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2025年5月14日

式の展開とは?(分配法則、乗法公式)

 整式(単項式または多項式)と多項式の掛け算を単項式の和、すなわち1つの多項式にすることを式を展開する、できた多項式のことを展開式といいます。

式の展開はどのように行うのでしょうか?


単項式と多項式の掛け算

単項式と多項式の掛け算の場合、分配法則を利用して式を展開します。
分配法則とは、3つの数$a,b,c$の足し算”$+$”、引き算”$-$”と掛け算"$\cdot$"について
\begin{align}a\cdot(b+c)&=a\cdot b +a\cdot c\\[1em](a+b)\cdot c&=a\cdot c +b\cdot c\\[1em]a\cdot(b-c)&=a\cdot b -a\cdot c\\[1em](a-b)\cdot c&=a\cdot c -b\cdot c\end{align}
が成り立つという法則のことです。

単項式と二項式の掛け算における展開式は$(1),(2),(3),(4)$をそのまま利用します。

 単項式と三項式の掛け算は分配法則を利用して以下のようになります。
ただし、場合分けが煩雑になるので、分配法則$(3),(4)$は正負の数の足し算・引き算の性質より
\begin{align*}a\cdot(b-c)&=a\cdot\bigl\{b+(-c)\bigr\}\\[1em](a-b)\cdot c&=\bigl\{a+(-b)\bigr\}\cdot c\end{align*}
とすることで$(1),(2)$と統合して考えます。

$a(b+c+d)$の場合

 $b+c$には和となるただ1つの数が存在するので、これを$P$とおきます。
すると、$b+c=P$なので
\begin{align*}a(b+c+d)&=a\bigl\{(b+c)+d\bigr\}&(\because結合法則)\\[0.5em]&=a(P +d)\end{align*}
と書け、分配法則$(1)$を利用することができます。
\[a(P +d)=aP +ad\]
$P$を戻すと
\[aP +ad=a(b+c)+ad\]
となり、再び分配法則$(1)$を利用することができます。
\[a(b+c)+ad=ab +ac +ad\]
したがって、
\[a(b+c+d)=ab +ac +ad\]
が成り立つことがわかります。

$(a+b+c)d$の場合

 $a(b+c+d)$の場合と同様に$a+b$を和$Q$とおいて分配法則$(2)$を利用します。
\begin{align*}(a+b+c)d&=\bigl\{(a+b)+c\bigr\}d&(\because結合法則)\\[0.5em]&=(Q +c)d\\[0.5em]&=Qd +cd\\[0.5em]&=(a+b)d +cd\\[0.5em]\therefore(a+b+c)d&=ad +bd +cd\end{align*}

多項式の項が4個以上の場合も同様にして展開することができます。

分配法則による展開の仕方
単項式と多項式の掛け算は上図のような組み合わせで掛け合わせて展開していくことになります。

多項式と多項式の掛け算

 多項式同士の掛け算も同様に分配法則を利用します。
 まずは二項式同士の掛け算$(a+b)(c+d)$を考えます。
$a+b=P$とおいて分配法則$(1)$を利用します。
\begin{align*}(a+b)(c+d)&=P(c+d)\\[0.5em]&=Pc +Pd\end{align*}
$P$を戻して分配法則$(2)$を利用します。
\begin{align*}Pc +Pd&=(a+b)c +(a+b)d\\[0.5em]&=ac +bc +ad +bd\end{align*}
したがって、
\[(a+b)(c+d)=ac +bc +ad +bd\]
が成り立つことがわかります。
今度は、$c+d=Q$とおくところから式の展開を始めてみます。
\begin{align*}(a+b)(c+d)&=(a+b)Q\\[0.5em]&=aQ +bQ\\[0.5em]&=a(c+d) +b(c+d)\\[0.5em]\therefore(a+b)(c+d)&=ac +ad +bc +bd\end{align*}
この$ac +ad +bc +bd$は、$a+b=P$とおいて式の展開をして得た$ac +bc +ad +bd$の$bc$と$ad$を交換法則によって入れ替えたものなので、どちらの手順でも同じ展開式を得ることがわかります。
この二項式同士の掛け算の展開
\[\large(a+b)(c+d)=ac+ad+bc+bd\]
は基本の展開公式、あるいは乗法公式となります。
他にも二項式の特徴によって公式となっているものがあります。

共通の数が1つ含まれる二項式同士の掛け算:

\[\large(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x +ab\]

共通の約数をもつ数を1つずつ含む二項式の掛け算:

\[\large(ax +b)(cx +d)=acx^2+(ad +bc)x +bd\]
上の2つの公式は$x$の1次式同士の掛け算の公式でもあります。

同じ二項式同士の掛け算:

\begin{align*}\large(a+b)^2&\large=a^2+2ab+b^2\\[1em]\large(a-b)^2&\large=a^2-2ab+b^2\end{align*}

共通の2数の和と差となっている二項式同士の掛け算:

\[\large(a+b)(a-b)=a^2-b^2\]

 次は、二項式と三項式の掛け算$(a+b)(c+d +e)$を考えます。
$a+b=P$とおいて分配法則$(1)$を利用します。
\begin{align*}(a+b)(c+d +e)&=P(c+d +e)\\[0.5em]&=Pc +Pd +Pe\end{align*}
$P$を戻して分配法則$(2)$を利用します。
\begin{align*}Pc +Pd +Pe&=(a+b)c +(a+b)d +(a+b)e\\[0.5em]&=ac +bc +ad +bd +ae +be\end{align*}
したがって、
\[(a+b)(c+d +e)=ac +bc +ad +bd +ae +be\]
が成り立つことがわかります。これは他の方法をもちいても同様の展開式を得ます。
また、掛け合わせる多項式の項が3個以上となっても同様にして展開することができます。
多項式同士の掛け算における展開の仕方
多項式同士の掛け算は上図のような組み合わせで掛け合わせて展開していくことになります。(見やすさのため一方の多項式は二項式にしています。)
多項式同士の掛け算における掛け合わせの組み合わせの樹形図
多項式同士の掛け算における掛け合わせの組み合わせは、上図のような樹形図によっても表すことができます。

 多項式同士の掛け算における乗法公式には以下のようなものがあります。

二項式と三項式の掛け算:

\begin{align*}\large(a+b)(a^2-ab+b^2)&\large=a^3+b^3\\[1em]\large(a-b)(a^2+ab+b^2)&\large=a^3-b^3\end{align*}

三項式同士の掛け算:

\[\large(a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca\]
 多項式を3つ以上掛け合わせる場合は結合法則を利用して掛け合わせていくことで展開していくことができます。
例えば、3つの二項式の掛け算$(a+b)(c+d)(e+f)$は
\begin{align*}(a+b)(c+d)(e+f)&=\bigl\{(a+b)(c+d)\bigr\}(e+f)\\[0.5em]&=(ac+ad+bc+bd)(e+f)\\[0.5em]&=(ac+ad+bc+bd)e+(ac+ad+bc+bd)f\\[0.5em]&=ace +ade +bce +bde\\ &\qquad +acf +adf +bcf +bdf\end{align*}
となります。
3つ以上の多項式の掛け算における乗法公式には以下のようなものがあります。
\begin{align*}\large(a+b)^3&\large=a^3+3a^2 b+3ab^2+b^3\\[1em]\large(a-b)^3&\large=a^3-3a^2 b+3ab^2-b^3\end{align*}

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