座標平面上の直線$l:y=ax+b$($a,b:$実数)上の任意の点$P$を位置ベクトル$\vec{p}$をもちいて表す方法について考えてみます。
1. 基本ベクトル・ベクトル成分で表す
原点を始点とする位置ベクトルの基本ベクトル表示
\begin{align*}\vec{p}=\alpha\vec{e_x}&+\beta\vec{e_y}\\
&\left(\begin{aligned}\alpha,\beta:&実数\\
\vec{e_x}:&x軸方向の基本ベクトル\hspace{3em}\\
\vec{e_y}:&y軸方向の基本ベクトル\end{aligned}\right)\end{align*}
の各基本ベクトルの係数の組$(α,β)$は位置ベクトル$\vec{p}$の成分でもあり、座標平面上の点$(α,β)$に対応していることを利用します。
2. 直線上の異なる2点の位置ベクトルで表す
異なる2点を通る直線はただ1つであることを利用します。
直線$l$上の2点$M,N$をとり、それぞれの位置ベクトルを$\vec{m},\vec{n}$とします。
すると、$\vec{n}-\vec{m}=\vec{MN}$となります。
2点$M,N$を通る直線は$l$以外に存在しないので$\vec{MN}$を表す有向線分$MN$は直線$l$の一部であり、同じく点$M$を始点とする$k\vec{MN}$($k:$実数)の終点は直線$l$上の点となります。
すると、$\vec{n}-\vec{m}=\vec{MN}$となります。
2点$M,N$を通る直線は$l$以外に存在しないので$\vec{MN}$を表す有向線分$MN$は直線$l$の一部であり、同じく点$M$を始点とする$k\vec{MN}$($k:$実数)の終点は直線$l$上の点となります。
そこで、$k\vec{MN}$の終点を$P$とする、すなわち$k\vec{MN}=\vec{MP}$し、位置ベクトルの始点を$O$とすると$\vec{p}=\vec{OP},$$\vec{m}=\vec{OM},\vec{n}=\vec{ON}$となることより
\begin{align*}\vec{p}&=\vec{OP}\\[0.5em]&=\vec{OM}+\vec{MP}\\[0.5em]&=\vec{OM}+k\vec{MN}\\[0.5em]&=\vec{m}+k\bigl(\vec{n}-\vec{m}\bigr)\\[0.5em]\large\therefore
\vec{p}&\large=(1-k)\vec{m}+k\vec{n}\tag1\end{align*}
となり、直線$l:y=ax+b$上の任意の点$P$の位置ベクトル$\vec{p}$を同じく$l$上にある異なる2定点の位置ベクトルをもちいて表せることがわかります。
点$O$は原点とは限らないということには注意です。点$O$が原点であれば$\vec{p}$の成分は点$P$の座標と一致します。
直線$l$が点$O$を通るとき、点$M$と点$O$が同じ点であるとすれば、位置ベクトルは$\vec{m}=\vec{0}$となります。
すると$(1)$は
\begin{align*}\vec{p}&=(1-k)\vec{0}+k\vec{n}\\[0.5em]\vec{p}&=k\vec{n}\end{align*}
と書けます。これは、ベクトルの始点と終点を明確にすれば
\[\large\vec{OP}=k\vec{ON}\]
であり、この式は相異なる3点$O,P,N$が同一直線上にあるための条件となります。
また、$(1)$の別表記
\[\large\vec{OP}=(1-k)\vec{OM}+k\vec{ON}\]
も、相異なる3点$P,M,N$が同一直線上にあるための条件となります。
3. 直線上の1点の位置ベクトルと直線に平行なベクトルで表す
2.において位置ベクトルでない$\vec{MN}$が登場しましたが、これを始点が$O$になるように平行移動して直線$l$に平行な有向線分で表される位置ベクトルにします。
$\vec{MN}$を平行移動して始点が$O$、終点が$Q$に移ったとし、点$Q$の位置ベクトルを$\vec{q}$とします。すなわち、$\vec{MN}=\vec{OQ}=\vec{q}$となるということです。
$(1),(2)$のベクトルの等式を満たす$\vec{p}$は直線$l$上のすべての点の位置ベクトルとなる、すなわち直線$l$を表すベクトルの等式となるので、$(1),(2)$は直線のベクトル方程式といいます。
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