^{n-2}+\textcolor{red}{_n\text{C}_{n-1}}a^1 b^{n-1}+\textcolor{red}{_n\text{C}_n}a^0 b^n\\[0.5em]&=\textcolor{blue}{_n\text{C}_n}a^n b^0+\textcolor{blue}{_n\text{C}_{n-1}}a^{n-1} b^1+\textcolor{blue}{_n\text{C}_{n-2}}a^{n-2} b^2+\cdots\\ &\quad+\textcolor{blue}{_n\text{C}_2}a^2 b^{n-2}+\textcolor{blue}{_n\text{C}_1}a^1 b^{n-1}+\textcolor{blue}{_n\text{C}_0}a^0 b^n\\[0.5em]&={_n\text{C}_0}a^0 b^n+{_n\text{C}_1}a^1 b^{n-1}+{_n\text{C}_2}a^2 b^{n-2}+\cdots\\ &\quad+{_n\text{C}_{n-2}}a^{n-2} b^2+{_n\text{C}_{n-1}}a^{n-1} b^1+{_n\text{C}_n}a^n b^0&(\because交換法則)\end{align*}
とも書くことができます。
すなわち、二項定理の式は
\begin{align*}\large(a+b)^n&\large={_n\text{C}_0}a^0 b^n+{_n\text{C}_1}a^1 b^{n-1}+{_n\text{C}_2}a^2 b^{n-2}+\cdots\\ &\large\quad+{_n\text{C}_{n-2}}a^{n-2} b^2+{_n\text{C}_{n-1}}a^{n-1} b^1+{_n\text{C}_n}a^n b^0\end{align*}
や$\sum$をもちいて表した
\[\large (a+b)^n=\sum_{k=0}^n{{_n\text{C}_k}a^k b^{n-k}}\]
という冒頭の式の$a$と$b$の指数を入れ替えた書き方もあるということです。
また、${_n\text{C}_0}={_n\text{C}_n}=1,$${_n\text{C}_1}={_n \text{C}_{n-1}}=n,$$a^0=b^0=1,$$a^1=a,b^1=b$であることから、$(*)$の右辺の$1,2,(n-1),n$番目の項は
\[(a+b)^n=\begin{aligned}&a^n +na^{n-1} b+{_n\text{C}_2}a^{n-2} b^2+\cdots\\ &\quad+{_n\text{C}_{n-2}}a^2 b^{n-2}+nab^{n-1}+b^n\end{aligned}\]
と書くことができます。

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