$a\leqq x\leqq b$で定義されている連続関数$y=f(x)$の微分係数を調べると$x=a$と$x=b$における微分係数がありません。
なぜこのようなことがいえるのでしょうか?
例を挙げると…
この増減表に着目すると定義域の端である$x=0$と$x=2$における$y'$は書きません。
これはなぜかということについて考えます。
$a\leqq x\leqq b$で定義されている関数$y=f(x)$というのは、$a\leqq x\leqq
b$の中でのみ$x$の値に対する$y$の値が定められているということを意味します。
次に微分係数の定義について考えます。
関数$y=f(x)$の$x=c$における微分係数$f'(c)$は
\[f'(c)=\lim_{h\to0}\frac{f(c+h)-f(c)}{h}\tag1\]
という式で定義されています。これは、微分係数$f'(c)$とは$x$が$c$から限りなく近い値$c+h$まで変化したときの$y=f(x)$の平均変化率であることを意味しています。
ここで、$\lim_{x\to d}f(x)$が$α$という値をもつための条件は
すなわち、$x$を$d$より小さい値から$d$に近づけたときの$f(x)$の収束値$\lim_{x\to d-0}f(x)$と$x$を$d$より大きい値から$d$に近づけたときの$f(x)$の収束値$\lim_{x\to d+0}f(x)$が一致する必要があり、これが満たされたときに$\lim_{x\to d}f(x)$はその一致した値をもつということです。
\[\lim_{x\to d-0}f(x)=\lim_{x\to d+0}=α\]
であることです。すなわち、$x$を$d$より小さい値から$d$に近づけたときの$f(x)$の収束値$\lim_{x\to d-0}f(x)$と$x$を$d$より大きい値から$d$に近づけたときの$f(x)$の収束値$\lim_{x\to d+0}f(x)$が一致する必要があり、これが満たされたときに$\lim_{x\to d}f(x)$はその一致した値をもつということです。
このことから、$(1)$の$f'(c)$が$α$という値をもつためには
\[\lim_{h\to-0}\frac{f(c+h)-f(c)}{h}=\lim_{h\to+0}\frac{f(c+h)-f(c)}{h}=\alpha\]
が成り立つ必要があるということになります。
以上を踏まえて$a\leqq x\leqq
b$で定義されている連続関数$y=f(x)$の$x=a,b$における微分係数について考えます。
まず、$x=a$における微分係数は左側極限$\lim_{h\to-0}\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}$と右側極限$\lim_{h\to+0}\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}$で一致した値となるのでそれぞれについて調べると、
右側極限
左側極限
左側極限$\lim_{h\to-0}\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}$は$x$が$a$から$a$より小さくて限りなく近い値$a+h$まで変化したときの$y=f(x)$の平均変化率を意味します。
しかし、$y=f(x)$は$a\leqq x\leqq
b$で定義されているので、この範囲外である$x=a+h$における$f(x)$の値$f(a+h)$は定義されていません。
したがって、左側極限$\lim_{h\to-0}\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}$を考えることができないので値をもちません。
以上より、右側極限と左側極限の値が一致しないので$x=a$における微分係数はないことがわかります。
同様に$x=b$における微分係数について調べると、左側極限は$a\leqq x\leqq
b$の範囲で考えることができて収束値をもちますが、右側極限は値をもたないことから、$x=b$における微分係数もないことがわかります。
なお、$x=a,x=b$以外に微分係数をもたない点がないように$y=f(x)$を連続関数としましたが、連続関数でなくても同様に定義域の端では微分係数をもちません。
Share: